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曇りなき歴史編纂

 『先代旧事本紀――以下旧事紀――』すなわち、後藤隆さんがいうところの10巻本も、大成経同様、聖徳太子撰とされております。『旧事紀』が『先代旧事本紀大成経――以下大成経――』のダイジェスト版であるという後藤さんの見解を転用するならば当然なのかもしれません。
 しかし、斯界では『旧事紀』はむしろ物部系の一派によるものではないか、というのがほぼ定説になっており、かく言う私もそう考え、前にもそれを前提に触れたことがあります。
 何故なら、聖徳太子撰というわりに聖徳太子と敵対した物部氏に関する記述が、異伝も含めて記紀に比べて豊富で詳細だからです。
 ただ、『大成経』の序文にある太子の方針を信用すると、もしかしたら太子側――蘇我氏側――の編纂であってもおかしくはないのかな、という思いも一応はあります。
 小笠原春夫さん校注『續 神道体系 論説編 先代舊事本紀大成経 (財団法人 神道体系編纂会)』から、その太子の方針を引用します。

――引用――
汝等宜己之咎不穏鹿山、侘之徳不蔽滴海任上古正直筆法。又宜知己賢愚而淳發海進心、如何知之、見欲己之罪過隱之、侘之徳功蔽之、好之徳擧之、惡之功推之 〜

 この言葉について後藤さんは、著書『謎の根本聖典 先代旧事本紀大成経 (徳間書店)』のなかで、次のように訳しております。「鹿」が「塵」であったり、「蔽」が「藪」であったりと、一部漢字の捉え方において小笠原さんの校注とは異なる部分もありますが、大意はとくに相異ないものと思われます。

――引用――
 汝等は宜く己の咎の塵も山も不隠に、他徳の滴も海も不藪に、上古の正直に筆法任し。汝等、此時又、宜く己の賢愚を知って直に悔い進むの心を発すべし。

 自分にとって都合のよいことも悪いことも、他人のよいことも悪いこともすべて太古の記録のままに、内容を違えることなく記すようにと言っているのだ。

 その方針なり理念どおりに進められた編纂であれば、かつて圧倒的な存在であった物部氏の記述が多くなったとしても、なんら不思議ではない気もするのです。
 それよりもこの序文を読んだとき、私の全身には別の意味で電気が走りました。
 これとそっくりな言い回しを用いて、藩史(?)の編纂を命じている文書を、私はかつて仙台市博物館で見かけたことがあるのです。

 命じたのは仙台4代藩主伊達綱村です。

 当時、私はそれを朱子学――儒教――の影響かと思っておりましたが、この序文を見て考えが変わりました。
 つまり、綱村は『大成経』の影響を受けていたはず、という推測が、はっきりと確信に変わりました。
 残念ながら、数年前に仙台市博物館にその文書を確認しに行ったときには、もう展示されておりませんでした。もしご興味あれば、仙台市博物館の学芸員にでも確認されることをお勧めします。たしか常設展示で見かけたと記憶しておりますから、当然保管はされていることでしょう。

※ 平成三十(2018)年十一月八日追記
 東北歴史博物館において開催されている【伊達綱村公300年遠諱記念 特別展「伊達綱村」】において、再確認し得ずにいた仙台市博物館所蔵の文書が展示されておりました。
 「伊達綱村治家記録編纂意見状」と銘打たれたその文書は、元禄十五(1702)年閏八月二十四日のもので、以下のような解説が付されておりました。

―引用:『特別展「伊達綱村」図録(東北歴史博物館)』より―
 綱村が治家記録の編纂者であった田辺希賢に対して、編纂方針などについて意見を述べたもの。冒頭では、これは「記録」であるから、記載内容が綱村の考えに沿ったものばかりでは「成就」しないので、綱村の考えに反する内容でも書き記すべきである、と述べています。また、後半では、政宗は萬海上人の生まれ変わりであるという言い伝えなど、諸説ある時は、憚ることなく書くように指示しています。さらに最後では、後から編纂する「記録」では、善くないことを隠そうとし、小さな善いことは殊更に大きく書こうとする傾向があり、それではその記録自体の信頼性が疑われることになるので、これについても気を付けなければならない、と述べております。記録の客観性・信頼性を重視した立場であることがわかります。

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東北歴史博物館において開催されている【伊達綱村公300年遠諱記念 特別展「伊達綱村」】において、当記事執筆時に明記し得ずにいた仙台市博物館所蔵の文書が展示されておりましたので、本文末尾に詳細を追記致しました。

2018/11/9(金) 午前 4:39 今野政明

追伸

今回の特別展は、伊達綱村と黄檗宗のつながりにおいてもこれまでに見たことのないくらい充実した内容で、満足のいくものでありました。

ふと思い出されるのは、この件について早くから取り上げていらっしゃった福島美術館です。

蛇足ながら、ここにあらためて敬意を表したいと思います。

2018/11/9(金) 午前 4:51 今野政明


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