石平氏寄稿 焦る中国に応じた日本 産経新聞 9月14日(火)7時36分配信 沖縄・尖閣諸島(中国名・釣魚島)付近で中国漁船と海上保安庁の巡視船が接触した事件をめぐり、中国の戴秉国(たい・へいこく)国務委員が12日未明、丹羽宇一郎駐中国大使を緊急に呼び出し、日本側の対応に抗議したことが注目を集めている。強硬姿勢をさらにエスカレートさせた無礼千万の呼び出しには実は、自らのメンツを保つ形で早急に事態の収拾を図ろうとする中国政府の思惑が見え隠れしている。背景には、中国国内で高まりつつある「政府の弱腰」に対する批判があろう。 戴国務委員は抗議の中で、中国政府の最大の要求として「漁民と漁船の即時送還」を求めた。しかし、注意深くみると、それは、2日前の10日に中国の楊潔●(=簾の广を厂に、兼を虎に)(よう・けつち)外相が丹羽大使を呼び出して突きつけた要求とは全然違うことが分かる。楊外相が「船長を含めた乗組員全員」の即時送還を求めたのに対して、戴国務委員の要求からは「船長」という言葉が消え、「漁民と漁船」だけが残ったのである。戴国務委員と楊外相の要求の違いは、中国外務省の公式サイトでも確認できる。 実はそれこそが、思惑を伴う中国政府の小細工なのである。事件への処理に当たり、日本側は領海侵犯事件としてではなく、逃亡するため日本の巡視船に体当たりした中国船を拿捕(だほ)し、公務執行妨害で船長だけを逮捕した。 つまり、船長の処分とは別に、一般乗組員と漁船の早期送還は最初から日本側の既定方針であり、それは中国側もよく承知していたはずである。あるいは日本政府は12日前の時点で、乗組員と漁船の早期送還を中国側にすでに伝えていたのかもしれない。 だとすれば、12日未明に大変なけんまくで丹羽大使を呼び出して「漁船と漁民の即時送還」を求めた戴国務委員の行動は、むしろ国内の目を意識した一種の芝居だったといえるだろう。焦点の船長への言及を意図的に避け、日本側の既定方針であるはずの漁民と漁船の「早期送還」を強く求めて見せた「芝居」の真意はおそらくそういうことだ。 船長の処分という最大の争点を避けて日本側との「落としどころ」を見つけ、事態の沈静化を図ろうとする一方、日本側が既定方針通りに漁船と漁民の送還を決めることを見据え、それが実現した際には、あたかも「中国政府の圧力の成果」であるかのような印象を国内に与え、国内で先鋭化しつつある政府への「弱腰批判」を払拭(ふっしょく)することができるのである。 大した緊急性もないのに、わざと未明に丹羽大使を呼び出した戴国務委員の奇怪な行動もまさに、「中国政府が強い態度に出たことで日本側がひれ伏した」との宣伝効果を高めるための演出とみることができよう。 そして、あたかも中国側のろうした小細工に呼応したかのように、日本政府は13日午前、船長以外の一般船員の送還を正式に発表し、彼らは中国政府のチャーター機で帰国したのである。 同時に、事件に抗議するため、12日に中国福建省アモイから尖閣諸島へ出航する計画だった中国の民間団体がアモイにとどまっていることが、13日になって分かった。彼らを足止めしたのが中国政府であることはいうまでもない。 この一連の動きからは、中国と日本の両国政府が水面下において「事態収拾」のシナリオを描き、それを実行に移したのではないかとの見方も浮かび上がる。もし、そうだとすれば、日本の領土保全にかかわる重大な問題で中国側との妥協に安易に応じた日本政府の姿勢こそが問題なのである。 石平(せき・へい)氏 1962年、中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年に来日。民間研究機関を経て評論活動に入る。2007年、日本国籍を取得。 筆者は、中国政治の専門家でも、軍事問題の専門家でもないので、研究家的見地からはものが言えないが、それでも、石平氏の寄稿は、実に的確なものではないかと思う。 それと同時に、筆者が学生時代に、某国際政治学の大御所の先生から言われたことを、いま、実感として思い出している。
「右翼なんかよりも本当にこわいのは、進歩的革新派だよ」 |
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