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雑音の中から拾う愛の音 紋章
 昭和の番傘誌より

 番傘秀吟抄なるものが、昭和30年、複数(今回24名)の選者を以って
1年間の秀句推奨を行った。

 岸本水府
「秀吟推奨」のあとを見て

 句を味わうこと、句を選すること、いずれもその人の人生観、
作句修行、環境、体験などによって、差を持つことは当然である。
 これによって、一人の選者を信頼し、句を提出批評を乞うことは、
選者と作者との間にスムーズな約束が成り立ち、それはそれで
よいとして常に行われていることである。

 しかし、理想からいって、数人の選者が集まって秀句を決定する方が
正しいということは誰に言えることであろう。

 A選者がよいと推奨し、B選者がそれをすでに言い古されていると
指摘する。B選者の捨てたものをA選者が拾う場合もある。
ここに選者はひとりの場合であっても数人の選者に等しいだけの寛容と
広い視野を持つ必要が起こってくる。

 選についてのもう一つの問題がある。それは、句は多数の作者の
ものした多数の作品が互いに点を争うているかどうか、
ということである。言い方を換えると選者はその競争の審判官を
しているかどうかということである。

 川柳界において、知らず知らず、作家は競争に出場し、
選者はその審判を務めているような気でいるのではないかと
思うことがある。

 川柳は競争していない。句は世に問うているのである。
何をつかもうとしているのかを示している。
おのおのが句を磨いているのである。それを見定めるのが
選者である。作者が秀句をめざしていることを時をおなじうしている
競争と見てはいけない。

 今回本社が24名の選者を以って一年間の秀句推奨を行った。
この行いはこの二つの言い分を含めた上のことである。

 秀句52句(同人27句、一般25句)を獲た、
世相にふれた句、愛の流れを知る句、明るさを呼ぶ句、
美しい語感、鮮明な印象おのおの作者の個性を発揮して
あますところがない。

(秀吟より2句抜粋)
 六階へ上るうどんと乗り合わせ    萬 楽 (金泉)
    ※萬楽君の笑いをとらえる妙味を知る
 嫁ぐ娘の心の備えあったやら     英 子 (笹本)
    ※戦時中から句に家庭の苦闘を訴えて多数の愛誦を受けた
     英子さんの、今親としての深い思いやりを披涎心を惹く。

 この52句のこれだけが一年間の収穫ではない。ほかにも読面に
あふれていることを銘記しておきたい。
 それはこの一年間の約1万5千句は全部私の選を経た佳句だからである。
今度のこの催しで選者の好みと動きも、しっかりこの眼で見た。
             (昭和31年1月号より)


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