「講話」問題で共産党が目立ちすぎた? “番狂わせ”の沖縄・宜野湾市長選
産経新聞 2月18日(土)14時18分配信
【高木桂一の『ここだけ』の話】米軍普天間飛行場を抱える沖縄県宜野湾(ぎのわん)市の市長選は12日投票、即日開票の結果、無所属新人の前県議佐喜真淳氏(47)=自民、公明、改革推薦=が、無所属の元市長伊波洋一氏(60)=共産、社民、沖縄社大推薦=を破り初当選した。序盤戦は共産党が真部朗(まなべろう)沖縄防衛局長の「講話」問題を暴露したことで「伊波氏優位」とみられていたが、フタを開けたら900票の僅差で佐喜真氏が凱歌を揚げた。共産党の“仕掛け”はあだ花に終わった形で、党内からは「むしろ講話問題でわが党が突出してしてしまったことがマイナスに作用した」という“反省”の弁も聞かれる。
■15ポイント差を逆転
1月末に共産党の赤嶺政賢衆院議員が国会で暴いた講話問題は当然、伊波氏への追い風になるとみられていた。自民党の事前調査では、先行する伊波氏と佐喜真氏の差は講話問題で一時、6ポイント差から15ポイント差まで開いたという。非公表の地元マスコミの世論調査結果でも「伊波氏リード」の数字が流れ、伊波氏の優位は揺るぎないというのが大方の予想だった。
ところが土壇場で佐喜真氏が逆転し、昭和60年以来「革新市政」が続いた宜野湾市で27年ぶりの保守系市長が誕生するに至った。では、なぜ佐喜真氏は勝利したのかー。
宮本雅史産経新聞那覇支局長の分析はこうだ(14日付朝刊)。
《選挙戦で普天間飛行場について佐喜真、伊波両氏とも「県外移設」を訴えていたが、根本的な立場は明確に違った。7年半にわたる前の市長時代から「県外・国外移設」を繰り返してきた伊波氏に対し、佐喜真氏は「危険性の除去と負担軽減の実現」を強調、移設先ばかりが焦点にされている現状に疑問を呈していた。
伊波氏を中心とする過去の革新市政に対し、市民の間には「普天間飛行場を1ミリも動かせなかった」(70代の主婦)、「イデオロギー闘争の連続で何ら問題を解決しなかった」(65歳の会社経営者)と不信感も広がっていた。今回の選挙で市民は、佐喜真氏に「危険性除去」を最優先課題として託したといえる》
市面積の4分の1を占める普天間飛行場の固定化に対する市民の危機感や不安の高まりが、仲井真弘多知事とともに政府と交渉していく姿勢を強調した佐喜真氏への支持につながったということだろう。
■恨み節タラタラ
結局、共産党が推薦候補の伊波氏を後押しする「ウルトラC」として告示直前に“炸裂”させた講話問題はかすんでしまったようだ。
敗因について伊波陣営の幹部はこんな指摘もする。
「講話問題を主導した共産党の存在が際立ち過ぎてしまったことがまずかったかもしれない。選挙戦終盤で市民の一部も引いてしまったのではないか…」
むろん共産党が、こうした敗因分析を公式に認めるわけがない。講話問題の火付け役となった共産党の赤嶺議員は、「新基地建設反対という県民総意は微動だにしない。基地ある限り県民を脅かす矛盾は消えない。沖縄県民は屈しない。『基地を撤去せよ』の戦いは続く」と訴えた。
市田忠義書記局長も記者会見で「伊波候補が残念ながら900票差という僅差で勝利できなかったが、当選した佐喜真淳氏も普天間基地の『固定化を許さない』『県内移設反対』の立場を表明せざるを得なかった。これは『県内移設反対』の県民総意に押されたものであり、これらが守られるよう戦いを強化していきたい」と強調した。
しかし、共産党関係者は“恨み節”タラタラだ。
「一昨年11月の沖縄知事選の際も、わが党が前面に立って伊波氏を支援したため、最終的に再選を目指した仲井真知事を利してしまったと伊波陣営の他党から指摘された。いつも負けると『共産党のせいだ』ということになる。講話問題をめぐる政府の処分もあいまいだし、踏んだり蹴ったりだ」
■「共産と共闘せず」がせめてもの救い
思い起こせば、鳩山由紀夫政権下の2年前の沖縄県名護市長選で民主党が、「日米安保廃棄」と遊説カーに大きく掲げた共産党とまで手を組み、普天間飛行場の同市辺野古移設阻止を叫ぶ稲嶺進氏を当選させた光景は異様だった。
今回の宜野湾市長選で民主党が革新陣営の本丸たる自治労の出身、伊波氏の支援を見送ったことはせめてもの救いだった。
とはいえ、衆院選での「最低でも県外」の公約を翻して辺野古移設に回帰した以上、「県外移設」ありきに傾く沖縄の政治状況や県民世論の潮目を変えるためにも、佐喜真氏を推した自公と意を決して共闘すべきだったのではないか。
折しも日米両政府が18年の在日米軍再編について普天間問題を切り離して進めることで合意し、普天間の固定化はより現実味を帯び始めている。
佐喜真氏の勝利について、政府・与党内にも「沖縄予算、税制措置、在沖縄米海兵隊のグアムへの先行移転が少しずつ浸透して理解を得られた」(民主党幹部)と歓迎ムードが広がるが、沖縄選出の下地幹郎国民新党幹事長は「(佐喜真氏が)『昔、辺野古を容認していた』と淡い期待を持つことは混乱を招くし失敗する」と言い放つ。
■「抱きつき」はもういい
仲井真知事は一昨年の知事選後、民主党があおった県民の過剰な期待にあらがえず「県外」を主張せざるを得なくなったが、その胸の内について県関係者は「辺野古移設以外、現実的な選択肢はないというのが本音だ」と代弁する。
しかし野田佳彦政権は知事が決断できる環境の整備に動くどころか、防衛相の失言など、きびすを接する失態で県民を逆なでするばかりだった。関係閣僚は沖縄詣でを繰り返すが、県関係者はこう吐き捨てる。
「知事に抱きついて『お願いします』と協力を求めているだけで、真剣味は伝わってこない。宜野湾市長選への対応も然りだった。知事は民主党政権のやる気のなさを見透かしている」
消費税増税を含む社会保障と税の一体改革について党内も一致していないのに野党に協議を呼びかけている構図と同じだ。野田首相も遅ればせながら26、27両日に沖縄入りするが、もうポーズだけの「抱きつき」はやめた方がいい。
(政治部編集委員)
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