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「うぐっ・・・」
激痛に耐えられず俺は低い声で悲鳴をあげた。
この出血の量から考えて俺はどうやらここで死ぬらしい。
だが不思議と悲しくない。
俺は死んで当然なのだから・・・。
不意に人の気配を感じて
上を見上げると一人の女性が立っていた。
雪のように白い肌と
光のようなまっすぐな視線に
自分の深い闇が簡単に解かされてしまうようだった。
彼女が口を開いた。
「いつまで寝ているの?
早く起きなさい!」
すると風景がぼやけて消えていく。
はっと気がつくと夢から覚めた。
いつもの見慣れた部屋の風景に
夢の中の女性だけがより鮮明に、はっきりと見えてきた。
「ヒムカイは私の世話役でしょ?
起こす役と起こされる役が逆じゃない?」
もっともな真白の意見に返す言葉が見当たらなかった。
俺は真白の住んでいる屋敷の一室で寝泊りしている。
正確には真白の父親の所有する屋敷だが、
父親は滅多に屋敷にくることは無い。
屋敷には俺と真白ともう一人の世話役の郷野、使用人の寺橋の四人が住んでいる。
「今日は会ってほしい人がいるの。」
俺がいつものスーツに袖を通していると真白が言った。
誰です?っと聞こうとしたが止めた。
「誰か」なんて知っても仕方のない事だから。
「あまり気乗りはしませんが…。」
俺は正直な気持ちを言った。
「うん。でもお父様の知り合いらしくて…。」
真白も本当は俺の能力は人間には使うべきではないと解っているのだろう。
俺は生まれながらにある能力を持っている。
いや、能力と言うかコントロールできないのだから
特異な体質と言うべきなのか…
俺の右手が触れた「死んでしまった生物」は復元される。
つまり「生き返る」のだ。
遺体が極端に欠損がある場合蘇らせれない事もあるが
体の体積の半分以上があれば元の姿に再生させることができるようだ。
ただ、いくつか欠点もある。
一つ目は一度右手の力で蘇らせた人間を
二度蘇らせることはできない。
二つ目は蘇らせた人間は死ぬ直前の肉体に復元されるが
再生するのは飽くまで外傷のみで
病気や老衰等の内的要因で死んだものを生き返らせても
その死因までも廃除することはできない。
(病気を治したり、若返らせることは出来ない)
三つ目はもっとも大きな欠点
「蘇らせた生物の生前の記憶は喪失する。」
俺の理解するところに
俺の右腕は破れたノートを再生紙のように作り替えるだけで
ノートに書き込まれた記憶までは再生出来ないと認識している。
そして四つ目は…
「ヒムカイ〜!支度遅いよ〜!郷野がまた怒っちゃうよ!!」
おっと、お嬢さまがお呼びのようだ。
俺は両腕の手袋に鍵が掛かっていることを確認すると
急いで屋敷を飛び出した。
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