岩手県大槌町 がれきのなかの選挙戦 28日に投開票
産経新聞 8月26日(金)23時14分配信
がれきの合間を選挙カーが走る。名前を連呼することもなく、候補者たちは静かに復興策を訴えていた。東日本大震災で加藤宏暉町長=当時(69)=が死亡した岩手県大槌町で28日に町長選と町議選が投開票される。震災では住民の約1割が死亡、行方不明となり、経済を支えた水産関連業も壊滅する被害を受けた。トップ不在が長期化し「復興のスピードは周回遅れ」との声もあるなか、将来を託すリーダー選びを進める町内を歩いた。(西見由章)
町長選に立候補している元町総務課長、碇川豊氏(60)は山間部にある仮設住宅を訪れていた。沿岸部は津波で壊滅。かつての市街地は今もがれきの山が残る。「被災者は、家の二重ローンの心配を抱え、病院も買い物も遠くて行けない。早く復興計画をつくらないと、一時避難が永住避難につながりかねない」
碇川氏は町役場を退職し今年4月の統一地方選で町長選に立候補しようと準備を進めていたところで被災した。津波で選挙スタッフ2人が死亡。準備していた事務所も流出した。
一方の有力候補者、元町議会議長の岡本大作氏(62)も被災者だ。自宅は3階まで浸水、経営していた造船所の施設は全壊し、休業状態になっている。当初は加藤前町長の再選を支援し、5期務めた町議を今期限りで引退するつもりでいたが、周囲に推されて立候補を決意した。
岡本氏は「まだ行方不明者の捜索やガレキの撤去が続けられている。お祭り騒ぎはできない」と、選挙カーは自家用車にステッカーを貼っただけ。名前の連呼も控えているという。
選挙の争点は復興策。碇川氏は、海沿いの住宅建築を制限することを主張。岡本氏は、渋滞に巻き込まれず逃げられる避難路の整備を掲げる。
震災では町職員も死亡して行政機構もまひ。「まだ選挙どころじゃない」という声もあったが、6月から町長職務代理者を務める平野公三総務課長は「トップが決まらないのは町民にとって不幸。復興計画は選挙で選ばれたリーダーが決めるべきだ」として選挙実施に踏み切った。
心配なのは投票率。平成19年の前回選挙の投票率は78・14%だが、平野課長は「あまりに低すぎると復興への弾みにならない」と懸念する。
ただ、有権者が新リーダーに寄せる期待は大きい。津波で自宅が流出し、仮設住宅で暮らす主婦は「若者が残れるよう町の復興をしてほしい」。別の仮設住宅に入る女性は「上に立つ人がいないから役場の人も大変だったと思う。震災直後、避難所にきて励ましてくれた候補者に投票したい」と話していた。
町長選にはこのほか、団体代表の小川文一氏(64)も立候補している。
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