風評懸念、秩父市など辞退
東京電力福島第一原子力発電所の事故で、比較的高い空間放射線量が測定された県内3市2町は18日、環境省に対し、放射性物質の除染に国が財政支援を行う「汚染状況重点調査地域」の指定に関する回答を行った。地域指定を目指す吉川、三郷両市は申請する方針を伝えた。一方、秩父、小鹿野、横瀬の3市町は風評被害を恐れ、辞退する。国は12月上旬には、指定自治体を発表する方針だ。
この3市2町は、文部科学省の航空機調査で空間放射線量が毎時0・23マイクロ・シーベルト(地表から1メートル)以上を検出したため、環境省が地域指定をめぐり意向調査を行っていた。
三郷市と吉川市は、いずれも原発事故以降、除染で膨らむ財政負担が決め手となった。当面、局所的に放射線量が高い「ホットスポット」の除染にも追われる見込みのため、「農業や不動産業に風評被害が広がる恐れがある」と懸念を抱えながらも、苦渋の決断を下した。
三郷市は住民の不安払拭のため、6月から市内30か所で週1回空間放射線量を測定している。9〜11月に行った13保育所と小学校9校、2児童館などの除染作業にかかった費用は、計約6700万円。吉川市は、1保育園と5小中学校を除染した。これまでに測定機器2台の購入費用などで、計171万円を支出した。
重点調査地域指定の最大のメリットは、こうした除染費用について、国が責任を持つ点だ。「国の指導を定期的に受けられる地域指定を受けた方が得策だ」(三郷市)という判断も働いたという。指定を受けると、市は除染実施計画を策定する。課題は、風評被害をいかに抑えるか。両市は、県が日本一の生産額を誇る小松菜やホウレンソウの主産地だ。
「JAさいかつ」(三郷市)の岡田貢組合長は、「県と市には、消費者や農業者のことを考え、適切な対応をお願いしたい」とコメントし、風評被害対策に取り組むようクギを刺した。
一方、申請を辞退した秩父市、小鹿野町、横瀬町は、国の財政支援よりも、観光や農業という地元の主力産業に風評被害がもたらすマイナス面を重くみた。
秩父市は5月以降、市役所など4か所で週1回測定するなど、空間放射線量の測定をしてきた。市の調査で検出された数値は、最大で0・169マイクロ・シーベルト(地表から0センチ)など、国が除染を求める基準以下だった。除染は行っておらず、今後も多額の予算支出は必要ない見通しだ。
小鹿野町は、11の小中学校と幼稚園で週1回測定し、最大0・16マイクロ・シーベルトにとどまった。横瀬町は、測定も除染も行っていない。
3市町は風評被害に敏感だ。「一番怖いのは風評被害。町名だけが独り歩きしてしまう」(小鹿野町)と、環境省とのやりとり自体にも神経をとがらせている。
県と3市町が市街地を対象にした放射線測定では比較的低い数値にとどまっているのに対し、文科省の航空機調査が除染対象の数値を測定した場所は主に山間地だ。いずれも「人が入らないような場所だ」といい、こうした点も、申請を取りやめた理由だ。
秩父市は「市民生活にほとんど影響のない山間部の一部地域のみが除染基準を超えているだけで、あたかも市内全域が汚染地域のような印象を与えてしまう地域指定は、デメリットの方が大きい」としている。
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/saitama/news/20111119-OYT8T00548.htm