輝きの時 "Carry Out Your Life !"

今、生きることを考えてみませんか

全体表示

[ リスト ]



イメージ 1
 おはようございます。今朝は雨模様の関東地方ですが、被災された熊本県や大分県の方々にもこの冷たい雨が厳しく降りかかってきています。雨による二次災害、そして避難生活で蓄積した疲労で体調を壊す方々が出ないことを祈ります。さて、今朝は映画「八月の鯨」を紹介することにしましょう。

 「八月の鯨」は1987年に公開されたアメリカ映画で、イギリス出身の映画監督リンゼイ・アンダースンがメガホンをとりました。アンダーソンはイギリス出身の監督で、あのイギリス、ニュー・ウェイブの「If もしも」(68年 第22回カンヌ映画祭で「パルム・ドール」を受賞)や「オー・ラッキー・マン」(73年)などの作品を世に送り出しています。

 この作品、岩波ホールの創立20週記念の作品として上映され、異例のロングランとなった作品でもありますが、実はその後すぐに衛星放送でオン・エアされたので、喜んでビデオに録画。ところが後日になって映画の半分近くまでを鑑賞し、後半はまた後でと考えていたところ、ある事情で、ビデオがすべて消去、それ以降見よう見ようと思いながらもつい先日までそのままになってしまっていました。しかし今回改めて全編を鑑賞して、爽やかな感動を受けました!

 この作品の撮影当時、リリアン・ギッシュは実に93歳!(彼女はこの作品でカンヌ映画祭特別賞を受賞しています)そしてベティ・デイヴィスが79歳。いわば黎明期からのハリウッド映画を代表するともいえるこの大女優の二人の演技臭さを感じさせない自然な演技が年齢を増してもなんとも可愛らしく、また愛おしく、時に微笑までを誘います。そして脇をしっかりと固めているのが、ヴィンセント・プライスにハリー・ケリーJr.。
 ヴィンセント・プライスといえばすぐに想い出すのが「アッシャー家の惨劇」(60年)や「恐怖の振り子」(61年)といった一連のロジャー・コーマン監督とのエドガー・アラン・ポーの作品の数々!ホラー映画で大成功をおさめたプライスは「刑事コロンボ」などの作品にもしばしば特別ゲストとして招かれています。一方でハリー・ケリーJr.はジョン・フォードの作品、「黄色いリボン」(49年)、「リオグランデの砦」(50年)、「長い灰色の線」(55年)などで脇役ながらも性格派の演技をしっかりと見せてくれました。

 メイン州の小さな島にある別荘で、毎年夏を過ごす老姉妹リビー(ベティ・デイヴィス)とセーラ(リリアン・ギッシュ)
イメージ 2
かつて島の入り江は8月になると鯨が現われ、少女だったころの二人は鯨を見に行くのが楽しみだった。姉妹は長い間互いに支え合って生きてきた。リビーは、第1次世界大戦でサラの若い夫が死んだ時、サラの面倒をみたが、リビーは病のため目が不自由になり、今度はサラが2人の責任をもつことになる。リビーは徐々にわがままになり、言葉にトゲが出る。他人に依存しなければ生きてゆけない自分に腹を立てていた。リビーが周囲にとげとげしく接するため、彼女の世話をするセーラは心を痛めるのだった・・・。

 映画を見てまず感じるのはアンダーソン監督の出演者に対する深い敬愛の情。映像は美しく、そして優しく出演者を畏敬の温かいヴェールで包み込むように描写されています。この色彩の美しさは昔の「テクニカラー」を髣髴とさせます。そして全編に流れる主題、生きることーどこまでも希望をもって生きることの大切さがこの作品の底流にしっかりと脈付いています。したがってこの作品は登場人物すべてが肯定的に描かれています。次元は異なるでしょうが、あのモーツアルトの「魔笛」やドストエフスキーの「未成年」のように。いわば詐欺師まがいのようなプライス、そして目の不自由な気難しいベティ・デイヴィスまでもが最後は自らリリアン・ギッシュとの暮らしのために一肌を脱ぎます。

 アメリカ文学の黎明期ー「アメリカン・ルネサンス」時代の名作にハーマン・メルヴィルの「白鯨 Moby- Dick;  or, The Whale」がありますが、この「白鯨」は今日まで「神」か「悪魔」か、「宿業の象徴か」など多くの議論を呼んでいるのは有名な話です。(1953年にジョン・ヒューストン監督、グレゴリー・ペック主演で映画化もされています)しかし、アンダーソン監督はこの作品でその暗いアメリカン・ルネサンスの文学とは全く相反する「鯨像」を描きました。漱石の「明暗」ではありませんが、「暗」から「明」へそして「闇」から「光明」へ! 「八月の鯨」−それは忘れることのない若き生命の象徴、そして生きる希望。いわば「八月の鯨」は今生きている自身の生命の象徴でもあるわけです。姿は見せないけれど、鯨はしっかりと二人の命として生きているー何があっても前向きに限られた人生を生き抜いていくことーこれが分かった時、映画は私たちの生命に大きなメッセージを残していきます。

 さて、今日は「八月の鯨」の全編を日本語の字幕付きでお送りします。お楽しみくださいね。(なお著作権の関係で映像が削除された場合はご了承ください)







「八月の鯨」

1987年 アメリカ映画
上映時間 91分

 監督 リンゼイ・アンダーソン
脚本 デヴィッ・ベリー
撮影 マイク・ファッシュ
音楽 アラン・プライス

キャスト
サラ・ウェッバー   リリアン・ギッシュ
リビー・ストロング  ベティ・デイヴィス
ミスター・マラノフ  ヴィンセント・プライス
大工のジョシュア  ハリー・ケリー・Jr.

閉じる コメント(6)

アバター

初めまして

八月の鯨は、公開前に、東京の映画祭か何かで観ました
ベティ・デイヴィスとリリアン・ギッシュの持ち味、姉妹の性格を考えれば
姉妹の配役が当初、年齢通り、逆でオファーというのがピンと来ないです

ドライビングMissデイジーも好きですけど
老いても生命力豊かで長い人生経験値を感じさせる出演者による映画が少なくなった気がします
老名優はいても使いこなせる監督が少なくなったという事でしょうか

2016/4/24(日) 午後 6:24 mathichen

顔アイコン

この映画は心に残るものでした。
リリアンギッシュの可愛らしかったこと。帽子にリボンつけたり
食事の招待のドレスアップなど・・
私もブログに載せたことありました。
こういう映画は大好きです。黄昏とか・・・

2016/4/25(月) 午後 3:34 pis*43*1

顔アイコン

> mathichenさんコメントをありがとうございます。
アンダーソン監督はここでリリアン・ギッシュの確かな演技力を買って、その愛らしい性格を際立たせようとしたのかもしれませんね!

「ドライビングMissデイジー」もまた好きな作品です。
ご指摘のように若い監督ではなかなか往年の名優を使いこなすのが難しいのかもしれません。

2016/4/27(水) 午後 2:09 [ maskball2002 ]

顔アイコン

bbさん、いつもコメントをありがとうございます!
この作品のさわやかな感動はやはり良いものですね。
ヘンリー・フォンダの「黄昏」もまた味わいのある作品でした。
私もお気に入りの1作です。

2016/4/27(水) 午後 2:12 [ maskball2002 ]

この映画は、テレビで途中から観て素晴らしいと思い、DVDを買って、始めから観ましたが、いい作品だと思いました。

2016/5/8(日) 午前 6:44 [ 六月の風 ]

顔アイコン

> 六月の風さん、3連続のコメント投稿ありがとうございます。
この作品の老いてますます人生をしっかりと生き抜こうとする姿勢が大好きです。
その根柢には常に希望が輝いているあたり、いいですね!

2016/5/8(日) 午後 3:39 [ maskball2002 ]


.


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事