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地下鉄の階段を一段ずつのぼると
そとは まぎれもない四月だった
視力が計れないほど微量に回復している
ハイヒールのつま先をまるくして
ことしも春があたたまった
信号を待っていると
つるんとした紺色の新入社員が
ぞろぞろと流れてくる
どのひともみんな
あごの骨の柔らかそうな顔
〈ちがうしつもんをしてみてよ〉
みどりと光がこまかくちぎれて
ちょうど 町が点描法で仕上がっていたころのようだ
〈あなたのこえがすきです〉
きのう 突然 脈略もなく
夢に現れた男は
先へいくほど尖った神経質な指をもってた
木のようなひとね
なぜだろう
かれにとらわれながら
一日をすごしてしまう
きっと
すきになり始めている
『はじまり』 小池 昌代 詩集「水の町から歩きだして」より
たまたま立ち寄った本屋さんに思潮社の現代詩文庫が並んでいるコーナーを見つけて嬉しく
なって何冊か買い込んでしまった。女性の詩を読みたくなって、それも自分と歳の近い詩人の
作品を読みたくなって 小池 昌代さんの詩集を手に取った。
初めて読む詩人の作品、その一番最初のページに載せられた作品を読むときのドキドキする
緊張感、詩人の口元から零れる淡い木洩れ日のような言葉が、自分の呼吸と重なり合う瞬間
の喜び。。。。。
街中で拾い上げた言葉たちの鮮度が爽やかに伝わる・・・・・素敵な詩集でした。
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