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 言うまでもなく、「情報」というものはそれを受け取る人の数だけ、「解釈」が存在する。たとえば、天気予報で「降
 
水確率50%」となれば、「降る」と考える人もいれば「これなら降らない」と考える人もいるわけだ。
 
 これは極論だとしても、一般的な日常ニュースにおいても、原発の話にあるように、同じ事象を取り上げて同じ映
 
像を見たとしても、「原発はそれでも使用しないといけない」と考える人もいれば、「いや、即座に停止するべきだ」と
 
考える人もいるわけである。そこには正と誤とかではなく、「価値判断」が入ってくるわけである。ひとつの受け取っ
 
た情報に対して、その個人がどういう判断をするのかは、誰にもわからないものだ。
 
 さて、逆にこれが情報の「送り手」の立場として考えてみよう。ジャーナリズムの公平性・中立性は、ある意味、ア
 
プリオリにとらえられてきたものであり、異なる意見がある場合、両論併記が基本である。先の原発の話などはそ
 
の典型だろう。が、新聞にせよTVにせよ、果たしてそのバランスがとれているかといえば、とれてはいない。つま
 
り、本来的には我々「情報の受け手」が下すべき「価値判断」がすでに情報発信の時点、すなわち報道の時点でお
 
こなわれていることを、今日のメディア状況(めんどくさいのでこう呼ぶ)は否定できないだろう。
 
 客観はどこへ、中立はどこへ?というのは、実はない。新聞とTVではいささか事情が違うのだが、新聞に関して
 
は、元々「なかった」と言ってもいいだろう。というのは、実は簡単な話で、新聞=ジャーナリズムは「権力」=「主に
 
時の政権・政府」を批判対象としてきたからだ。それは少なくとも、日本の新聞の立ち上げがすでに政治的色彩を持
 
った、ある種の言論活動の場であったからだ。となると、それは当然、「政権に対する賛同」か「政権に対する批判」
 
か、まあ、がんばって「中立的是々非々」になるかしかない。
 
 ということは、そもそもとして、「新聞記者」はすでにある種の「思想的方向性」を持っていて、客観的に淡々と事実
 
を伝えていく、などということはなかった、と考えた方が自然である。そういうと、「いや、戦前戦後は国家の言論統
 
制があった」という論も出てくるだろうが、では、戦後はどうだったのか。まったく「イデオロギー」なく報道してきたと
 
胸を張れるジャーナリスト、メディア、マスコミはどれだけいるだろうか。
 
 つまり、現在、我々の周りでの「マズゴミ」という侮蔑的表現は、実はメディアは「公正でも公平でもなんでもない」
 
と、「化けの皮」がはがれてきたことの反動なのだといえよう。
 日本のマスメディアの何がダメなのだろうか。記者クラブ制度だろうか、クイズ大会みたいなペーパー試験で入っ
 
てくる新卒者の質だろうか、社内のサラリーマン化した組織体制だろうか、年功序列的なデスク・キャップ制度だろ
 
うか、大学にジャーナリズム専攻が充実していないことだろうか。
 
 もっとも、「何がダメか、どこがダメか」という見方によって、その原因・本質も変わってくるので一概には言えない。
 
だが、昨今のメディアの「ダメさ」というか、異様さは、誰しもがうすうす感じているのではないか。
 
 メディア・ジャーナリズムにとって最も恐れるべきは、国家の干渉による言論統制・言論弾圧である。それはどちら
 
かといえば、ファシズムのイメージでもあるが、言うまでもなく、一党独裁国家においては(これをファシズムと言っ
 
ていいのかどうかはわからないが)、言論統制という手段は不思議なことに、世界共通である。それだけ、「情報」と
 
いうものが人々ないしは当該社会にあっては重要なものだということだろう。
 
 幸い、日本においてはそうした心配はない(言論のタブーがあるではないか、とかいう些末な議論は差し置く)。と
 
ころが、近年、マスコミが「マスゴミ」などと揶揄されることが多くなってきた。それだけ、人々がマスメディア報道にそ
 
っぷを向いているということでもある。つまりは、「マスメディアはダメ」となっているという認識が、広まっているとも
 
いえる。しかもそれは、「ジャーナリズム機能」においてダメのレッテルを張られている。
 
 なぜなのだろうか。おそらく、「マスコミは真実を伝えていない=ゆがんだ報道がなされている」という答えが妥当
 
ではなかろうか。しかもそれは、ネットへの親和性が高い人々にあってはもはや「当然」的に語られている。
 
 となると、日本のマスコミがダメ、というのは、総じて「ジャーナリズム機能」の部分にかなりの問題がありそうでは
 
ないか。報道機能のどこにそのような問題があるというのだろうか。
 メディアの影響、などと一言で語ると実に簡単なのだが、新聞とテレビではその効果が異なる。まさにマクルーハ
 
ンの言う「メディアはメッセージ」なのである。情報の受け手がかなり積極的にアプローチをしないと(自ら紙面を広
 
げて関心持って読まないと)、新聞は我々の生活に関与しにくいものである。
 
 しかし、その分、言説の牙城としての確たる信を得ており、「新聞が間違ったことを言うわけはない」と、なんとな
 
く、我々は「信頼」を寄せている。否、「寄せてきた」と言った方が正しいかもしれない。
 
 たとえば、戦前・戦中であれば、言論機関は政府による検閲・統制を受けてきたし、戦後だとGHQの検閲とてあっ
 
たわけで、実は真に「自由な」言論展開ができたのは戦後の混乱期以降の話である。無論、なんでもかんでも「自
 
由」というわけではない。が、その「報道の自由」「言論の自由」が、「完全に誤った報道」を流す自由でもあったこと
 
は否定できない。あえてポリティカルな面から外して言うと、90年前後のバブルの時だ。新聞を初めとするマスメ
 
ディアは、バブル煽りに加担しなかったと言えるだろうか。冷静な報道ができていたと、胸を張れる記者がどれだけ
 
いるだろうか。
 
 記者も人間である。そして、組織人たれば、その時流に流されることもあるだろう。何か、感情に動かされてしまう
 
こともあるだろう。そこを冷徹に、「わが心、秤のごとし」で報道していくのが、真のジャーナリストであるはずだ。そ
 
れは日本だけに限らず、世界共通の話だろう。明快な事例が、ウォーターゲート事件でのワシントンポストの対応
 
である。時の政権から圧力があっても、社主・記者ともに折れなかったのは有名な話である。報道、特に新聞記者
 
がどのように権力と対峙していくかという好例であるが、日本の場合、残念ながらそうはいっていない。団体などの
 
抗議に対して簡単に折れてしまうわけで、(某TV局が抗議を受けた某宗教団体にビデオを事前に見せ、結果的に
 
日本犯罪史に残る事件につながっていった)、その体質はメディア自身の「事なかれ主義」ということでもある。
 
 日本だと、権力との対峙ではリクルート事件を暴いたのが新聞発だったという実例もあり、まったく誰も何もしてこ
 
なかったというわけでもない。だが、その実績を帳消しにしてしまうくらいの大きな流れがあり、現在、我々が漠然と
 
抱いているマスメディア、とりわけ新聞・TVに対する違和感の根源でもあろう。などと言いつつ、日本のメディアの
 
ダメさ具合に近づいていってみよう。
 
 
 以前にも記したことがあるが、某新聞社の女性記者と大阪市・橋下市長がTwitterでバトルを繰り広げたことがあ
 
った。新聞社の公式アカウントなどであれば問題ないかもしれないが、記者個人が公人とSNSの中だけでバトルし
 
てしまえば、それは「取材」なのか「個人の趣味」なのか「政治運動」なのか「一市民としての申し立て」なのかさえ、
 
さっぱりわからなくなってしまう。 つまりは、それは「論評」なのか「意見」なのか、「論説」なのかさえもわからない。
 
 ある紙面の中で、「これは報道」「これは論説」と、意識して読むことはないだろうが、少なくとも論説には「論説」、
 
「解説には「解説」という見出しがついており、新聞社側としてはごっちゃにするよりも、明快に区分けしたいのだろ
 
う。
 
 しかし、先のような話が頻発してくると、それはもはや「取材」でもなんでもない。SNSを使った政治運動である。こ
 
のような「取材」がOKであれば、それこそ世界のメディアがSNSを通じて取材をおこない、各行政の長がそれにエン
 
ドレスに答え続けないといけなくなる。
 
 通常に考えると、ジャーナリストの「取材」を超えた範囲でしかないはずなのだが、逆に、これが当社から「取材」
 
を意図したものでなかったとすれば、どうであろうか。「取材」であれば、その記者は社の職務として任務遂行を果
 
たさねばならないが、SNSが「個人」の範疇であれば、ジャーナリズムの中立性など関係なく、自身の政治信条を
 
ふんだんに盛り込んでいける。これほど便利な「取材」はないだろう。いくら記者の肩書きでSNSしていても、社は
 
「責任問題」にならないからだ。
 
ということは、そうした「信条を取材に持ち込んでOK」という内部的な阿吽の空気が、当該新聞社内にあると見るの
 
が自然だろう。そうでなければ、SNSを通じた公人取材など認めないはずだからだ。
 
もっと突き詰めると、実は報道の「中立性」などはとっくに放棄しているのではとさえ思われるのだ。

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