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今日は,今までの話しよりも,ちょっと底の浅い質問である「大会社」の意義の変更について,お話ししましょう。
大会社とは,「最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が五億円以上(資本金基準)又は,最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が二百億円以上(負債基準)である株式会社」のことをいいます。
大会社は,大会社以外の会社(小規模会社)と比べて,次の5つの義務がかかる点で,ガバナンスや開示が強化されています。
1 会計監査人の設置義務を負う(328条)
2 監査役会又は委員会の設置義務を負う(328条。ただし,公開会社に限る。)
3 内部統制システムの決定義務を負う(348条3項5号,362条5項)
4 貸借対照表のほか,損益計算書についても公告義務を負う(440条1項)
5 連結計算書類の作成義務を負う(ただし,有価証券報告書提出会社に限る。444条3項)
この大会社の定義については,現行の商法特例法1条の2第1項の資本金基準(「資本の額が五億円以上であること」とちょっとした違いがあります。
会社法には,「最終事業年度に係る貸借対照表」上で5億円以上であるという限定が加わっていますよね。
商法特例法の定義では,期中に新株発行をして資本が増加して5億円以上になったり,減資をして5億円未満になったりすると,その時点で,すぐに大会社になったり,大会社でなくなったりしてしまうため,商法特例法20条,21条のような経過措置を置いて,次の事業年度までは,会計監査人の設置義務等がかからないようにしていました。
この経過措置は,以前はラフな規定だったのですが,実務上,
「大会社が,期中に減資して,一旦小会社になり,その後,増資して,また大会社になった場合」
等という複雑な増減資が行われることがあるため,平成14年にそれらの事例に対応するような改正が行われました。
しかし,様々な増減資のパターンに対応し,かつ,みなし大会社について特別なルール(別名やる気だしルール)を作ったため,複雑怪奇な経過措置の規定ができてしまい(内々には,その複雑さを揶揄する者から,立案者の名前を採り,葉玉措置と呼ばれています(^_^)),分かりにくくなったので,会社法の制定を契機に,大会社の定義の中に,その経過措置を組み込んだのです(ですから,実質は,かわっていません。)
会社法の定義によれば,期中に何回増減資が行われようとも,「最終事業年度に係る貸借対照表」で資本金が5億円以上になっているかどうかだけが要件ですから,貸借対照表が承認又は報告された定時株主総会において,大会社になったり,大会社でなくなったりすることになり,その時点で,大会社についての規定の適用の有無が決まるわけです。
ちなみに,小会社は,基本的には,監査役の権限を会計監査権限に限定するために設けられた類型だったわけですが,会社法では,非公開会社に限って,定款で,会計監査権限に限定することができるという規定になったことから,小会社概念は不要になりました。
また,会計監査人の任意設置が自由に認められるようになったこと等から,「みなし大会社」概念も不要になりました。
したがって,会社法には,中会社(みなし大会社を含む。)・小会社の区別はありません。
これらの会社を,個人的には,「大会社以外の会社」とか,「小規模会社」とか呼んでいますが,なんかいい名称があったら,教えてください。
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初めまして。大手資格試験予備校で講師をしている姫野と申します。非常に興味深いブログです。「大人の対応」をもって,講義の参考とさせていただきます。興味があれば,是非昨今の司法書士試験受験生のレベルを覗いて下さい。http://blogs.yahoo.co.jp/chirolistevolution
2005/11/14(月) 午前 0:43 [ - ]
私も姫野さんのブログを拝見させていただきました。 ブログにあった問題もよく聞かれるので,今度,お話ししますね。 司法書士は,条文の問題が多いですが,会社法の基本的な概念の理解があれば,条文も覚えやすいと思います。 司法書士の受験生にも,このブログを紹介していただけるとうれしいです。 これからもよろしくお願いします。
2005/11/14(月) 午前 6:43 [ mas*mi_*a*ama ]
こんにちは,姫野です。お許しが出たので,司法書士試験受験生の方に紹介させていただきます。葉玉様への質問が集まるブログになればと思います。受験生の方は,学者様・実務家様等,専門家が思い付かないような疑問を抱えていることも多いものですから。
2005/11/14(月) 午後 1:51 [ - ]
司法書士の内藤卓です。税経通信臨時増刊の松本解説で、小会社であり、かつ、公開会社である会社について、「整備法第53条によって監査役の監査の範囲を会計監査に限定する旨の定款の定めがあるとみなされるとしても、かかる定めは会社法第389条第1項に反し無効なものであるから、その監査役の権限は会計監査に限定されないことに注意を要する」とありますが、定款の定めがあるとみなされるが無効である、は苦しい論理ではないでしょうか。結論としては、妥当だと思いますが。
2005/11/14(月) 午後 9:33 [ ttttt ]
松本さんの解説の書き方が、若干、過激なような感じもないではありません(笑)。ただ、整備法53条は「三百八十九条一項の規定による定めがある」ものとみなすものであり、389条1項は、非公開会社のみが当該定めをすることができることとしているのですから、整備法53条の解釈としては、同条は、非公開会社にのみ適用されるものと解すべきでしょう。
2005/11/14(月) 午後 10:09 [ mas*mi_*a*ama ]