スポーツジャーナリスト・増田明美 真剣に電力を考えるとき
2012.4.23 03:14
東日本大震災以降、原子力発電所として初めての再稼働をめぐり関西電力大飯原発が注目されている。関電管内では、この夏に猛暑となれば、18%程度の電力不足が懸念されており、産業界を中心に原発再稼働を望む声が大きい。しかし、早期の再稼働に慎重な声も少なくない。
節電で乗り切るならば、約20%の節電が必要になる。強制力を持った節電をしないと、それは達成できないだろう。では、供給を増やす策はどうか。停止している原発を火力や自然エネルギーの既存の発電設備でどのくらい補えるのだろうか。そんなことを考えながら関電の火力発電所と太陽光発電所を訪ねた。
大阪湾岸に建つ堺港火力発電所。「ここ堺市は千利休の故郷。利休色を採用した」と壁には渋い緑色のラインがある。ヘルメットをかぶって所内へ。中央制御室には床から数十センチの位置に非常停止ボタンがある。「なぜこんな下に?」と尋ねると、「揺れていてもはっていって止められるように」と答えが返ってきた。
轟音(ごうおん)を響かせながら発電する5基のタービン。その前で、このシステムは暑さに弱いと聞いた。気温がセ氏10度の場合、200万キロワット時の電力を生むが、セ氏30度だと188万キロワット時になるらしい。最新式の機械だが、夏バテする人間のようだ。
関電の発電内訳をみると、平成22年度は火力45%、原子力44%であったが、原発が定期検査で順次停止し、平成23年度は火力69%、原子力20%になった。原発で休止している分は火力で補っている。昭和40年代に造られた火力発電所もフル稼働しているのだが、どこか“謹慎中”の後輩に代わり、老骨にむち打って働いている感じがした。
火力発電は頑張ってくれてはいるが、石炭、石油を燃料とするため、硫黄酸化物や煤塵(ばいじん)、二酸化炭素(CO2)を発生させ、環境への影響が懸念される。コストの問題もある。関電では、火力発電の燃料費は、燃料価格高騰もあって平成23年度は5千億円以上増えたそうだ。
一方、自然エネルギーはどうだろうか。関電と堺市の共同事業である堺太陽光発電所を見学した。広大な敷地に並べられたソーラーパネルは圧巻の一言。現在、日本で2番目に大きな太陽光発電所である。小鳥のさえずりが聞こえ、芝桜が咲き、遠足で訪れたくなるような風景だった。だが、現実は厳しい。
堺港火力発電所は約16万平方メートルの敷地で200万キロワット時を発電している。約21万平方メートルの敷地の堺太陽光発電所は最大でも1万キロワット時だ。それも晴れた日の昼間の話で、曇りや雨になれば、それ以下。夜に至っては発電量ゼロである。「夏になると雑草が影を作ります」「カラスが石を落としてパネルが割れました」と、小さな自然との戦いも存在する。天然ガスの火力発電に比べて3倍以上のコストがかかるそうだ。
改めて思うことは、電気エネルギーに“万能神ゼウス”は存在しないことだ。「安全で、安く、しかも安定的で、環境を破壊しない」。あらゆる好条件をそろえた電気というものはない。空気のようにいつもあると思われる電気。資源を持たない国に暮らす私たちは電気エネルギーをどう確保していくのか。一人一人が真剣に考えるときにきている。(ますだ あけみ)
http://sankei.jp.msn.com/life/news/120423/trd12042303150004-n1.htm