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賎しい血筋への憧れ

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 安倍氏の系譜を伝える藤崎系図及び秋田系図――秋田氏も安倍貞任末裔、安東氏の系譜――は、いずれも安倍氏の祖を長髄彦の兄「安日(あび)」であるとしております。
 安日などという人物は、記紀などその他の文献史料には全く登場しません。したがって有識者のほとんどはその伝承を信じません。
 そうした中で、谷川健一さんは鵜呑みには出来ないとしながらも無視出来ないものとしてこれらの系図を重要視しております。谷川さんの著書『白鳥伝説(小学館)』には次のように書かれております。

――引用――
 太田亮は『姓氏家系大辞典』の中で、安藤(安東)氏や秋田氏の系譜の始祖として、叛臣のナガスネヒコの血筋をひく安日をもってきたことは、それが架空ではなく真相を伝えているかにみえるが、明らかに将門の裔、純友の裔でないものが、武家時代にはその後裔と伝えるものが多いのと同様、武勇をことに尊んだ結果にほかならない、としている。
 しかし太田の説明ではなお不足である。奥州の安倍氏は蝦夷の末裔とみなされていた。またその安倍氏の流れをくむ安東氏や秋田氏もおなじ立場に立っていたはずである。出自に負い目をもつこれらの人たちが「武勇を尊んだ」結果、ナガスネヒコの係累である安日なる人物を創作したというふうにはとうてい考えられない。将門も純友も朝廷に叛いたとはいえ、おなじ武士仲間である。しかし、『古事記』はナガスネヒコを「賎しき奴」と呼び『日本書紀』はナガスネヒコは性質がねじけていると述べている。
〜中略〜
 大和朝廷から異族として蔑視されているナガスネヒコの兄をわざわざ創作して、それを自分たちの始祖とするということがあり得ようか。ふつうの場合、そうしたことは起こり得ない。奥州の安倍氏がもともと蝦夷であったとしたならば、その出自の跡をむしろ消そうとつとめるはずである。

この後谷川さんは「安日なる人物を創作した根拠はおそらく一つしか考えられない」として、神武帝の軍と勇敢に戦ったナガスネヒコの武勇に対して、“おなじ蝦夷として”共感と誇りをおぼえたのだろうとしております。
 そして、さらに、

――引用――
 ナガスネヒコの兄を創出した心理の底には、物部氏とナガスネヒコが連合していたというかつての事実への親近感がひそんでいなかっただろうか。東国における物部氏と蝦夷との関係は密接なものであったと考えられるから、それが強調されたのではないか。

と、ご自身の論考エピローグへの布石を投じております。
 素晴らしい仮説だと思います。また、ほぼ賛成です。
 どうせ系図を創作するのであれば、人間の心理としては通常高貴な血統につながるように創作したいはずです。確かに例えば平将門などは、国家反逆の重罪人とはいえ、なにしろ平家です。元々の血筋は高貴であり、しかも比較的近い時代の、ある種武門の英雄です。武士の世が到来した時代には純粋に英雄として考えられていたとしても不思議ではありません。
 それに比べ、安東氏の場合は、わざわざ人間扱いされないほど蔑まれる賎しい異族としての始祖を創作したというのですから、太田亮さんが語るような単純なものではないと思います。
 ただ、谷川さんもあくまで創作という一線は崩しておりません。それは果たしてどんなものでしょう。その賎しい系譜を頑なに守る安東氏の態度には、私はむしろ真実味を感じます。少なくとも、創作であると“言い切る”ことに対しては抵抗があります。

藤崎の八幡宮境内にあった碑文。安東氏が安日の末裔である旨が記されております。
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