遺構めぐりと旅日誌

最近は産業遺産・土木遺産を含めた遺構めぐりが好きです

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大阪と和歌山を結ぶ何本かの峠があるが、その一つの路線に旧池田隧道があった。
明治43年に測量された地図には、旧池田隧道が記載されている。そして、現在の新池田隧道は、旧池田隧道と直行するイメージで造られている。

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明治19年に旧池田隧道が完成 (きのくに教育iDCコンテンツより)
明治43年の地図に初めて記載
昭和42年の地図にも記載あり
昭和49年に新池田トンネルが完成
よって、旧池田隧道はそれ以降に廃止されたと思われる。

さて、旧池田隧道は煉瓦造りのトンネルであるが、和歌山県内では洋式としては最古級といわれている。また、和歌山県の資料によると高橋市右衛門という方が設計をしているようだ。
そこで、高橋市右衛門氏を調べてみた。現在、御子孫にあたられる方がブログをされていたのでそちらから情報をいただきました。(転載についてはメール連絡したら、快く承諾いただきました。
旧池田隧道は、当時としては画期的な日本人が自ら設計・施工で造り上げた洋式トンネルであるということであり、高橋市右衛門氏が設計から現場監督まで全てに関わったようである。また、日本人のほとんどが経験がない様式トンネルを手掛けられた理由は、明治初頭にアメリカで土木を学んだからだそうである。
また、日本人のみで造った鉄道トンネルは明治13年に開通させた逢坂山隧道である。それから遅れること4年で旧池田隧道は着工されている。

そういった事を知ると、この隧道は試行錯誤で工夫しながら工事を進めたことがわかるし、職人もおそらく経験者はいなかっただろうとと思われる。

ということを踏まえつつ、再度旧池田隧道を見直してみる。


トンネルの内部は、煉瓦で覆工されていない、素掘り区間が若干残されている。これくらいの区間を何故素掘りのままに残したのであろうか?
煉瓦の端面を見てみると、後にレンガを撤去したのでは無いことがわかる。頑強な地質なので、煉瓦で覆工しなかったのだろうか。
このトンネルは周辺では最も古い様式トンネルである。おそらく、試験的にレンガと素掘りの違いを観察するために残したのではないだろうか。(個人の意見です)

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ここでは、近代トンネルの黎明期に試行錯誤で造られた工夫が断面で見ることができる、生きた教科書である。
岩盤は、風化はされているものの、いたって健全。一部で石が若干剥がれているが、造られてから130年以上を素掘りのままで経過していることから考えて、いい岩盤であると思う。

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坑門の煉瓦は3重巻きであったが、この部分は1重から2重であった。特に、二重目を岩盤に合わせて造られているのがポイントだと思う。
長手積みの煉瓦は、イギリス積みと違って覆工厚の調整が容易であるというのがよくわかる。
現在なら、覆工の厚みが確保できるようにトンネルを掘るようだが、当時は機械が無い手堀りである。固い岩盤が出れば、内部の断面を確保さえできれば、最小限の掘方ですます方法を選んだと思われる。

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岩盤に密着しての煉瓦積み。これは、強烈に手間暇がかかったと思われる。見事である。また、完全手造りからくる、内面の凸凹はやむおえない。

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二重目の煉瓦を岩盤の凸凹に合わせた施工が、本当に素晴らしい!
なんども書くが、とにかく凄い!

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巻き厚が1重から3重に変化する区間も、実際に目で見ることが可能であった。鉄道トンネルでは標準巻き厚が4重といわれていたので、このトンネルは、標準よりは地質が良かったといえるのかもしれない。
とはいいつつ、この時代に教科書があったとも聞かないので、経験則で・・・といっても、経験も少ないので設計者は悩んだんでしょうね。

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以上の事から、旧池田隧道では巻き厚を自由に調整できる、長手積みが採用されたと思われる。ただし、時代が進むにつれて、強度的に劣る長手積みは、側壁部分に使用することはなくなって、縦横に組み合わせるイギリス積みが主流になっていく。
ただし、頂部については曲率半径が小さいので複雑に組み合わせるイギリス積みでは施工が困難であり、長手積みがコンクリートにバトンタッチするまで存続していたようだ。

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坑門の大阪側はイギリス積みで、紀の川側はフランス積みとデザインが異なる。これらも、設計者の実験的な要素で変化させたのかもしれない。

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隠れた存在で、観光地化もされていない旧池田隧道。煉瓦隧道のエッセンスや設計的な考え方などが、実際に目で見て触ることができる貴重な案件であった。特に、掘削面と煉瓦の巻き厚については必見です。
是非、明治の息吹を感じてください。本当にお勧めです。

閉じる コメント(7)

こういうトンネルも大好きなんですが
無学なので、古い歴史あるトンネルだな〜としか思わかったのですが
こうして説明して頂くと
更に楽しさ倍増ですね(^_-)
ありがとうございます。

2019/3/16(土) 午後 6:57 Rainbow 返信する

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Rainbowさん
こんばんは。私も専門家では無いのですが、マニアというか好きなので文献を読んだりします。昔は車いじりが好きなので、専門書を読んでスパナを持ったりしていました。とはいっても、ブレーキパッドを取り替えたりする程度でしたが。

2019/3/16(土) 午後 7:30 [ chinu ] 返信する

こんにちは。
chinuさんは興味に対する探求心と行動力が凄い方だと、記事を読んでつくづく感じました。
こうして予備知識をいただくと、いつか訪問した時の視点になります。

2019/3/17(日) 午後 1:38 [ 神威 ] 返信する

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神威さん
こんにちは。決して専門的な知識があるわけでないので、思い込みや想像の世界も多いです。間違いもあるかもしれませんが、その時はすみません。
土木遺産を見に行くと、力学的なイメージがわきやすいので楽しいですね。

2019/3/17(日) 午後 2:15 [ chinu ] 返信する

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明治の息吹も元号が変わるとさらに遠くなり、
貴重なものになりますね。
我が家の大正生まれの大婆さん…元気過ぎて貴重です。
(σ^▽^)σ〜Nice

2019/3/17(日) 午後 4:24 kakeさん 返信する

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kakeさん
こんばんは。元号が変われば、私も二世代前になりますね。
ええ、昭和生まれですかって言われるのもすぐ先かもしれません。大正生まれでお元気で良かったですね。ブログでご紹介ください。

2019/3/17(日) 午後 6:32 [ chinu ] 返信する

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tabigarasu88さん
こんばんは。やはり、アメブロですか。私もおそらく移行します。
昔から未投稿ですがアカウントだけもっています。
また、お尋ねいたしますので、よろしくお願いします。

2019/3/18(月) 午後 9:48 [ chinu ] 返信する

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