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 こんにちは、熊本県で震度7の大地震が起こってから4日ほどが経ち、熊本では死者42人、行方不明者11名、怪我人1、096人、そして熊本と大分を合わせると優に19万人以上の方々がいつ終わるとも知れない避難生活を強いられています。にも拘わらず政府の救援物資はまだ被災者の方々には雀の涙ほどかしか届いておらず、安倍政権は前回の原発事故の教訓を忘れてしまったのか、無視しているのか、川内原発の稼働の停止を行なおうともしていません。多くの方々が命の代償として、私たちに教えてくれた東北大震災のあの「生命の教訓」は一体何だったのでしょうか。お亡くなりになられた方々のご冥福をこころよりお祈り申し上げます。
 今日は亡くなられた方々への追悼の意味を込めてはフランドル楽派最大の作曲家、ジョスカン・デ・プレのミサ曲「フェルラーラ公エルコレ」 をお送りすることにしましょう。

 作曲家のジョスカン・デ・プレJosquin Des Prez; 1440? - 1521年)に関してはこのブログでもすでに幾度も採り上げていますが、彼は盛期ルネサンスを代表する作曲家で、レオナルド・ダ・ヴィンチが美術の世界で成し遂げたことを音楽の世界で行ったといわれる天才作曲家です。ルネサンスというのは「再生」や「復興」を意味する言葉で、古代ギリシア・ローマの復興を意図した14世紀〜16世紀の文化運動の総称ですが、音楽に関しては古代の音楽の復興を目指したというよりも、ルネサンス時代独自の音楽様式を呼ぶものと考えた方が分かりやすいようです。
 
 ジョスカンに代表されるフランドルー旧フランドル伯領を中心とする、オランダ南部、ベルギー西部、フ
ランス北部にかけての地域ー出身の音楽家たち(ヨハネス・オケゲム、ハインリッヒ・イザーク、ジョスカン・デ・プレ、オルランド・デ・ラッソ)は、ポリフォニー(多声音楽)の書法を極限にまで発展させ、全ヨーロッパの音楽様式を決定していきました。彼らのようなフランドル出身の音楽家たちはその出身の地名を取ってフランドル楽派と呼ばれています。かつてはブルゴーニュ楽派(初期ルネサンス音楽の楽派で、15世紀にフランスのブルゴーニュ地方で活躍した作曲家達を指します)とフランドル楽派を合わせてネーデルランド楽派と呼んだこともありましたが現在ではこの名称はほとんど使われていません。
                                                                
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 ところで、ジョスカンと同時代に活躍した大作曲家にハインリッヒ・イザーク(Heinrich Isaac 1450年頃〜1517年)がいますが(なぜか日本では「インスブルックよさらば」一曲のみが広く人口に膾炙しています)、イザークは1502年に妻のバルトロメオと僅か2日間だけ音楽家の最大のパトロンの一人であったフェラーラのエステ家の当主エルコレ公の下を訪ねています。これはヨハネス・マルティーニの後継として、エルコレ公がお抱えの聖歌隊の楽長を公募したためでしたが、当時の公の宮廷聖歌隊はヨーロッパでも最高の音楽組織として遍く知れ渡っていました。公から楽長として白羽の矢が立てられたのは当時フランドルで最高の作曲家であった二人、ハインリッヒ・イザークと、ジョスカン・デ・プレ。

 エステ家に伝わる当時の使者の書簡が残っていますー「当家のお抱え作曲家としてはイザークを採用するのが他の者よりも良い選択だと思われます。イザークは休むことなく新しい作品を書き続けることができます。よくジョスカンの作品の方が優れているとは言われますが、彼は自分が書きたい時に作曲をし、他人のために作曲をすることはございません・・・。」このように使者はイザークを推薦しました。使者がイザークを推薦したもう一つの理由はイザークの方がジョスカンよりも少ない報酬額を提示してきたためでした。しかし、エルコレ公が選んだのは、イザークではなく、ジョスカン・デ・プレ。そしてジョスカンはエルコレ公のために「ミサ・フェラーラ公・エルコレ」という傑作ミサを残すことになります。

 ミサ曲「フェラーラ公エルコレ」は1503年/1504年に作曲されたとされている作品ですが、ジョスカンは楽長に就任する以前にもフェラーラ公の知己を得ているので、実際のところこの作品が宮廷声楽隊の楽長時代に作曲されたのかどうかははっきりとしていません。「フェラーラ公エルコレ」は典型的なミサの5章ーキリエ、グローリア、クレド、サンクトゥス、アニュスデイーから成るテノール・ミサ(テノールが定旋律を受け持つミサ)ですが、(今日紹介するア・セイ・ヴォーチ・コーラスの演奏は冒頭にグレゴリオ聖歌のイントロイトゥスー入祭唱を付け加えています)、面白いのはテノールの定旋律「レドレドレファミレ」=「re ut re ut re fa mi re」(当時はドを音階ヘクサコードー6つの音からなる音階ーでutと表現していました)が、ラテン語のフェラーラ公の母音ーHercules dux Ferrarie=e u e u e a i e-をそのまま音階で表現している点です。なお、定旋律は「キリエ」の冒頭部分から使われています。

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 この定旋律が他のパートと絡み合いながら、ポリフォニックな響きを醸し出し、その中で、テノールの定旋律がくっきりと浮かび上がってくる様は、ルネサンス最高の作曲家の名をほしいままにした天才、ジョスカンならではの作曲術で、余人の追従を許しません。このあたり、晩年のバッハの「フーガの技法」を彷彿とさせるものもありますね。演奏の
ア・セイ・ヴォーチ・コーラスは
「タリス・スコラーズ」とメンバーがかなり重複しているということですが、ジョスカンの作品の本質に迫るような演奏を聞かせてくれます。「タリス・スコラーズ」という名を聞いただけでも彼らの演奏の質の高さが窺えます。このア・セイ・ヴォーチ・コーラスのCDは最近発売されたジョスカン・デ・プレの中では出色のもので、ジョスカンの素晴らしさを如実に堪能させてくれます。このような演奏を聞くと、一部の好事家が「ジョスカンのミサは面白くない、パレストリーナのミサに進んだほうが良い」などと評するのが、いかに誤ったものであるかがはっきりと分かってきます。それではジョスカン・デ・プレのミサ曲「フェラーラ公エルコレ」を
ベルナール・ファブル=ガル指揮
ア・セイ・ヴォーチ・コーラスの演奏でお送りします。お楽しみ下さい。
 



    再生できないときはhttps://www.youtube.com/watch?v=I0W23E-HxDwを訪問して再生してください


1. Introitus  01:50
2. Kyrie   05:14
3.Gloria   04:02
4.Credo   06:50
5.Sanctus  06:42
6.Agnus Dei  06:17


ジョスカン・デ・プレ - Josquin des Prez, (1455-1521)
ミサ曲「フェラーラ公エルコーレ」 Missa Hercules dux Ferrariae  30:55
 ミサ典礼文 - Mass Text
ア・セイ・ヴォーチ・コーラス - Sei Voci Chorus, A
パリ・ノートルダム大聖堂聖歌隊 - Maitrise Notre-Dame de Paris
ベルナール・ファブル=ガル - Bernard Fabre-Garrus (指揮)


「へクサコード」の説明画像はhttp://fuji-san.txt-nifty.com/osusume/2016/01/post-ea46.html
からお借りしました。


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