はてノ鹽竈

東北地方から日本史を眺めていきます。

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 八ツ塚の地名由来となった八つの塚は、『仙臺鹿の子』には「或る人の塚」とあり、『嚢塵埃捨録(のうじんあいしゃろく)』には「山伏八人を埋めたる塚」とあり、『残月臺本荒萩』には「國司の塚」とあります。
 『嚢塵埃捨録』の「山伏八人」とは、当地の沼の大蛇を咒咀(じゅそ)して退治したという八人の山伏です。彼らは、大蛇を退治した際にその毒気にあたり、死んでしまったのだそうです。
 また、元ネタは不明ながら、七北田刑場―仙台市泉区七北田字杉ノ田―の火炙りの刑の真似事をして焼死した子供を供養したもの、という伝説もあるようです。
 八ツ塚所在地の一つとされる正雲寺境内の六地蔵の後ろには、首の欠けた古い八体の地蔵があるのですが、先の木村孝文さんの『若林の散歩手帖(宝文堂)』によれば、それらは身代わりに建てた八つの地蔵塚のそれと伝わっているようです。

―引用:『若林の散歩手帖』より―
 昔、七北田の刑場で重罪人の火炙りの刑が行われた。それを見た者の中の子供らが七北田から帰って、火炙りの真似事をし、一人の子供を罪人に擬して、ぐるぐると縛りつけ、藁や杉葉を集めて火をつけた。火は見る見るうちに燃え出し、遂に中の子供は無残にも焼け死んでしまった。子供たちはどうすることもできず、そっと埋めて帰った。夜になって一人の子供が帰らないので騒ぎだし、八方捜索して灰燼の中から死体が発見され、ことの次第が判明した。子供の親達は申し訳ないと、供養のためと身代わりに八つの地蔵塚を建てて弔ったという。
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 なんともやるせない悲痛な物語です。
 多かれ少なかれ、幼い子供が時としてこのように無垢な残虐性を暴発させてしまうことは認めざるを得ないところでありますが、ここには美化されることもなく痛々しくもあからさまなリアリティがあります。おそらく実際にそういった事故があったのでしょう。身代わりということは、八体の首の欠けた地蔵の数は遊びに加わった子供の頭数ということなのでしょうか。
 しかし、なにしろ七北田刑場は元禄三(1690)年に米ケ袋―仙台市青葉区―から遷された刑場であります。つまり、新寺小路が成ったとされる寛永年間(1624〜1644)より新しいものです。さすれば、それ以降に八ツ塚が築かれたという話には違和感があります。
 城下米ケ袋から郊外の七北田への刑場の移転については、五代将軍徳川綱吉による生類憐み関係の発令の数々―第一声は貞享二(1685)年―を受けて城下から隔離したのではないか、というのが私論なのですが、仮に、子供たちの悲痛な事故が、七北田刑場ではなく移転前の米ケ袋でのそれを目撃したことによるものとした場合、それは憐み政策によって戦国の気風が激変する以前の事故ということになります。
 すなわち、刀の試しものや家族計画の間引きなど、とにかく人の命が軽々と失われていた時代です。こう書くと誤解を招くかもしれませんが、よほどの名のある家の家督でもない限り、単に一人の子供の悲痛な事故をきっかけとした供養塚がその後永く地名として残るとも思えません。
 また、安永七(1778)年頃に成ったとされる『残月臺本荒萩』に「國司の塚」と記されていた八ツ塚が、成書以前のたかだか90年以内に築かれたものとも思えません。
 したがって、おそらく、地蔵の頭数「八」という数字が、たまたま八ツ塚のそれと一緒だったので、伝説が混乱したのでしょう。私はやはり、「国司の塚」という伝説が限りなく真実に近いと考えます。
 以前も触れましたが、この長町利府活断層線のラインは、特に広瀬川以南―旧国道286号沿い―において集中して古墳が発見されております。それらは5世紀末から6世紀にかけてのものとされておりますが、築造時期はともかく、思うに、八ツ塚もその埋葬供養観念の延長上にあったものと捉えて良いのではないでしょうか。

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