湯浅博 「放射性物質がゼロ」だなんて
2011.9.6 08:04
奥秩父の山々を逍遙(しょうよう)した登山家の木暮理太郎は、最高峰の金峰山を「百貫の貫禄を具(そな)えた山の中の山である」とたたえた。その深い山容に憧れて、主に秋や冬に幾度か登ったことがある。
ありがたいことに、この名山に向かう本谷川ルートの起点に増富ラジウム鉱泉があった。疲れた身体を湯に浸し、山仲間と語り合うにはこのうえない。
増富は戦国時代には武田信玄の隠し湯と知られ、いまも「ラジウム含有量世界一」として世に名高い。ラジウムが放出する低レベルの放射線が、神経痛、肝臓障害、胃腸病に効用があるとして、昔から湯治客が引きも切らない。いや、はずだった。
「適度の放射線は、間違いなく体にいいんですが、福島第1原発事故からは、みなさん問答無用になってしまって」
当地の財団法人みずがき山ふるさと振興財団総支配人、小山芳久さんはラジウム温泉の効用を研究している。ラジウムのガス気体は生理代謝を促進させ、体内の老廃物を取り除き、自律神経系統を復調させるという。
ステロイドが毒にも薬にもなるように、放射線もまた温泉療養にもがん治療にも使われる。もとより、放射線は自然界にたくさん飛散しているから、微量なら少しも問題はないはずだ。
ところが、福島第1原発から出た放射性物質をもって、放射線すべてが邪悪な「毒」にされた。だが、レントゲン写真撮影の拒否は聞かないのに、全国のラジウム温泉では客が激減した。
・・・中略・・・
京都の燃やさないという決定は、「放射性物質ゼロ」でないと気が済まないのと同じだろう。自然界にある放射線は世界平均で年間2・4ミリシーベルトで、日本は1・5ミリシーベルトだから、どだい無理な話なのだ。増富温泉の小山さんが「いまは問答無用ですから」と頭を抱えるはずである。
さてと、次の週末には、玉川温泉か、三朝温泉か、あるいは増富温泉がよいか。ラジウム入り温泉に行ってこよ。(ゆあさ ひろし)
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110906/bdy11090608060004-n1.htm