|
以前車庫として使っていた小さい倉庫があって、そこに1年分溜め込んだ段ボールが
積まれていた。ちょっと暇になったのでそれを処分すべく業者を呼んだ。大きなゴミ収集
用のトラックがやってきて二人の男が段ボールを運び出し、収集用のトラックは次々に
段ボールを噛み砕き、のみ込んでいった。事務仕事をしながら、その作業をチラチラ見
ていると、男の一人と目があった。男はちょっと遠慮がちに僕に手招きしている。
仕事にもちょっと厭きてきていたので、僕は腰を上げ外に出た。
「ちょっと見てもらえますか」 男が云った。
「なにか変なモノでもあったのですか」
「いやいやちょっと」
僕は男の後について、作業途中の倉庫に足を踏み入れた。
「これを・・・・ちょっとどうしようか聴いてみようとおもって」
男が手にとって僕に差し出したモノは鳥の巣だった。薄汚れた藁のかたまりの真ん中に
大きく開いたくちばしが六こ並んでいた。親が運んでくる餌を、大きな口を開けて待つチビ
達。段ボールの隙間の奥に巣は作られていた。ここなら見つかる心配もない。頭の良い
親だなと思った。
「そこにおいといて下さい、まだ全員生きてるようだから」
段ボール処理の作業が始まって1時間ぐらい経過している。その間、親鳥は警戒して
近づけずにいるのだろうか。
作業が終わり、業者が去った後。僕は鳥の巣を倉庫の一番奥の棚に置いた。今まであ
った段ボールは無くなり。扉のない倉庫は外から丸見えである。猫や蛇やカラスに狙われ
ないように、僕は棚の廻りを囲った。
事務仕事に戻っても、倉庫の方ばかり見ていた。餌を咥えた親鳥が倉庫の前まではや
ってくるのだが、中の環境が変わったためかどうか、なかなか巣に気付かないようだ。
餌を咥えて途方に暮れている。チョコチョコと近づいてはサッと離れ、道路上を彷徨いて
車に轢かれそうになったりしている。人間の感情で推察するのは変かもしれないが、子
を見失って錯乱している様子である。
こういう場合、同じ子を持つ親としてどうしたら良いのだろうか・・・・・いくら悩んでも妙案
がでなくて困った。
|
全体表示
[ リスト ]





世の中には「泣ける話」とか、まぁ、そのたぐいの作り話がげっぷが出るくらい溢れていて、そのほとんどがお粗末なのが多く僕は食傷気味なわけです。
おそらくそれは内容もそうだけど、文章によるところも大きいわけで、僕としては中学生の作文レベルの文章なんぞ今さら読みたくないと思うから、はなっからああいうものは読みたくもないわけであります。
仮に読んだとしても全然心は動かないし、社交辞令にもで「感動しました」とか「号泣しました」とか書きたくもないわけであります。
また、その文章から「いい話だろ?」的な、「泣けるだろ?」的な書き手の卑しさがにじみ出ているのも、すくなくとも40年以上モノを読んできた50歳の大人には一発で分かるのであります。
そういうこともありますがゆえ、この話にはすごく心が動かされているわけで、さすが、すいす兄さんだな、と。
2014/6/1(日) 午後 2:59
キリンちゃん
最近は映画でも小説でもそれから音楽なんかでも評価の基準に「号泣」とか「感情移入」とか云う物が入ってきてるような気がします。策略として人を泣かすのは難しい事じゃない。昔テレビでやってた子供をお使いに行かせる番組で僕はテッシュ半分使ってましたから。笑
良い作品というモノは、涙とか笑いとかより先に人に沈黙を強いるものだと、僕は思っています。
2014/6/1(日) 午後 3:30 [ すいす ]
「これは・・・」どうしたらいいのかしら。
結局親鳥は子供たちを見つけたのでしょうか。
見つけて、育ててほしい、です。
2014/6/1(日) 午後 7:56 [ afuro_tomato ]
すいすさん、ずるいよなあ。六月をこんな文章から始めるなんて。
少しうれしく、そして悲しい季節がやってきた。
2014/6/1(日) 午後 10:41 [ saku ]
tomatoさん
けっきょく巣だけが残ってしまいました。
2014/6/2(月) 午前 7:05 [ すいす ]
sakuさん
暫くこういう文章を書いてなかったので覚束ない筆だけど、それがホンワカした良い味になってたりしてね。。。笑
2014/6/2(月) 午前 7:11 [ すいす ]