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お父さんの後に入る湯ぶねには
垢がいっぱい浮いていた
湯面ギリギリまで洗面器を沈めて
いちど追い払った垢がふたたび漂い出るタイミングを見計らい
その縁をちょっとだけかたむけると
すごい勢いで垢が流れ込む
お父さんの皮膚からこそぎ落とされた汚い物が
洗面器の水面を埋めつくす
紙縒(こより)状の生物に似た大量の死骸を
排水溝に流し終えてから
僕は胸元の湯をすくい顔を洗う
家の中で二番目に入浴する者の義務として
僕はそれを日課としていた
お陽さまの匂いを吸い込んだバスタオルで身体を覆い
簀の子が敷かれた通路から居間に駆け込んで
コタツで順番を待つ弟に合図をする
(新しくなったお父さんがテレビを見ながらお酒を呑んでいる)
だけどどうして
(僕はコタツの中からパジャマを取り出す)
だけどどうして毎日あれだけの垢がでるのだろう
(赤くツヤツヤになったお父さんが大きな欠伸をする)
自分が大人になってもお風呂の中で垢を擦るのだけは絶対やめよう
(お父さんが僕にお酒のおかわりを頼む)
だけどお父さんは気づいているのだろうか
(弟が湯気を立てて風呂から戻ってくる)
湯面にぶよぶよと浮かぶ垢を洗面器に移すとどれだけの量になるのかを
大量の死骸となった紙縒状の生物が排水溝に吸い込まれていくさまを
僕が毎晩眺めていることを
「今日は寒いから今すぐお風呂に入っちゃおうね」
(一番下の妹の手を引いて、お母さんがお風呂へと向かう)
コタツでウトウトしているお父さんの後頭部からぽわぽわと
湯けむりがのぼる
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詩
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このストーリーは体験談ですか。"お父さん"はすいすさんのお父さんですか。それとも、すいすさんご自身のことですか。それとも、全くの創作話かな?
"お父さん”の垢をを掬い取って流す、少年”ぼく”の気持ち、良く分かります。
2013/1/5(土) 午後 7:03 [ afuro_tomato ]
tomatoさん
僕の親父のことです。先日ホテルでノンビリと朝風呂入ってたら風呂の水面にプカプカ浮いてる垢を見付けて、それ見て想い出したのです。
2013/1/6(日) 午後 3:02 [ すいす ]
こんばんは。久々に、すいすさんの緻密な文・・・あのころと変わっていない文体に時の流れが埋まりました。
2013/2/8(金) 午後 6:53
カトレアさん
おひさしぶりです。あなたのブログが再開されて喜んでいます。
愉しみが一つ増えました。
2013/2/11(月) 午前 6:28 [ すいす ]