はてノ鹽竈

東北地方から日本史を眺めていきます。

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 『鹽竈神社史料』所載の集計表から、香川県と岡山県の備讃エリアには鹽竈神社が27社も集中していることがわかるわけですが、この理由は比較的想像しやすいものがあります。
 何故なら、近藤義郎さん編集の『日本土器製塩研究(青木書店)』に執筆されている岩本正二さんや大久保徹也さんの論稿によれば、この備讃エリアは少なくとも弥生時代中期後半から土器製塩が開始されていたことが発掘成果からわかっており、これは西日本における最初期であるとともに、且つ土器製塩活動の中心地であったと考えられるからです。
 また、宝賀寿男さんはこのエリアに鹽竈神社が多いことに触れ、その中に有力な社がみられないことから、それらは総じて塩生産に基づいたものであり、起源も比較的新しいのではないか、と考えております。
 とは言え、讃岐国造一族や阿波国造一族らも少彦名(すくなひこな)神一族の流れをひくものであることから、自然と鹽土老翁神が奉斎される基礎は備わっていたという旨を補足しております。

 では、17社も存在する福島県はどういう事情なのでしょう。
 同じく宝賀さんの仮説、論稿『塩の神様とその源流』を見てみます。

――引用――
 石城地方の本拠地であった磐城地方をみると、塩竈神社は管見に入ってこないが、この地域には諏訪神社が多く(いわき市域で少なくとも20社はある)、塩をつけた地名も多い。また、石城国造の勢力圏であった福島県田村郡小野新町(現在は三町村合併で小野町)には有力な塩竈神社があり、塩土老翁を祀る。その社伝によると、延暦年中の坂上田村麻呂の征夷に際し、陸前塩竈大神に祈願したところ神験が著しかったので、奉賽のため祭祀したことに創まるといわれる。
 これを額面通りうけとめるよりも、私はむしろ田村郡の当社のほうが塩竃大神の起源に近いのではないか、また、丈部一族の陸奥北方への進出に際しての塩竃祈願ではないかと考えている。福島県には東北地方で塩竃神社が最も多く、17社の塩竃神社が鎮座することも、その傍証かもしれない。

福島県田村郡の鹽竈神社
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・・・タイムスリップ(?)・・・いやビックリした!
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 補足しておけば、宝賀さんは諏訪神も少彦名系と考えております。
 とにかく、鹽竈神社の本場は“福島県にあり”というのが宝賀さんの想像です。
 なるほど、興味深い想像です。
 そういえば、実は「こっちが鹽竈神社の本家だ」と言われる神社が、少なくとも同じ福島県内にもう一社ありました。福島県福島市大笹生(おおざそう)の鹽竈神社がそれです。

福島市大笹生鹽竈神社
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兎と亀の競争もここが本場(?)
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 宝賀さんの仮説には学ぶところが多く十分に納得がいっております。
 しかし、どうしてもあと一歩のところで私の疑問が解決されないのです。
 仮に、福島県田村郡の鹽竈神社が本家だとした場合、宮城県塩竃市の鹽竈神社は――理屈としては――いわば分家のようなものになるということでしょう。そのたかだか国造一族祭祀の分家に過ぎない神社が、何故神社として国内最高額の祭祀料を受けていたのでしょうか。遠の朝廷(とおのみかど)多賀城が近いからでしょうか。
 あるいは、出雲において、国造家が祀った熊野大社と、朝廷側の思惑で祀った出雲大社の違いのようなものなのでしょうか――本来の出雲神族らしき富氏は出雲大社東方約950mにある出雲井神社を信奉しており、事態はもっと複雑ですが・・・――。

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