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 その空気の変わり目を自ら確認する必要はなかった。部屋に、訪問者があっただけの話であるが、あず

さにとっては、ひきつった笑いで出迎えるしかない訪問者だったからである。

「ぱぱあっ!」

 正直な子供は何の疑いも抵抗もためらいもなく、全力で遠慮なく早速とびついた。とびつかれた当人、

白瀬啓吾は満面の笑みで、ヒナタを軽々と抱き上げた。

「おっ、ヒナタ。ちょっと見ない間に、大きくなったなあ」

 ジャケットの乱れるのも気にかけることなく、啓吾はヒナタを両手で抱え上げた。昔と違って、軽々と容易にと言うわけにはいかず、姿勢をかえてもちなおして抱え上げる。

「ヒナタ、重くなったなあ」

と、啓吾はどこかのメーカーからCM出演のオファーがきても不思議ではないくらいのパパぶりで、ヒナ

タをあやした。ヒナタの方も、半年ぶりに会う父親が来たことがよほどうれしいのか、おそらく、この半

年で最高にご機嫌で陽気な笑顔ではないかというくらいの喜びようだった。

 一方、あずさの方は、つま先を柱の角にぶつけたのと同時に、虫歯とぎっくり腰が発生したような、言

いようのない苦々しい表情を浮かべるしかなかった。母親・タエコには、啓吾との半別居・半離縁状態の

ことは説明しているが、ヒナタには何も言っていなかった。ただ、パパとはしばらく、お仕事の都合で会

えないのとは言っていたし、ヒナタの方も意外と聞き分けがよく、それで納得していてくれたので問題が

なかった。仮に、最悪のパターンとして、啓吾と完全に離別するということになったら、その時はその時

で、また何か理由をつくってヒナタには説明しようと思っていた。少なくとも、それまでは、実の父であ

っても、決してヒナタには近づけないようにしようと考えていたのだ。だから先日に会ったときも、ヒナ

タには会わせるつもりがないと言いきっていた。

 ところが、このような急襲を受けてしまい、さすがのフラフープ社の主任も、瞬間、呆然とするしかな

かった。ただ、それも時間にすれば数秒であって、すぐに頭を切り替えにかかった。

「啓吾、どうして、あなた、ここへ?」

 できるだけ心情を読まれないようにしたくて、独裁国家のTV放送のアナウンサーを意識して、能面的

な表情を取り繕おうとして、あずさは全力をあげた。口調も、事務的になるようにしたが、啓吾はそれを

笑って対応した。

「どうしても何も、今日は、ヒナタの幼稚園を決める日だろ?」

 どうしてそれを知っているのか、と言いかけたが、あずさはかろうじてそのセリフを言わずに止めるこ

とができた。何か、すべて相手のペースになるのが楽しくない。

「だれかしら?」

 息子から手を離して、あずさは立ちあがった。まだ午前中なのだが、来客の予定はまったくなく、誰か

が訪ねてくる心当たりはない。何よりも、これからいま出かけようとしているときに、余計な関わりはわ

ずらわしいだけである。あとは、宅急便くらいしか心当たりがない。

 インターフォンのモニターがあるのはキッチンの方なので、そちらへ行こうとすると、先に母・タエコ

が動いた。

「あずさ、わたしが出るわよ、いいわよ」

「あら、そう」

 そそくさとキッチンの方へ駆ける母の後ろ姿を見ながらも、あずさは、ふと、母の背中が前よりも丸く

なったなと気がついた。ヒナタが少しずつ、確実に背丈も顔つきも変わっているのと同様に、母・タエコ

も少しずつ確実に変化している。当たり前と言えば当たり前で、それが自然なことではあるのだが、片方

が成長するに従って、片方が老いていくという反比例の公式を目の前にすると、ヒナタの成長だけを手放

しで喜んでもいられないなという感情が湧きがって来るのだ。

「ママア、アイスたべたあい」

 そんな郷愁をかき消すいきなりのリクエストに、あずさは困った。

「だめ。あとで。幼稚園の先生とのお話が終わったら、食べていいけれど、いまはがまんしておきなさ

い」

「ほんとに?ヒナタねえ、ちょこがいいの、ちょこがいいの」

「はいはい、ちゃんと買ってあげるけれど、幼稚園の先生の前ではきちんとおとなしくしておくこと。マ

マとお約束できる?」

「できるできる」

と、その場で軽く跳びはねながら喜ぶヒナタとたわむれいている時に、部屋の空気が変わったことを、あ

ずさは察知した。どうも雰囲気が違うのだ。いつもと違う室内の空気、でもそれでいて、どこか新しくも

なく古くもない空気。

 その答えはすぐにわかった。 

 

「ママ、ママあ」

 ふいに、ヒナタは後ろから声をかけてくる。こういう時のために買っておいた子供用の正装用の紺のポ

ロシャツと半パンを着せられたヒナタだった。それほど気合を入れて行くもんではないとわかってはいた

のだが、初めてのことなので、ついつい堅苦しい服装を選んでしまっていたのだ。

「どうしたの、ヒナタ?もうお出かけするわよ」

と、あずさは、自分を見上げる長男の頭をなでたが、ヒナタは、小さい口をとがらせて悲しそうな表情だ

った。

「ヒナタねえ、このお洋服、キライなの」

「あら、どうして?ヒナタ、よく似合ってるわよ。おばあちゃんも、ほめてくれてたでしょ?」

 息子の思わぬ不平に、あずさはしゃがみこんでヒナタに向かい合った。それでもヒナタは、首を横に振

った。

「これね、動きにくいし、ちょっと暑いの」

 日ごろ着なれていないものを着ているのだから、このクレームはごもっともだと、あずさは苦笑いし

た。とはいえ、いつものゲームのキャラクターのTシャツで行くことは、さすがにためらわれた。それで

は、自分が上下グレーのカジュアルスーツにした意味さえもなくなってしまう。

「ちょっとだけ我慢してね、ヒナタ」

「ちょっとって、いつまでえ?」

「えーっとねー、これから幼稚園の先生たちと会って、お話するから、それまでね」

「幼稚園のせんせー、こわい?」

「怖くないわよ。コワいと思ってるの、ヒナタは?」

「ヒナタ、男の子だからねえ、こわいもん、ないもん」

と、ヒナタはかなり強気に言いきった。最近というか、今年、大阪に来てから半年ほどの間に、ヒナタも

大きくなったことを実感して、あずさは頬が緩んだ。ついこないだまでは、ママが一緒にいないとどこに

も行かないなどと、すぐにしがみついていたものである。それを思えば、ほほえましいことだらけだっ

た。

 その時、ドアのチャイムが鳴った。訪問者である。

 毎年この時期におなじみの夏の台風が、今回は本州方面に近づいてきているということで、大阪はその

日、朝から空模様がくすんだ色合いを見せていた。天気予報では今日は雨は降らず、明日以降、かなりの

土砂降りになるという事だったので、天気を気にしていたあずさは、とりあえずほっとした。部屋のベラ

ンダに出て、しきりと空をながめてみたが、当然のことながら、それで別に天気に変化がおこることはな

かった。

「そんなに気にしなくても大丈夫よ。昔の天気予報と違って・・・え?いまは、天気予報とは言わない

の?ウェザー・インフォメーションって言うの、いま?知らないわよ、そんなややこしいカタカナは。と

にかく、天気予報を信じていればいいのよ。わたしらが若かった時よりは、よっぽど当るんだから、近頃

の天気予報は」

 やたらと天気を気にする娘に、母・白瀬タエコは、そう声をかけた。あずさとしては、ちょっと質のい

い靴を履いて行きたかったのだが、それが雨降り確実であれば、別のくたびれた古めの靴を履いて行った

方がいいのかもしれないと気になっていたのである。

 そこまで細かいこと気にするのは、今日は長男・ヒナタの幼稚園の入園面接だったのである。結局、こ

こしばらくの間、あれこれと母・タエコが近辺をさがしてはみたものの、かなり遠方にある仏教系の幼稚

園か、近場のカトリック系の幼稚園のどちらかという二者択一の話になり、やはり遠方はつらかろうとい

うことで、近場のカトリック系に落ち着くことになったのだった。

 仏教に愛着のある母は、少しばかり納得しきってはいない風情ではあったが、ここはヒナタのことを一

番に考えると、近場の方がありがたいということで、あずさが決定を押し切ったのだった。ただ、そのカ

トリック系の学校は、幼稚園から大学までを有する、いわゆるエスカレーター方式の学園だったので、幼

稚園にも入学面接が課されていたのである。もっとも、幼稚園のレベルなので、必死に準備しないといけ

ないお受験とかいう堅苦しいものではないし、子供の数が激減しているご時世なので、何をどうすれば入

園できるかというような大げさな話でもなく、形式的な顔合わせを兼ねたものだと聞いていた。あず


さも気にはしてはいないのだが、それでも、親としてあまりだらしない格好をしていくわけにもいかず、

必然的に、空模様とにらめっこということになっていたのである。

「迷っていても仕方ないわよ、あずさ」

と、母にうながされて、あずさは開き直って、お上品めな値段高めの靴で行くことを決意した。

「国内の中国人に初の受賞を」中国の“悲願”に皮肉な結果 劉氏に平和賞
産経新聞 10月8日(金)20時36分配信

 【北京=矢板明夫】中国にとって“悲願”であった中国国内在住の中国人のノーベル賞受賞が、民主活動家、劉暁波氏の平和賞受賞という形で実現したことは、極めて皮肉な結果といえる。

 毎年、同賞の季節になると、多くの中国紙は「中国人の初受賞なるか」との予測記事を掲載し、知名度がある候補の名前を期待を込めてリストアップする。しかし、受賞を逃すと、「欧米に理解されない中国」などの解説記事があふれる。

 これまでにノーベル賞にノミネートされた中国人や、中国とかかわりがある人は少なくない。例えば、民主化活動家として劉氏と同じように投獄されている胡佳氏、米国在住の魏京生氏、世界ウイグル会議議長、ラビア・カーディル氏などだ。彼らは、1989年に平和賞を受賞したチベット仏教指導者のダライラマ14世を含め、中国政府から迫害を受けたり、海外に逃亡したりしている。

 外国籍を取得した中国系科学者や文学者もいる。2000年に文学賞を受賞したフランス国籍の高行健氏は、授賞式に先立つ講演で「中国では過去100年間で数えきれない作家が投獄され、強制労働の罪に処せられてきた。こうした環境の中では、執筆活動や創作の自由について議論することは著しく困難だ」と述べ、学問と言論の自由を認めない中国当局を批判している。

 劉氏の平和賞受賞のニュースは、すでにインターネットなどを通じ中国国内に流れた。ただ、農民や労働者をはじめ、多くの国民にとって「劉暁波」という名前はなじみがなく、戸惑いを感じるに違いない。中国では、厳しい報道規制のため、反体制活動家の名前はメディアに取り上げられることがほとんどなかったからだ。

 今回の受賞が多くの中国人にとって、国際社会における中国の異質さを、改めに考えるきっかけとなるのは間違いない。

 いやあ、中国の方の受賞ですか。
 官房長官、はやく中国政府にお祝いのメッセージをwww

 それとも、コメントする立場にないとでも?菅総理もコメント出してるのに?

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