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005
意外な展開だった。
彼女は、何か、しでの鳥の事で知っている様だった。
もしかすると、忍野メメからの話の中に、しでの鳥を何とかする話が含まれていたのかも知れない。
実を言うと、僕は、少々、月日ちゃんの事、いや、月日ちゃんに憑いて居る(いる)化け物、托卵する鳥、杜鵑の怪異、「しでの鳥」の事を忌んでいた。
どうして、そう思うのかと言うと、幾ら(いくら)、害の無い、寧ろ(むしろ)不死身と言う素晴らしい能力の怪異だとは言え、怪異は怪異なのだ。
お化けはお化けなのだ。
化け物は化け物なのだ。
女の子にとって、化け物が身に付いているという事を知った以上、其れは苦痛以外の何でも無いだろう。
特に、月日ちゃんは、さばさばした性格だ。
兄である僕を裁こう(さばこう)とする程の「サバサバ」加減だ。
彼女はそんなに長ったらしく生きて居(い)様(よう)等と思って居(い)無(な)い筈(はず)だ。
彼女にとって、「不死の鳥」はただの化け物だ。
だから、僕は、化け物を彼女の体から引き剥がしたいと考えていた。
化け物だけを。
間違って、月日ちゃんと化け物がくっ付いたまま、剥がして(はがして)月日ちゃんの生き血を浴びる様な事無く、彼女の背負っている化け物を取ってあげたいと思った。
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紛物語
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「傷物語」「化物語」「偽物語」に続く、物語「紛物語」の
つきひクロウ、まよいフロッグを載せています。
つきひクロウ、まよいフロッグを載せています。
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004
「なあ、トランプでもせんか」
「はあ?トランプ?」
「そうじゃ、トランプじゃ。御前さんが千石と遊んだじゃろう。アレをワシも遣りたいのじゃ。久し振りにな」
忍野忍は、600年程も生きている吸血鬼。
「そういえば、トランプって、ヨーロッパ、いや、ギリシャで大流行して、国が法律で禁じる程だったって話をテレビで聞いた事があるけど、忍は其の時生きていたのか?」
僕は、忍野から、月日に憑いて居る怪異を追い払う方法を訊けずに、内心落ち込んでいたが、其れでも話を切り替えした。
「ワシを何歳じゃと思ってるのじゃ、そんなに老人じゃないわい。古代ローマと言ったら、600念どころ昔では無いわたく、どいつもこいつも、ワシを高貴高齢者扱いしたがって」
「ああ、そうなのか、ごめん、ごめん。」
「何をするかのぉ」
「ううんそうだな。」
「神経衰弱以外はせん!」
「初めからその気なら、訊くな!」
僕は、忍に突っ込みを入れた。
「此れから、御前様に、特別な話を聞かせてやろう。神経を衰弱させながら、ワシの有益な話をどれだけ聞き漏らさずに聞けるかのぉ」
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003
其の嘘みたいな事が起きたのは、月日ちゃんとの事件が有った後の事だ。
黒いカラスが遣って来た。
訳が無い。
向こうから、ラッキーが遣って来るなんて事が在る筈(はず)も無いのだ。
僕は、何気なく、忍野忍に訊いて見た。
「もしかして、もしかして、まあ、月日ちゃんは月日ちゃんなんだから、別に「しでの鳥」を追い払う必要なんて何処にも無いのだろうけれど、それでも、若しかして、方法があるとしたら、「しでの鳥」を追い払う事は出来るのか。」
「…」
「おい!」
僕は、頭の後ろで組んでいた手を上に上げて、其の後床に叩きつけて、起き上がり、
風呂上りで、白い煙(正しくは水蒸気)がもくもくする自分の体越しに、自分の部屋の電灯出来ている影に首を捻って半分怒鳴った。
「ばあろお。そんな物あるか。
そんな都合の良い方法があって堪る(たまる)か!」
忍野忍はその姿を現して、そう悪態を突いて来た。
忍野忍は元怪異だから、「悪態を憑く」の方が、適切だ。
彼女が発する言葉一つ一つが怪異の一部なのだから。
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002
僕は、其れでも、燃える兄だ。
阿良々木暦。
ファイヤーシスターズの兄、暦。
最近に成って、やっと自覚してきた事がある。
それは、「自分も炎」だという事だ。
阿良々木暦は、阿良々木月日と阿良々木火憐の兄であるのと同時に、
ファイアーシスターズの兄でもある。
僕が妹達から貰い火をしたというよりも、元を辿ると、兄が妹達を燃える闘魂に変えてしまった様だ。
月日ちゃんとの事件が有って以来、僕は、月日ちゃんにどの様な態度をとれば良いか今1つ(いまひとつ)解らなかった。
蟹が解った様な虫なら、僕は、解らない鬼だった。
僕がもし新しい怪異だとするなら、漢字で書くと、
「不解鬼」だ。
読み方は何だろう。
ふかいき。
何だか、不快に成りそうだ。
ヶ原さんの気持ちが今一解らないという意味でも、この「不解鬼」はぴったりの漢字だろう。
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001
杜鵑(ほととぎす)は托卵(たくらん)をします。
「しでの鳥」は鳥の形をしたお化けです。 「以津真天」は鳥の形をしたお化けです。 不死鳥。 聖なる鳥。怪鳥。 フェニックス。 死なない鳥。 夕影鳥。 拠る直鳥。 あやなしどり。 くつてどり。 五露取り。 くきら。 しでのたをさ。 しでの鳥(さ)。 死出の鳥。 しでのとり。 いつまで生きる積もりだ。 しでの鳥は。 いつまで〜。 以津真天空。 以津真天空ヴァン。 以津真天空版。 以津真天CARAVAN .以津真天さえずるのよ。 何時まで。 何時迄。 今迄。 今、まで。 いままで。 今まで。 怪異、以津真天と、しでの鳥を追い払う為には、過去を見る事と、今を見る事が必要だ。 以津真天に対する怪異は、「居間真天」だ。 月日ちゃんは、其の見が、生まれる前から、怪異であった事を知った。
其れでも、彼女は、此処まで生きて来た。
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