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「現場は大阪・難波エリアの住宅街、地下鉄の駅からは歩いても5分程度の場所で、普通の賃貸マンショ
ンの一室です」
まるで、どこかの市役所の愛想が悪いが偉そうな感じがする職員のように、言葉にリズム感がない話し
方で、神谷は告げた。まったく若々しい感じがない、年齢不相応の落ち着き払った態度だ。
「殺された被害者の氏名はは、春日慶一郎さん、75歳の男性です。3年前に奥様を病気で亡くしてい
て、息子さんは東京でご家族と暮らしているため、春日さんは3年間、ずっと一人暮らしだったというこ
とがわかっています」
神谷の話を聞きながら、白瀬は自分の母の事をふと思い出していた。年齢的には違うにしろ、親が殺さ
れたというのは、自分の立場から考えても、暗い気持ちになる話だからだ。その間にも、神谷の事務的で
物静かな報告が続く。
「春日さんの息子さんは、もう東京からこちらの方に到着はしているのですが、さすがに動揺されてい
て、まだ十分に情報が確認できる状態ではなく、細かい事は明日以降の聞き取りになります。今のところ
まででわかっていることが、まず、春日さんご本人は、人から激しく恨まれたり妬まれたりするような方
ではないようで」
「と言っても、ご承知のように、最近はいろいろありましてね。恨まれたりしないだろうという人が、実
はかなり恨まれていたなんて話も多くてね。いや、それどころか、恨みなんか何もなくても、無差別殺人
の対象になるなんていう、まるでアメリカばりの事件がなきにしもあらずで」
と、榎田が口をはさんだが、神谷はあまり気にする様子なく話を続ける。
「それで、被害者なんですが、死亡推定時間が午前6時から7時の間、第一発見者は隣の部屋の方でし
た」
「隣の部屋?」
今度は、白瀬が口をはさんだ。自分の住むマンションの場合だと、転居して半年ばかりというせいもあ
るのだが、隣の部屋の住人と交流が全くないどころか顔を合わせることすらほとんどないので、具体的に
「隣人」というものが実感しにくかった。
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