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 こんにちは、今日の午後は佐藤豊彦の弾く、温かく美しいリュートの音色をお送りすることにしましょう。佐藤豊彦のリュート演奏はこのブログでも幾度か採りあげていますが、今日は彼の出世作となったアルバム、「グリーンスリーヴス、涙のパヴァーヌ 佐藤豊彦リュート・リサイタル」の冒頭に収められた「グリーンスリーヴス」を紹介することにします。

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 ご存知のようにルネッサンス時代に全盛を誇ったリュートは、17世紀頃のフランスでルネサンス・リュートからバロック・リュートへとその形態を変え、弦の数が著しく増やされてーバロック・リュートでは 11コース20弦として定着しますー依然としてその人気を保っていました。バッハがリュートを愛し、その作品を残しているのは有名な話ですが、もちろんそこには彼の友人であった当時最高のリュート奏者であり作曲家と称された、シルビス・レオポルト・ヴァイスの存在が大きく影を落としていることを忘れてはいけません。またバッハの弟子にはクレプスというリュートの名手もいました。
 ルネサンスからバロック期にかけて隆盛を誇ったリュートも、ギターなどの音量が大きく表現の幅の広い他の楽器の興隆により、一時はその姿を完全に消してしまうことになります。しかし20世紀に入りリュートは奇跡的な復興を成し遂げます。そのリュートの復興に大きな功績を残したのがドイツの名リュート奏者、ヴァルター・ゲルヴィッヒでした。
 
 音楽学者の皆川達夫さんの話によれば、大学での音楽史の講義(リュート)の時間に、一人の学生が燃えるような眼差しで真剣に皆川さんの講義に聞き入っていたそうです。講義の終了後、その学生が皆川さんの許に訪れ、「今日のリュートの話を聞いて、リュートを勉強したくなりました」と語ったということです。学生の名前は佐藤豊彦!もちろん現在リュート奏者として世界中で活躍されている佐藤さんのことです!!
                                                             
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  佐藤豊彦は現在のリュート奏者の第一人者として世界的な活躍をし各地で高い評価を得ています。佐藤さんは立教大学出身で、在学中に音楽史を皆川達夫さんに、大沢一仁さんにギターを、そして作曲を呉泰山に学んで研鑽を積みました。68年にはスイスに留学しバーゼルのスコラ・カントルムでリュート奏者のオイゲン・ミュラー・トンボワ(彼はヴァルター・ゲルヴィッヒの弟子にあたります)の下で学び、71年にはバロック・リュートのアルバムを出し現在に至るまで第一線で活躍を続けています。

 今からもう20年以上も前のことになりますが、フィリップスから発売された彼のアルバム「グリーンスリーヴス、涙のパヴァーヌ 佐藤豊彦リュート・リサイタル」を初めて聴いて深い感動を覚えたことは今でもはっきりと記憶しています。ヴァルター・ゲルヴィッヒ譲りの(爪を使わない)指頭奏法によるそのリュートのまろやかで温かい響きは、こころの琴線に触れるものがありました。今日紹介する「グリーンスリーヴス」は作者不詳ともイギリスのリュート音楽家のフランシス・カッティングのものともいわれている作品で、有名なイギリス民謡の「グリーンスリーヴス」の旋律に基づく変奏曲です。
 
 それでは佐藤豊彦の演奏するルネサンス・リュートの演奏で「グリーンスリーヴス」をお楽しみください。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 



 
 
 
 おはようございます。今朝はルネサンスの初期イタリア・マドリガーレの作曲家、ヤコブ・アルカデルト(1505頃- 1568年)の美しいマドリガーレ、「白くやさしい白鳥」をお送りしましょう。
 
 ヤコブ・アルカデルト (Jacob Arcadelt)は盛期ルネサンスのフランドル学派の作曲家で、専らマドリガーレやシャンソンなどの世俗歌曲を作曲した作曲家です。「マドリガーレ」というのは16世紀半ばから17世紀初頭にかけて作曲されたイタリア生まれの世俗歌曲で、ペトラルカやボッカチオの詩に題を採った文学的な味わいを持つイタリア語の詩を歌詞にして、ポリフォニックな技法で書かれた声楽曲です。
 
 アルカデルトは126曲のシャンソン、そして200曲を超えるマドリガーレを作曲しており、彼の出版した「マドリガーレ 第1集」は34版にも及ぶほどの人気を博しました。この34版という数字は印刷技術がまだ未熟であった当時としては驚異的な数字ですね!15世紀〜16世紀のヨーロッパの音楽界ではフランドル出身の作曲家が多く活躍をしていました。フィリップ・ヴェルドロ、チプリアーノ・デ・ローレなど、マドリガーレを生んだイタリアでさえ、本格的なマドリガーレを作曲していたのはイタリア出身の作曲家たちではなく、フランドルの音楽家だったわけですから、彼らがいかに詩と音楽とを融合するポリフォニーのしっかりとした作曲技術と優れた音楽性を持っていたのかが容易に推察されますね。ヤコブ・アルカデルトもそれらの音楽家たちを代表する作曲家の一人でした。
 
 「白くやさしい白鳥 "Il Bianco e Dolce Cigno"」は初期マドリガーレの様式を示す典型的な作品で、和声的な響きとポリフォニックな絡みが見事に生かされたアルカデルトの逸品です。今日はマリン・コンスタンティン指揮のマドリガル室内合唱団の演奏でお送りしましょう。マリン・コンスタンティンはルネサンスやバロックの声楽作品を多く録音しているようですが、ここで聞かれる清澄なマドリガル室内合唱団の歌声はまた格別の響きを持っています。それではお楽しみください。
 
 
 
 
 
 
 
 
"Il bianco e dolce cigno" 4 v.

Il bianco e dolce cigno
cantando more, ed io
piangendo giung' al fin del viver mio.
Stran' e diversa sorte,
ch'ei more sconsolato
ed io moro beato.
Morte che nel morire
m'empie di gioia tutto e di desire.
Se nel morir, altro dolor non sento,
di mille mort' il di sarei contento.
 
 

「白き優しき白鳥」

白く優しい白鳥は歌いながら死ぬ。
けれども私は泣きながら生涯の終わりに達するのだ。
なんと奇妙で異なった運命だろう。
白鳥が失意のうちに死に
私が幸福のうちに死ぬとは。

死ぬときに私はあらゆる喜びと希望に満たされる。
死ぬ時に他の苦痛を感じなければ
一日に千回死んでも満足だ。



 
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 こんにちは、熊本県で震度7の大地震が起こってから4日ほどが経ち、熊本では死者42人、行方不明者11名、怪我人1、096人、そして熊本と大分を合わせると優に19万人以上の方々がいつ終わるとも知れない避難生活を強いられています。にも拘わらず政府の救援物資はまだ被災者の方々には雀の涙ほどかしか届いておらず、安倍政権は前回の原発事故の教訓を忘れてしまったのか、無視しているのか、川内原発の稼働の停止を行なおうともしていません。多くの方々が命の代償として、私たちに教えてくれた東北大震災のあの「生命の教訓」は一体何だったのでしょうか。お亡くなりになられた方々のご冥福をこころよりお祈り申し上げます。
 今日は亡くなられた方々への追悼の意味を込めてはフランドル楽派最大の作曲家、ジョスカン・デ・プレのミサ曲「フェルラーラ公エルコレ」 をお送りすることにしましょう。

 作曲家のジョスカン・デ・プレJosquin Des Prez; 1440? - 1521年)に関してはこのブログでもすでに幾度も採り上げていますが、彼は盛期ルネサンスを代表する作曲家で、レオナルド・ダ・ヴィンチが美術の世界で成し遂げたことを音楽の世界で行ったといわれる天才作曲家です。ルネサンスというのは「再生」や「復興」を意味する言葉で、古代ギリシア・ローマの復興を意図した14世紀〜16世紀の文化運動の総称ですが、音楽に関しては古代の音楽の復興を目指したというよりも、ルネサンス時代独自の音楽様式を呼ぶものと考えた方が分かりやすいようです。
 
 ジョスカンに代表されるフランドルー旧フランドル伯領を中心とする、オランダ南部、ベルギー西部、フ
ランス北部にかけての地域ー出身の音楽家たち(ヨハネス・オケゲム、ハインリッヒ・イザーク、ジョスカン・デ・プレ、オルランド・デ・ラッソ)は、ポリフォニー(多声音楽)の書法を極限にまで発展させ、全ヨーロッパの音楽様式を決定していきました。彼らのようなフランドル出身の音楽家たちはその出身の地名を取ってフランドル楽派と呼ばれています。かつてはブルゴーニュ楽派(初期ルネサンス音楽の楽派で、15世紀にフランスのブルゴーニュ地方で活躍した作曲家達を指します)とフランドル楽派を合わせてネーデルランド楽派と呼んだこともありましたが現在ではこの名称はほとんど使われていません。
                                                                
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 ところで、ジョスカンと同時代に活躍した大作曲家にハインリッヒ・イザーク(Heinrich Isaac 1450年頃〜1517年)がいますが(なぜか日本では「インスブルックよさらば」一曲のみが広く人口に膾炙しています)、イザークは1502年に妻のバルトロメオと僅か2日間だけ音楽家の最大のパトロンの一人であったフェラーラのエステ家の当主エルコレ公の下を訪ねています。これはヨハネス・マルティーニの後継として、エルコレ公がお抱えの聖歌隊の楽長を公募したためでしたが、当時の公の宮廷聖歌隊はヨーロッパでも最高の音楽組織として遍く知れ渡っていました。公から楽長として白羽の矢が立てられたのは当時フランドルで最高の作曲家であった二人、ハインリッヒ・イザークと、ジョスカン・デ・プレ。

 エステ家に伝わる当時の使者の書簡が残っていますー「当家のお抱え作曲家としてはイザークを採用するのが他の者よりも良い選択だと思われます。イザークは休むことなく新しい作品を書き続けることができます。よくジョスカンの作品の方が優れているとは言われますが、彼は自分が書きたい時に作曲をし、他人のために作曲をすることはございません・・・。」このように使者はイザークを推薦しました。使者がイザークを推薦したもう一つの理由はイザークの方がジョスカンよりも少ない報酬額を提示してきたためでした。しかし、エルコレ公が選んだのは、イザークではなく、ジョスカン・デ・プレ。そしてジョスカンはエルコレ公のために「ミサ・フェラーラ公・エルコレ」という傑作ミサを残すことになります。

 ミサ曲「フェラーラ公エルコレ」は1503年/1504年に作曲されたとされている作品ですが、ジョスカンは楽長に就任する以前にもフェラーラ公の知己を得ているので、実際のところこの作品が宮廷声楽隊の楽長時代に作曲されたのかどうかははっきりとしていません。「フェラーラ公エルコレ」は典型的なミサの5章ーキリエ、グローリア、クレド、サンクトゥス、アニュスデイーから成るテノール・ミサ(テノールが定旋律を受け持つミサ)ですが、(今日紹介するア・セイ・ヴォーチ・コーラスの演奏は冒頭にグレゴリオ聖歌のイントロイトゥスー入祭唱を付け加えています)、面白いのはテノールの定旋律「レドレドレファミレ」=「re ut re ut re fa mi re」(当時はドを音階ヘクサコードー6つの音からなる音階ーでutと表現していました)が、ラテン語のフェラーラ公の母音ーHercules dux Ferrarie=e u e u e a i e-をそのまま音階で表現している点です。なお、定旋律は「キリエ」の冒頭部分から使われています。

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 この定旋律が他のパートと絡み合いながら、ポリフォニックな響きを醸し出し、その中で、テノールの定旋律がくっきりと浮かび上がってくる様は、ルネサンス最高の作曲家の名をほしいままにした天才、ジョスカンならではの作曲術で、余人の追従を許しません。このあたり、晩年のバッハの「フーガの技法」を彷彿とさせるものもありますね。演奏の
ア・セイ・ヴォーチ・コーラスは
「タリス・スコラーズ」とメンバーがかなり重複しているということですが、ジョスカンの作品の本質に迫るような演奏を聞かせてくれます。「タリス・スコラーズ」という名を聞いただけでも彼らの演奏の質の高さが窺えます。このア・セイ・ヴォーチ・コーラスのCDは最近発売されたジョスカン・デ・プレの中では出色のもので、ジョスカンの素晴らしさを如実に堪能させてくれます。このような演奏を聞くと、一部の好事家が「ジョスカンのミサは面白くない、パレストリーナのミサに進んだほうが良い」などと評するのが、いかに誤ったものであるかがはっきりと分かってきます。それではジョスカン・デ・プレのミサ曲「フェラーラ公エルコレ」を
ベルナール・ファブル=ガル指揮
ア・セイ・ヴォーチ・コーラスの演奏でお送りします。お楽しみ下さい。
 



    再生できないときはhttps://www.youtube.com/watch?v=I0W23E-HxDwを訪問して再生してください


1. Introitus  01:50
2. Kyrie   05:14
3.Gloria   04:02
4.Credo   06:50
5.Sanctus  06:42
6.Agnus Dei  06:17


ジョスカン・デ・プレ - Josquin des Prez, (1455-1521)
ミサ曲「フェラーラ公エルコーレ」 Missa Hercules dux Ferrariae  30:55
 ミサ典礼文 - Mass Text
ア・セイ・ヴォーチ・コーラス - Sei Voci Chorus, A
パリ・ノートルダム大聖堂聖歌隊 - Maitrise Notre-Dame de Paris
ベルナール・ファブル=ガル - Bernard Fabre-Garrus (指揮)


「へクサコード」の説明画像はhttp://fuji-san.txt-nifty.com/osusume/2016/01/post-ea46.html
からお借りしました。


 
  今晩は、1月17日で阪神・淡路大震災が起こってもう21年を迎えようとしています。月日の経つのは本当に早いものですが、この間に被災された方々のご苦労は言葉では簡単に言い表すことのできないものでしょう・・。また亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

 今日は敬愛する音楽家、ハインリッヒ・シュッツの傑作、「十字架上の七つの言葉」を紹介することにしましょう。 

 「十字架上の七つの言葉」を知ったのは十代も終わりの頃、ちょうどその頃にコロムビアからウィルヘルム・エーマンの指揮するシュッツの作品が廉価盤(レコード)シリーズで発売され、古楽好きだった私はすぐに何枚かを購入しました。「葬送の音楽」、「ヨハネ受難曲」、「クリスマス・ヒストーリエ」、「クライネ・ガイストリッヒ・コンツェルト」等々、いずれもがドイツの「音楽の父」と呼ばれるシュッツの作品の素晴らしさを十全に伝えてくれる演奏で、若き魂がシュッツの精神との出会いを深い感銘を持って生命に刻み込んだのを記憶しています。 

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 私が最初に聞いたシュッツの作品は「葬送の音楽」と「十字架上の七つの言葉」でした。(「十字架上の七つの言葉」はコロムビアのシリーズとは別に購入して聞いたものです)しかし、初めに孤高の厳しい精神と信仰心で「死」と対峙した「葬送の音楽」と、それとは対照的に温かい大いなる高みから彼の円熟した作曲技法でイエスの「死」を描いた「十字架上の七つの言葉」を聞いたことは、私にとって幸せでした。厳しい音楽とばかり評価されがちなシュッツの作品の、厳しさと優しさの両面に作品を通して触れることが出来たわけですから。「十字架上の七つの言葉」のゴルゴダの丘で十字架に付されたイエスのドラマを、晩年のシュッツがイエスを抱擁しながら、その死を慈しむように音楽で表現し得たことに大きな感動を覚えました。爾来この曲は今でもシュッツの作品の中で最も愛着しているものの一つです。
 
 「十字架上の七つの言葉  "Die Sieben Worte Jesu Christi am 
Kreuz"」 SWV 478はハインリッヒ・シュッツ(Heinrich Schütz, 1585年〜1672年)が円熟期に差しかかった1645年頃の作品です。テキストはマタイ、マルコ、ルカ、ヨハネのそれぞれの福音書から採られており、カッセルの図書館の写本には次のように記されています。「我らの愛する救い主、イエズス・キリストが聖なる十字架で述べた七つの御言葉。ザクセン選帝侯楽長ハインリッヒ・シュッツ、極めて感慨深くこれを作曲」この言葉が示すようにこの作品はシュッツのあらゆる円熟した手法と音楽語法そして信仰心が結晶した傑作となっています。
 
 「十字架上の七つの言葉」は次のように極めてシンメトリーな構造を採っています。

 
1、導入・イエスが十字架に付き(合唱)
2、5声部のシンフォニア
3、独唱と合唱 人々がイエスを十字架に付けたのは(福音史家、イエス)
4、5声部のシンフォニア
5、終曲・神の殉教者を敬い(合唱)

 
 これを見ても分かるように最初の第1曲と終曲第5曲は合唱、第2曲と第4曲はそれぞれに5声部のシンフォニア、そしてその中央のこの物語の中核のドラマにあたる第3曲では、福音史家(ソプラノ、アルト、テノール、バス)やイエス(テノール)によって歌われていき(演奏時間の半分ほどはここで費やされます)、イエスのパートは特に威厳を持った「音の光背」とも呼ばれる、弦楽による3重奏が伴奏として用いられています。
 
 この作品を初めて聞いた19歳の頃、冒頭の「イエスが十字架につき」の合唱を聞いて既に私は作品の余りの素
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晴らしさに思わず頬に零れる涙を拭うのも忘れていたことを思い出します。シュッツの作品は厳しくその精神性の深さが、近寄りがたさを感じさせると思われている方も多いことでしょうが、この「十字架上の七つの言葉」のイエスを見つめるシュッツの温かい眼差しは聞く者を優しく包み込んでいきます!そして「エリ・エリ・ラマサバクタニ」、「我が神、我が神、何故私をお見捨てになられたのですか」この十字架上のイエスの言葉は、聞く者の命に大いなる呼びかけを持って響いてきます。
 
 演奏時間にして20分前後の作品ですが、シュッツはこの十字架に掛けられたイエスのドラマを大いなる父ー主の御目を持って音楽に描きあげました。ここにはシュッツの到達した総ての音楽語法が使われ、そして彼の厳しい信仰心によって、大いなる高みから俯眼した音楽によるイエスの十字架上のドラマが展開されていきます。シュッツの作品を敬遠されている方には是非聞いて欲しい作品です。

 今日はポール・ヒリヤー(Paul Hillie)指揮のアルス・ノヴァ・コペンハーゲン(Ars Nova Copenhagen)の名演で「十字架上の七つの言葉」をお送りすることにします。ヒリアーといえば、自ら結成したヒリヤード・アンサンブルとの演奏で有名ですが、この演奏は彼がヒリヤード・アンサンブルを脱退した後の、2009年に録音されたものです。ヒリヤーはこの時期にアルス・ノヴァ・コペンハーゲンを指揮して「マタイ受難曲」、「ヨハネ受難曲」、「ルカ受難曲」、「復活祭ヒストリア」、「クリスマヒストリア(物語)」等の名曲も録音しており、そのいずれもが優れた演奏となっています。たっぷりとした残響の中から浮かび上がって、溢れるような慈しみを持って歌われる各声部。この残響がまた神の視点から描いたイエスのドラマの客観性を一層際立たせてきます。中でも録音の良さは特筆されるべきでしょう。ここではバリトン歌手として、また古楽演奏家、そして古楽演奏の指揮者としてこれまで活躍してきた多くの経験が総て凝集され、蒸留されたような厳しくも美しい演奏を繰り広げています。それではお楽しみ下さい。








シュッツ:十字架上のキリストの最後の7つの言葉/ヨハネ受難曲(ヒリアー)
SCHUTZ, H.: Sieben Worte Jesu Christi am Kreuz (Die) / Johannes-Passion (Hillier)

ハインリヒ・シュッツ - Heinrich Schutz (1585-1672)
19:45十字架上のキリストの最後の7つの言葉 SWV 478
Die sieben Worte Jesu Christi am Kreuz, SWV 478
作詞 : 聖書 - Bible

エルセ・トープ - Else Torp (ソプラノ)
リネア・ロンホルト - Linnea Lomholt (アルト)
アダム・リース - Adam Riis (テノール)
ヨーハン・リンデロース - Johan Linderoth (テノール)
ヤコブ・ブロック・イェスペルセン - Jakob Bloch Jespersen (バス)
エリック・リンドブロム - Eric Lindblom (サックバット)
Erik Bjorkqvist (サックバット)
Ian Price (サックバット)
ユリアーネ・ラーケ - Juliane Laake (ヴィオラ・ダ・ガンバ)
サラ・パール - Sarah Perl (ヴィオラ・ダ・ガンバ)
レイフ・メイエ - Leif Meyer (チェンバロ)

ポール・ヒリアー - Paul Hillier (指揮)
録音: 27-29 August 2009, Garnisonskirken, Copenhagen, Denmark








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 今晩は、クリスマスまで残りの日も僅かになってきました。今日は日本ではあまり知られていないクリスマス・キャロル、「ガブリエルのお告げ ”Gabriel's Message”」をお届けすることにしましょう。

 ガブリエルーGabrielは旧約聖書、「ダニエル書」で語られている天使で、キリスト教ではラファエル、ミカエルらと共に3大天使の一人とされています。また「聖告天使」の別名を持ち、マリアに受胎告知をした天使として広く知られています。ガブリエルがマリアに受胎を告知する様子は新約聖書の「ルカによる福音書」に記されています。

 六か月目に、天使ガブリエルは、ナザレというガリラヤの町に神から遣わされた。
ダビデ家のヨセフという人のいいなずけであるおとめのところに遣わされたのである。
そのおとめの名はマリアといった。天使は、彼女のところに来て言った。
「おめでとう、恵まれた方。主があなたと共におられる。」
マリアはこの言葉に戸惑い、いったいこの挨拶は何のことかと考え込んだ。
すると、天使は言った。「マリア、恐れることはない。あなたは神から恵みをいただいた。」
 あなたは身ごもって男の子を産むが、その子をイエスと名付けなさい。

                                         ルカによる福音書 第1章26節〜38節

 西洋絵画の「受胎告知」でガブリエルは多くの場合青年の男性の姿で描かれ、神のメッセンジャーとされていますが、その一方でガブリエルは実は女性であるとする考もあるようです。シモーネ・マルティーニ、フラ・アンジェリコ、ボッティチェッリ、エル・グレコ、グイド・レーニ、そしてレオナルド・ダヴィンチ等ー残されている名画は枚挙に暇がありませんが、例に挙げた絵画はすべてガブリエルを青年の男子として描いています。またガブリエルは洗礼者ヨハネの誕生を両親に告知したともされています。

                わたしはガブリエル、神の前に立つ者。あなたに話しかけて、
                 この喜ばしい知らせを伝えるために遣わされたのである。

                                            ルカによる福音書1:19   

 「ガブリエルのお告げ」は13世紀のスペインの民謡ーバスク語で歌われていたバスク地方の民謡をザビーネ・ベアリング=グールド - Sabine Baring-Gould (1834-1924年)が採譜し、「ルカ福音書」に基づくバスク語の歌詞を翻訳して英語の歌詞を付けた作品で、ハリソン・オクスリー Harrison Oxley (1933-2009)が編曲をしました。

 しかし、ここで聞かれるマリアのイエスを身ごもった崇高な受胎の驚きと喜びを謳い上げる清澄で純朴でありながらも、どこか格調の高いメロディーの美しさは極めて印象的なものです。おそらくはあらゆるリスナーのこころの琴線に触れて、そのこころを動かしていくことでしょう。ところがこの作品、日本ではあまり知られず、ほとんど歌われることもないのですから残念なことです。これほどの美しい作品、日本でももっと広く知られて歌い継がれていってほしいものです。

 それでは、ケンブリッジ・クレア・コレッジ合唱団とオーケストラーCambridge Choir And Orchestra Of Clare 
Collegeーの演奏で「ガブリエルのお告げ」をお送りします。たっぷりとした残響のある教会の中で歌われるンブリッジ・クレア・コレッジ合唱団の澄み切った歌声にはまた格別の味わいがあります。お楽しみください。





”Gabriel's Message”

The angel Gabriel from Heaven came,
His wings as drifted snow,
his eyes as flame;
'All hail,' said he, 
'thou lowly maiden Mary,
Most highly favoured lady,'
Gloria!

天使ガブリエルは天より来たれり、
その羽根は降り積もった雪のよう、
その瞳は炎のよう。
「おめでとう」と天使は言った、
「賤(しず)のおとめマリアよ、
最も高く愛すべきお方よ」
栄光あれ!

'For known a blessed Mother thou shalt be,
All generation laud
and honour thee,
Thy Son shall be Emmanuel,
by seers foretold.
Most highly favoured lady,'
Gloria!

「あなたは祝された母となり、
 いつの世の人もあなたを
 たたえあがめるでしょう。
 あなたの子はインマヌエルとなる、
 預言者達が語ったお方に
 最も高く愛すべきお方よ」
栄光あれ!

Then gentle Mary meekly bowed her head,
'To me be as it pleaseth God,'
she said,
'My soul shall laud and magnify
his Holy Name.'
Most highly favoured lady,
Gloria!

優しきマリアは柔らかく頭を垂れ、
「神の御心のままにわたしになりますように」
と答えた。
「わたしの魂はたたえあがめます、
 主の聖なる御名を」
最も高く愛すべきお方よ、
栄光あれ!

Of her, Emmanuel, the Christ was born
In Bethlehem,
all on a Christmas morn,
And Christian folk throughout the world
will ever say:
Most highly favoured lady,
Gloria!

マリアからインマヌエル、キリストは生まれ給うた、
ベツレヘムで、
全てはクリスマスの朝に起こったこと。
世界中のキリスト教徒たちは
常にたたえて言う、
「最も高く愛すべきお方よ、
 栄光あれ!」と。

尚、歌詞及び訳詞はhttp://jennywren.exblog.jp/23860949/のサイトよりお借りしました。


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