詩の擁護

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ガラ

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 ポール・エリュアールが詩を書き始めたきっかけは、肺病を患い入院したスイスのサナトリウムで出逢った、ロシア生まれの女の子と恋に墜ちた事からであった。
 二人は夫婦となり、ポールは彼女に「ガラ」と言う名を与え、多くの詩を捧げた。
 例えば・・・・・・。
  


     大声で

     敏捷な愛が立ち上がる

     と 爆発がまぶしすぎて

     愛の納屋の中では脳が

     なにもかも告げてしまうのを恐ろしがる。


     大声で

     血液に住む烏たちが

     記憶を他人の出生で覆い隠してしまう

     ついでかれらは 光のなかにひっくり返る、

     接吻でしめつけられた未来だ。


 なんとも、艶めかしい詩である。ポールの詩作のきっかけとなり、その後も、この詩人に無限のインスピレーションを与えた妻は、やがて彼の元を去る。
 原因は、夫婦で訪ねたポールの友人宅での出逢い。ガラは夫の友人と恋に墜ち、その画家へと走った。
画家は終生、ガラを愛し、彼女をモデルに絵を描き続けた。
 画家の名は、サルバドール・ダリ。

 偉大な詩人と、画家に創造の啓示を数多く与え。名作を生み出すきっかけとなった、この女性。
さぞや、魅力的な人だったんだろうな。



   夜ではない、月だ。 牛乳鉢のように 優しい空、君を微笑させる、古ぼけた恋人。

   そしてきみは ぼくにかたる、彼らのこと。かれらは きみの心を飾る、かれらは
  
  きみの家を飾る、かれらは ぼくらの人生を 飾る。

   ともよ、彼らは かぞえきれない、父 母 子供たち 妻、その幸福でない人達。

   それなのに君の夢は しずかで、

   でまたぼくは 計算がすぎる。


          ポール・エリュアール 「黄昏」  安東 次男 訳

さて、田村隆一。

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    ドイツの腐刻画でみた或る風景が いま彼の眼前にある

    それは黄昏から夜に入ってゆく古代都市の俯瞰図のよう

    でもあり あるいは深夜から未明に導かれてゆく近代の

    懸崖を模した写実画のごとくにも想われた


     この男 つまり私が語りはじめた彼は 若年にして

    父を殺した その秋 母親は美しく発狂した
       
               田村隆一 『腐刻画』
 


   昭和54年12月発行の「面白半分」臨時増刊号。昭和54年というと僕が19の歳である。
  当時「面白半分」という雑誌で、時々作家の特集号をだしていた。その中の一冊。

   カウンターでお酒を呑む詩人の、表紙写真が好きで、ずっと手元においてある。
  今の学生が荒地派の詩人を読んでいるのかどうか分からないが、この頃は彼らの
  作品が主流だった(少なくとも僕の廻りでは)。

  友達の一人に、吉本隆明の熱烈なファンがいて、頻りに吉本の詩を勧められたが、
  僕は、あまり好きにはなれなかった。
  今考えると、そいつの熱の入れように辟易していたのかも知れないし、吉本の
  作品にも、ある意味同じような熱が感じられて、嫌だったのかも知れない。

  
   空から小鳥が墜ちてくる
 
   誰もいない所で射殺された一羽の小鳥のために

   野はある


   窓から叫びが聴えてくる

   誰もいない部屋で射殺されたひとつの叫びのために

   世界はある

     田村隆一『幻を見る人』抄

  当時、田村の紡ぎだす言葉が、僕の不安を静めてくれた。何に対する不安なのか
  も理解出来ぬままに、無性に苛立つ心を静めてくれた。
 
  詩は理論ではなく、衝動なのだった。それに気づいた時、父親を殺し 美しく発狂す
  母親を見守る自分に出逢った・・・・・19歳だった。

  

夜更けの滝口修造

滝口修造は詩人である、そしてあまり詩を発表しなかった詩人である。


 
   詩は形を持たぬ

   という頑なな認識があり、私を捉えてはなさない。

   書いているときの

   ペンや鉛筆が紙を擦っているが、

   これはこれで別の何かの仕事なのか ?


 言葉は処えらばず

   遣って来て、掠めて去る。

   私はおんなの名を呼びたいと思うとき

   のように、その名を探している。

   『アララットの船あるいは空の蜜へ小さな透視の日々』 抄


   滝口修造の詩を鑑賞していると、夜更けの書斎で独り、言葉達と遊ぶ詩人の

   横顔が浮かび上がる、遊びではあるが、真剣で孤独な遊びである。

   精密機械の部品を一つ一つ丁寧に分解し、何か別の物を組み立てる

   試みを決意したように、日常言語を分解し、彼の組み上げた美しい

   言葉たち。


   破れ 傾いた扉のなかに
   風 自由の風が住む
   美しい鳥たちのように

   透明な樹のなかに
   優しい柔らかな胸が横はる
   愛の一つの影のやうに

   海のやうに
   暗黒の鏡のなかに
   世にも美しい形の鍵がある

    『不思議な時間のやうに』 抄


   夜更けに、滝口修造の詩を鑑賞する。彼と秘め事でも語り合うように。

   随分昔に、中断した会話の続きを、再開でもするように・・・・。 

   捉えることを断念した言葉について、語り合う。

   昔、二人で獲り逃がした、大きな魚の話でもするように。


   
      言葉はふだんは   

      どこに住んでいるのだろう ?

言葉はまばたきによって

      生きつづけるのか ? 滝口修造



   

   

   

   

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