|
劇場は本公演をすべて終えてあとは高校生の鑑賞教室と子供オペラを残すのみ。
まもなく鑑賞椿姫の稽古がはじまる。今回は大役を担うことになっているが、
連日稽古と本番が続くので体調管理には気をつけようと思っている。
先週はシティフィルのトリスタンがはじまったのでそれで手一杯!
だいたい全幕を振ったが、振ってみないと発見できないことってのがある。
「ああ、ここはこうなっているんだ」という発見とともに、自身のテンポ設定の甘さ
もみえてくる。もちろんテンポはある意味歌手と共に作るものではあるが、
計算を間違うとその後の流れが悪くなるという見通しの甘さが露呈する。
これは振る側の理解不足なのだ。これは弁解ではないが、かのバレンボイムも
20年以上トリスタンとつきあってきてまだ発見するものがあるという。また
初めてトリスタン公演を振る指揮者はまずうまくいかないという話しもある
くらい一筋縄ではいかない作品であるのだ。私のような「新参者」がいきなり
これというものを確立できなくても当然かもしれない。いや、決して開き直ってる
わけではなく、それだけ偉大な作品に対して今後も真摯な姿勢で取り組みたい
と思っているのだ。
トリスタンに取り組むうえでいろいろ考えた一週間だった。音楽技法が特別視
されがちなトリスタンだが、技法の変遷をあらためて確認したくジークフリート
の一幕を弾いてみたり、指導動機技法に関連してワルキューレのヴォータンの
長丁場について考えたり(←私自身はここ好きだが、なぜ音楽的に弱いと
いわれるかを考えた。ヴァルハルの動機のこの場面と一幕での象徴的劇的使用
と比較すると興味深い)した。決してトリスタンだけが特別ではなく、
それまでの過程がやはりあるのだ。しかしトリスタンで極めて成熟した
技法を展開したことに異論はない。
私はマイスタージンガー以降を先に経験してしまっているので、トリスタンを
研究すると抜け落ちていた部分が穴埋めされたような感じである。
「マイスターの時にはこのように書いているのか」などとマイスタージンガー
以降の作品について、今まで見えなかった部分も見えてきたりして
新たな理解が得られるのもうれしい。
さてこんな喜ばしいトリスタンとの付き合いは明日で一時中断、椿姫に集中だ。
椿姫のようなイタオペの代表のような作品を前にすると以前の私なら
戸惑って焦っていただろう。今は様々なイタリア物に接することも多くなり
以前ほどの違和感は消えた。
すでに椿姫では後年の作品に見られるドラマ性重視の姿勢が存在する。
ヴェルディはいかにドラマを音楽で描くかについて深く考えていたはずだ。
ある場所には丁寧にメトロノームの数字も書いたりオケのバランスにこだわり
ぬいたダイナミックを書いたりする彼である。今まで思っている以上に
スコアには情報が隠されているのだ。短い時間で書いた作品とはいえ、
そこは天才のやること、こちらが心してかからないとダメなのである。
今回私はこのドラマ性を損なわないやり方をひたすら考えている。
でもこのアプローチなら別に椿姫に限ったことではなくて、トリスタンでも
やっていたことなんだけど。むしろパーツパーツでこれまで見てきた椿姫も
トリスタン同様全体のドラマの見通しで考えられるようになったという
ことか。とにかくいままでの公演で数多く行われてきた「慣習」による
演奏法は、このアプローチを前面に押し出すなら見直さねばなるまい。
ともすると「椿姫はこうやるもんだ」的な空気がこれだけメジャーな作品
だとないとはいえない。この作品に初めて接した学生時代は、このような
作品には伝統的なやり方があってまずそれを知らないとダメみたいな
雰囲気を感じていた。確かに常套的にこのようにするというやり方は知って
おかなければならないことだし、それがないとオペラはできないともいえる。
(これはイタオペに限らずドイツオペラについても同様のことがいえる)
カデンツのいれかたやテンポの揺らしかたなどの伝統的なやり方は勿論
知っている。しかし最近そういうやり方について、そのようなやり方がよい
と感じることもあるし、おかしいと感じることもある。私の場合それを決める
基準は「ヴェルディがどう望んだか」である。
今後稽古が始まり歌手たちと細部をつめていくが、もちろん私の考えのおしつけを
するつもりはなく、歌手と理解したうえでやっていこうと思っている。
かくいう私自身もどのような椿姫になるのか、大変楽しみにしているのである。
|
良い世ねえ、イタリア、今度生まれてくるのなら、イタリア人。
2008/6/23(月) 午前 11:23 [ zen*o*hara6* ]
このブログ、偶然見つけました。オペラ観賞が好きで新国の公演はシーズンチケを3セット購入。新国の無い日に二期会を中心にその他の公演を見ています。
オペラ作りの舞台裏のご苦労やエピソードがお伺いできそうで、本日より愛読させて頂きます。
2008/6/29(日) 午後 10:05 [ s_m**ki1 ]
すっかり更新されなくなってしまいましたが、もうすぐトーキョー・リング再演も始まることだし、また裏話など、楽しみにしています。
2009/2/26(木) 午後 1:47 [ myuu ]