はむねまぼるのブログ

作詞作曲をしています。介護のことも書きます。強迫性障碍のことも。

トリセツ!

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トリセツ! 第9話

第九話 自分の事をサラリと救世主だと言ってのける自分の事を僕と呼ぶイタイ女子


「君は、『救生主が居るのは漫画の世界だけ。
現実世界には救生主は居無い。』
とかそう思ってるんだろう。
其れは違う。救世主も居るし救生主も居る。
だけえども、現実世界の救生主は漫画世界の救生主とは違う。
救う相手が耐えられ無かった後に遣って来る。
駆け付ける速度が漫画世界よりも遅かったりする。
それから、救う相手が多過ぎたり。
後、それから、救生主は檻の中に規則と言う名前の閉じ込められてたり、足釘に鎖を繋がれてたりして、駆け付ける事が出来無い。
居るか居無いかで言うならば、現実世界にも救生主や救世主は居る。だから、絶望するな。此の僕が其の救生主だ。」
「何故俺が救生主は現実世界に居無いと解るんだ。御前はいつも勝手に決め付けて掛かる。自分の物差しでしか他人や世界を見れないんだ。」
「僕は自分の物差しでしか他人や世界を測れない訳では無い。自分の物差しも持ってる、が其れ以外にもう一つ物差しを持ってる。
そして、是迄(これまで)僕が君に使って来た物差しは、元来僕が持っていた物差しでは無い。僕が君に使って来た物差しは、もう一つの方の物差しだ。
もう一つの方の物差しは或る人から貰った。そして僕が決め付けて掛かる事には意図が有る。其の意図とは、君を今みたいに怒らせる為だ。
君を怒らせて生きる力を持って貰う為だ。」
ベラベラと喋る女子中学生だ事(こと)。
「あぁそうか。誰からその物差しを貰ったのですか。どうせそう訊いて欲しいんだろう。まぁ俺が訊かなくても御前はベラベラと喋り始めるのだろうがな。」
「そう。其の通り。僕は、君から其の質問をされたい。だけれども、僕は僕からベラベラ喋る訳には行かない。
君に訊かれたからこそ喋れるんだ。僕は、その物差しの制作者から、自分の事に付(つ)いてベラベラ喋る事を僕に禁じている。
しかし、同時に彼は僕にこう言いもした。
訊かれたら応えなさいと。
僕は、君から訊かれたから今答える。
 僕が貰った物差しの元々の製作者は君に片思いをしていた人だ。
僕が君にとっての救生主として、君の前に現れた理由は、君に片思いをしていた人から、君の事を守れと命令されたからだ。」
何じゃそりゃ。
命令って、奴隷と主人の関係って俺を好きだった奴ってどんだけ独裁者的なんだ。
気持ち悪い。
俺はそう思った。
俺お好きな人が、俺が知らない場所で、俺を守れと命令していただなんて。
身振るいをして仕舞うわ。
ストーカーされている気分だ。
大体自分が好きな相手は自分自身で守れよ。
俺の事を好きならば、俺に好きって言えば良いだろうに。
自分自身で俺を救えば良いだろうに。
それを、他人にしかもこんな女子中学生に委託するだなんて…。
どんだけ意気地無しなんだよ。
…「俺を救えば良い」って、俺、今凄く傲慢な事を考えて仕舞ったな。
此(こ)れでは、まるで俺が悪者だ。
「死なせられる訳が無い。俺を地縛霊から浮遊霊にしてくれた人は、人と言っても…まぁ化けた姿だったけれど。
其(そ)の人は、君の事が好きだったんだ。
君が幸せに生きる事を彼は願っていた。」
「は?彼って…男?」
「君は覚えて無いだろうね。」
ん?ん?
「どう言う事だ?」
「有難う。どう言う事かを訊いてくれて。訊いてくれたならば、僕は話さなければ成りません。
訊いてくれたならば、僕は話す事が出来(でき)ます。
僕を地縛霊から浮遊霊にしてくれた人もその人なんだ。」
増す増す気持ちが悪いわ。
自分で自分が好きな人を守らないで、幽霊に命令して守らせるだなんて。
好きな人は自分自身で守れってんだ。
男だろうが、女だろうが。
頼る対象が幽霊って言う…も…気味が…悪い。
「ちょっと待った。御前。あぁ。御前…痛いな。御前、自分の事を幽霊とか言って。漫画世界と現実世界を区別出来無いんだな。
御前見た処(ところ)中学生だけれども、中学二年生なんじゃないか?中二病なんじゃ無いかな?大体俺が質問した事は、詰(つ)まり、どう言う事だと尋ねた意味合いは、御前は
『彼』だと言ったが、俺の事を好きだった奴って男か?詰まり、ホモか?余計気持ち悪いわ。ホモが中二病の女子の地縛霊に頼んで『大好きなあの人を守って』って願ったとでも?」
「そう。其の通りだ。良く解ってくれた。僕は真相を早く言って仕舞いたくて仕方が無かったんだ。此れを言わないと、成仏は出来無いからな。」
うわ。此奴(こいつ)成仏できるとか言って、未だ自分は幽霊だと言う設定で喋ってる。
此奴も相当に気持ち悪いな。
「そう。当たり前なんだ。普通此(こ)んなに先回りして考えてる存在が、生きてる形で居られる訳が無いんだ。
そんな都合が良い生きてる人間なんてそう簡単に居る訳が無い。僕は君にとって救世主だ。だけれども、僕が都合良く君が死のうと屋上の上から飛び降りようとした時に
現れられた理由は、僕が幽霊だからだよ。信じて無いみたいだけれども。こんなに相手が考える事を先回りして考えてる時点で暇を持て余した存在だよね。
僕が幽霊だと言う証拠だよ。
 僕は、君の事を片思いしていた彼と話した。だから、彼がどの位(くらい)君を愛していたのか解る。どう言う気持ちで君を見ていたのか解(わか)る。
切ない片思いの話を聞いて、放って置ける女子中学生なんてそうそう居無(いな)いよ。
僕は、決して君を死なせる訳には行か無い。
彼の無念を知ってるからね。」
本当に良く喋る女子中学生だ。
もうわかった。此奴は最後の最後まで、自分が幽霊だと言う設定を捨てない心算(つもり)なのだ。
中二病末期症状だな。
本当に死んで仕舞うんじゃ無いか?
「ほうほう、其れは詰まり、女子中学生は皆が皆やおい好きだと言う事なのかな?」
「皆が皆と言う訳では無いだろうけれど。少なくとも私は、やおい好きだ!」
…嫌、堂々と言われても困るけれども。
と言うか此奴今自分の事を僕では無く、私と言ったな。
毅然として自己主張する時の言葉「私」を此奴(こいつ)使用したな。
「自分がやおい好きだ」と言う発表に其の技を使ったな。
…無駄遣いだと思う。
 「君は、彼がどう言う想いで君の事を見ていたかわかるのかっ!」
俺は何故か叱られた。
中学二年生に。
自称幽霊に。
「彼が彼自身で君を守らない理由は、守れない理由は、君が同性愛者を忌み嫌っているからだ。
彼は、君の幸せを願っていた。だから、こう考えた。自分みたいな同性愛者が近付いたら、彼は嫌がる。
彼が不幸せに成る。自分みたいな気持ち悪い同性愛者を近付かせないぞっ!守るぞって。そう考えてたんだってんだ。
自分を気持ち悪い人だと認めて、そういう苦しい段階を踏んで、そして、君に気持ち悪い同性愛者が近付か無い様にと、自分自身を君に近付かせなかったんだっ!
意味が解るかっ!本気で幸せを願ったからこそ、自分自身で自分が好きな人を守る事も近付く事も出来無い人の気持ちが解るのかっ!」
正直言って、話が混み合ってて、普通に意味が分からなかった。
だけれども、後追いで、頭の中で状況が整理されて行った。
好きであるから故に、と言うよりも、本物の幸せを提供する事が其(そ)の儘(まま)=自分が近付か無い事だって、辛過ぎるだろう。
「あんた、ボソっと行った事があるんじゃないのか、高校生の頃に。
同性愛は気持ち悪いとか、近寄って欲しく無いとか。同性愛者は全員死ねば良いとか。」
「高校生の頃…と言う事は、高校生の頃の同級生の中に俺を好きだったホモが居たって事なのか?」
あっ仕舞(しま)った。
ホモと言って仕舞った。
もう使わないどこと思ったのに。
そんな切ない、悲しい物語を聞いた後でホモを使う事は気が引けたのに。
気は引けたけれども、口からスルッと出て来て仕舞った。
「仕舞った。口が滑った。訊かれて無い事を喋って仕舞った。と言う事は、魔法が発動するから…」
消えた。
僕の目の前で中学生女子、中二病の中学生女子は消えた。
死んだ?
違う。
元々死んでいた…?
嘘では無く、本当に…?
「御前は既に死んでいる…?本当に…?」
僕は一人取り残された屋上で、空気に向かって呟いた。
僕は何だか格闘漫画の格好良い台詞の様な事を言った。
言葉が同じだけれども、其の言葉を言うに至る過程と其の言葉に纏わる状況が格闘漫画の其れとは違い過(す)ぎる。
悲し過ぎる。
哀し過ぎる。
…物語が悲し過ぎる。



筆者:羽旨魔歩流

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