まてよ?のひとり言

屋上淵から滴る雨滴が窓枠にあたってタコタコ音が気になります

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季節外れの扇風機

11月に入って急速に気温が下がってきました。

今朝は一番の冷え込みでしたが、天気は快晴、日中は暖かくなりそうです。

そして今もって部屋に鎮座しているのは扇風機。

なぜ片付けないかというと、寒くなってエアコンで暖房を

入れるようになったら、また緩やかに部屋の空気を循環させて

暖房効率をあげられるかなとおもっているからです。

最新型のエアコンは人を検知して無駄なく温度調整できる

ようですが、うちのはそれほど高機能ではないので、

部屋の下層の冷えた空気を天井に向けて軽く扇風機を

回すだけで、上の暖気を下に降ろしていきます。

空気循環用扇風機にします。

外の青空と陽射しを見ると、まだ扇風機の出番は無さそうです。

南向きで日当たりがいいので、自然の暖かい恵みを充分に

活用したいです。

下駄箱

使い古されている下駄箱も、それほど汚れるものでもなく

依然として元気に務めを果たしています。

これもまた、姉あたりからもらったのか、かなり以前なので覚えてない

ですが、本来の靴入れとして使う他、バイクのメンテ道具や掃除用の

洗剤類を格納したりで重宝しています。

新居では玄関に備え付けのシューボックスがあり、下駄箱としては

それで充分足りる容量なので、持ってきた旧下駄箱は完全に

道具箱となりました。

トイレの室内にトイレ用の洗剤類を置くのは見た目が良くないので、

そういったモノも旧下駄箱に入れています。

新居の玄関内には、押入れくらい広い収納スペースがあり、

引き戸で腰高さの仕切りが付いています。

布団を入れておくには場所が違うのだろうと、布団は入れて

いませんが、割と奥行きもあるので、ここの下段に旧下駄箱を

置いています。ちょうど高さもぴったりです。

奥行きがあるので、旧下駄箱を手前に面合わせすると裏にまた

少し収納空間ができるので、あまり出し入れしないものを

置いておけます。

上段には収納ボックス(カラーボックスのちょっといい奴)を

2つ並べ、引き戸2枚は取り払って物置部屋に追いやりました。

引き戸が無いほうが、腰高さ仕切り台がちょうど帰宅時の

小物(鍵など)をほぃと置いておけるので便利です。


話しは変わりますが、最近TVでよくCMが流れている、

新選組リアン 男組 が気になります。

京都を盛り上げてほしいですね。

電波時計

引越祝いに、友人から電波時計をプレゼントされました。

これまで部屋にはアナログタイプの目覚まし電子時計がひとつだけ

でしたので、新居ではもっと見やすい壁掛けタイプのアナログ時計が

欲しいなと思っていました。できれば学校の教室にあるような、

丸くてシンプルで大きいやつです。

それでいて時間が正確な電波時計。

でも自分で買う前に友人が贈ってくれたのは、壁掛けではなく

卓上タイプのデジタル時計でした。

手持ちの目覚まし時計よりも倍くらい大きくてデジタル表示文字も

大きいので見やすいですが、好みとしてはデジタルより針表示が

よかったです。貰ってしまった手前贅沢は言えません。

時計だけでなくて温度計湿度計もついているので、これはこれで

便利です。

その友人はちょくちょく遊びに来てくれるので、時計をもらって

おいて、それとはまた別に壁掛け時計を買っていたらちょっと

悪いかな、という気持ちもあり、壁掛け時計別に無くても

困らないか、ということもあり、大きな丸時計購入は断念しました。

まぁそれほど高いものでもないし、いつか気に入ったものを

偶然見つけるまで、壁掛け時計を探すのはやめにしておきます。

電波時計、自動的に正確な時刻をいつも保ってくれていて、

いつ見ても秒単位で正確というのは何だか気持ちがいいです。

しかも昔からの目覚まし時計と貰ったデジタル時計は並べて

置いてあるので、2つの時計の秒針と秒表示がぴったり一致して

いるのも気分がいいです。

友人のそれは、更に上部にソーラー充電パネルが付いていて、

電池要らずで半永久に動作する優れものです。かなりいいやつです。

この時計をチラ見しながらハマるのが、真・三國無双5 改造コード です。

「だってあんた、あの子はもう死んだと同じだったよ。弱って口も利かなくなって、それに自決と決まったし」

「自決する気だったのか」

「ああそうだよ。自決と決まったから、美津子を手にかけたんだよ。ここで順番待ちをしていてぢきに番がくると思ってたら刺す人が一服したんで、もう一度あんたと宏生の死に姿を捜してみようと思って粟畑の方に行ったけど、みつからねぇんで諦めて戻ってきたら、宏生の声に吃驚したよ」

奥の方では在郷軍人の二人が自決組の介錯を進める黒い姿が見え、「ご免なさい」「ご免なさい」と小さな声が聞こえる度に自決者が息を引き取っていた。

「あたしゃね、あんたらが死んだもんだと思ってたから、宏生に呼ばれたときゃまさかと思ったよ」

「そりゃそうだろうな。まあ何にしても助かってよかった。俺も死んでると思ってたんだし。じゃ行くか。向こうで皆が待ってるんだ」

「行こうってあんたどこへだい。皆で自決って決まったんだよ。向こうに行ったからってどうなる事じゃ有るめえに。ここでちゃんと死ねるだろうがね。なに考えてるんだい」

「お前こそ何を考えてるんだ。俺が今ここに来たろうがな。何も死に急ぐこたあねえよ」

「あんた、大きな声を出さねえどくれ人聞きの悪りい。皆死ぬ気でいるんだよ。あたしゃここで自決をする気で蓉子ちゃんに一緒に死のうねって話して、皆で並んでたんだよ」

こうなると母の一途な気性は後に戻らなくなる事を私も知っている。父は簡単に話は運ぶ物と考えていたが、母は以外に強情だった。何とか説得して死ぬ気だけは止めさせねばならぬ。

「あのな、日本は負けた訳じゃねえんだぞ。いつまた立ち直るとも分からん。今ここで死んだからと言ってお国のためにゃならねんだ。それより逃げられる所まで逃げよう」

「逃げようたってあんた、このだだっ広い所をどこへだい。あたしゃねもうここを死に場所に決めたんだよ」

「それは俺が死んだと思ったからだろう、生き残りも結構いるんだ町の連中が待っててくれてる。今からでも間に合う。いざと言う時は俺がお前たちを始末するから、何でもいいまずここを出よう」

「あたしゃ行かねえよ、回りは皆敵ばかりの所へなんぞ…」

「だから今いったろうがな、もしもの時にゃ俺が始末すると」

「宏生、ほらあそこに少し高い所があるだろう」

「うん少し白く見えるとこ?」

「ああそうだよ、橋本さんの奥さんがいるよ行ってみな」

母は父と二人だけで話し合うらしい。私は立ち上がると早速おばさんの所に行った。そこは壕の反対側で少し崩れたちょっとした平らな所に、おばさんは立っていた。

「おばさん、橋本君は?」

「あそこにいますよ。あの子は胸に弾が当たってね」

指で指された方に橋本君は外套にきちんと身を包んで仰向けに寝かされていた。耳や鼻は綿で穴を塞がれすでに冷たくなっており死に顔は眠ったように安らかだった。おばさんの立っている近くに三人の子供の遺体があった。

 一番むこうに赤ちゃんその手前に五つの坊や、そして一年生の恵子ちゃんだった。弟の満ちゃんは恵子ちゃんの足がぶらんとなるほどの重傷で痛いよー、痛いよーと泣き叫んでいたところを見ていた。子供心にもそれは恐ろしい光景であったという。

三人共同じく綿が詰められそこだけが白く浮いて見えた。おじさんも銃弾を受けて亡くなり、夫に先立たれたおばさんは生きていく気持ちも絶たれ自決を覚悟した。長男は胸に一発銃弾を受け即死となったが、残った子供達を置いては行けず自分で始末をしようと決めたらしかった。

 母も橋本さんのおばさんが鬼と化しわが子の始末を見ていた。手拭いで赤ちゃんの首を絞め次に坊やを絞めた。この様子を一部始終見ていた恵子ちゃんは自分も殺されると悟り、

「母ちゃん。あたいは死にたくないよ。死にたくないよ」

すでに足に重症を負い死の恐怖を味わった恵子ちゃんは、死を恐れ母に抵抗し泣き叫び哀願していた。でもおばさんは悲壮な表情で無理矢理絞め殺してしまった。死にたくない執念からか二十分位すると恵子ちゃんは息を吹き返し、また母の所へ足を引きずりながら、

「母ちゃんあたい死にたくないよ」

 おばさんはまたも恵子ちゃんを捕まえ首を絞める。恵子ちゃんは生きたい一心で母に頼めば今度は許して貰えると思ったのだろう。

「死にたくないよ」

「今死なないと死ぬときはないのよ。お母ちゃんも後から行くから死ぬの!」

 恵子ちゃんは泣いて叫んで最後の土壇場まで暴れていたという。

おばさんの顔は死人のように青く一点を睨らみ微動だにしなかった。私はいつもと違うおばさんに何も言えずに父母の所に戻った。

おそらくあのおばさんの強さに押されるように、母は美津子の始末の決心をしたのではないか、母は美津子をおぶい直し近くに倒れていた男の人の刀を拝借して粟畑にいったという。刀の主は福岡先生らしい。

ロシア兵の去った後母達は粟畑に隠れ、その時入れ違いに父と私は水を求めて通った事になる。父も訪ね回ってみたが誰も知る人はいなかった。

母はその後壕に戻り自決の話が出て美津子を始末したのではないだろうか。

「錆びた刀で腹を刺して抜いたら五臓が出たが血も出ないし泣きもしなかったよ」

「お水ちょうだいって、いったのじゃないの」

「弱って背中に張りついていたのがそんな事いえるか、ぐたっとして死んだも同じだ」

「俺そんなふうに思ってたんだ。それからどうしたの?」

「近くで見てた若い奥さんにそこに切れる刀がありますよっていわれて、その刀で今度は喉に刺したらことっとなったが血も出なかった」

「じゃ美津子は凄く疲れてたんだね」

「今思えばあの子はとっくに死んでたんじゃねえかと思うよ。若い奥さんに、済みませんこの子もお願いしますといわれたけど、自分の子は自分で手に掛けなさいっていって戻ったんだよ」

橋本君の所から戻っても父母の話し合いは決裂状態だった。満ちゃんが、

「蓉子ちゃんが、あっちにいるけど行ってみる?」

「えっどこに、よし行こう」

「こっちだよ」

 弟に連れていかれた場所は人垣の所で、昼間と夜三回も通った場所である。

蓉子ちゃんも弟達も一緒に固まっていた。

「よう、蓉子ちゃん」

「あらっ、宏ちゃん」

「弟がここだというので来てみたんだ」

「お母さん、心配して宏ちゃん捜してたわよ」

「うん母ちゃんを捜しに来たら、ばったり会ったんだ」

「そうだったの」

彼女とは一緒に小学校へ入学し、その後ずっと勉強の競争相手だった。

 小さい時から家が近かいので一番の仲良しで、縄跳び、お手玉、毬突きなど、一年から三年まではクラスのトップ争いだったがいつも蓉子ちゃんには勝てず、でも男子では一番だった。そろばんも二人は一、二を争っていた。

 前にもちょっと書いたが興安街の区外に一度戦車部隊が野営駐屯した時、一年生だった私と蓉子ちゃんは兵隊さんの慰問に選ばれ、子守歌を二人で合唱したこともある。

 蓉子ちゃんはお人形を抱いての出演で、兵隊さんは草の上にあぐらをかいて聞いてくれた。その時初めて日本の豆タンクを知り軍用トラックの色や形を覚え、豆落下傘を貰って帰った。

 同級生は皆校長先生の娘と一目置いて、小山さん、蓉子さんと呼んでいたが、私は蓉子ちゃんと、ちやん付けで呼んでいた。

「だけどここで良く助かったな。で、校長先生とお母さんは?」

「亡くなったの。ほらそこに、お父さんとお母さん」

もう暗くて指でも刺されない限り分からない。校長先生は地肌が黒く確かめ辛いが、お母さんの方は色白なので直ぐ分かった。十一日の夕方、鶏の餌を貸したときが最後の会話で、やっぱり夫に縋ったのか、そんな姿勢だった。

そんな彼女を何と慰めれば良いのか私には分からなかった。

「僕が歩いてきた所も、在郷軍人の生存者は一人も見なかったけど、ここの壕の中も在郷軍人は誰も助からなかったようだね」

 君のお父さんだけが死んだんじゃない、こんな遠回しな慰め方しか出来なかった。

「そうなのよ。だっていきなりロシア兵が撃ってきたでしょう。お父さんも直ぐロシア兵に向かって手榴弾を投げたの」

「へぇー、それで」

 さすが校長先生だと思った。

「ところが不発だったの。それで直ぐ次を投げた時お父さんは弾に当たってしまったの」

「これだけの人が死んだのだから、凄く弾が飛んできたのだろうな」

「凄かったわよ。回りで人がばたばた倒れるでしょう」

「だけど皆よく助かったもんだ」

「本当に不思議よ。あたしもそう思うの。気がついたら弟を抱きしめていたわ。でも郁夫は凄いのよ。弾のかすり傷だらけで」

「へぇーそんなにかい。郁夫君見せてみなよ」

 郁夫君は腕やズボンを捲り上げてれ笑いして見せてくれた。手首、足首、すね、腿と、七ヵ所も弾の掠った焼け跡が細く太く焼き付いて見える。

「これだけ弾が掠ってよく当たらなかったなあ」

 私は感心してしまった。

「宏ちゃんは、これからどうするの」

「僕かい、僕は最初からどこかに行くつもりで母ちゃんの死んだ姿を捜しにきたんだ。日本は負けた訳じゃないし、こんな所で犬死にしたくないんだ。蓉子ちゃんはどうする積もりなんだ?」

蓉子ちゃんは静かに弟達を見ながら、父母の亡骸に目を向け、

「仕方がないわ。お父さんもお母さんも亡くなったし、日本の一少女として、天皇陛下のために恥ずかしくない死に方をしたいの」

夏休みが始まった時、蓉子ちゃんを誘いあの吹き飛ばされた事務所の玄関で二人は毬突きをして遊んでいた。夏休みに入っても学校の残務整理のため校長先生は学校に勤務していて、その帰り道私達を見ると、

「大嶋」

「はい」

「男はな、いつまでも女と遊ぶんじゃない。男は男らしい遊びをやれ」

先生の立ち去った後、二人はちょっと恥ずかしいような気まずい気持ちになり顔を見合わせた。それが蓉子ちゃんとの最後の遊びとなった。

 先生は満洲に渡ってすでに二十年と長いだから満語はぺらぺら、満語の時間は私たちの担任を受け持っていた。おばさんも元教師だったらしい。

幼な馴染みの蓉子ちゃんだが、自決覚悟の彼女を前に子供の私には何もいうことも支える術もなく、共に競い学んだけどやっぱり校長先生の長女だけあって立派な覚悟だと思った。

「さあどうせ死ぬのだから、お腹いっぱい食べて死にましょう宏ちゃんも食べなさいよ」

と生の干しうどんをぱりぱりやりだした。私も何本か貰い口にしたが、ちょっとした塩味が舌に感じられ結構食べられる。干しうどんに塩味が有ることを初めて知ったのだった。

「だってあんた、あの子はもう死んだと同じだったよ。弱って口も利かなくなって、それに自決と決まったし」

「自決する気だったのか」

「ああそうだよ。自決と決まったから、美津子を手にかけたんだよ。ここで順番待ちをしていてぢきに番がくると思ってたら刺す人が一服したんで、もう一度あんたと宏生の死に姿を捜してみようと思って粟畑の方に行ったけど、みつからねぇんで諦めて戻ってきたら、宏生の声に吃驚したよ」

奥の方では在郷軍人の二人が自決組の介錯を進める黒い姿が見え、「ご免なさい」「ご免なさい」と小さな声が聞こえる度に自決者が息を引き取っていた。

「あたしゃね、あんたらが死んだもんだと思ってたから、宏生に呼ばれたときゃまさかと思ったよ」

「そりゃそうだろうな。まあ何にしても助かってよかった。俺も死んでると思ってたんだし。じゃ行くか。向こうで皆が待ってるんだ」

「行こうってあんたどこへだい。皆で自決って決まったんだよ。向こうに行ったからってどうなる事じゃ有るめえに。ここでちゃんと死ねるだろうがね。なに考えてるんだい」

「お前こそ何を考えてるんだ。俺が今ここに来たろうがな。何も死に急ぐこたあねえよ」

「あんた、大きな声を出さねえどくれ人聞きの悪りい。皆死ぬ気でいるんだよ。あたしゃここで自決をする気で蓉子ちゃんに一緒に死のうねって話して、皆で並んでたんだよ」

こうなると母の一途な気性は後に戻らなくなる事を私も知っている。父は簡単に話は運ぶ物と考えていたが、母は以外に強情だった。何とか説得して死ぬ気だけは止めさせねばならぬ。

「あのな、日本は負けた訳じゃねえんだぞ。いつまた立ち直るとも分からん。今ここで死んだからと言ってお国のためにゃならねんだ。それより逃げられる所まで逃げよう」

「逃げようたってあんた、このだだっ広い所をどこへだい。あたしゃねもうここを死に場所に決めたんだよ」

「それは俺が死んだと思ったからだろう、生き残りも結構いるんだ町の連中が待っててくれてる。今からでも間に合う。いざと言う時は俺がお前たちを始末するから、何でもいいまずここを出よう」

「あたしゃ行かねえよ、回りは皆敵ばかりの所へなんぞ…」

「だから今いったろうがな、もしもの時にゃ俺が始末すると」

「宏生、ほらあそこに少し高い所があるだろう」

「うん少し白く見えるとこ?」

「ああそうだよ、橋本さんの奥さんがいるよ行ってみな」

母は父と二人だけで話し合うらしい。私は立ち上がると早速おばさんの所に行った。そこは壕の反対側で少し崩れたちょっとした平らな所に、おばさんは立っていた。

「おばさん、橋本君は?」

「あそこにいますよ。あの子は胸に弾が当たってね」

指で指された方に橋本君は外套にきちんと身を包んで仰向けに寝かされていた。耳や鼻は綿で穴を塞がれすでに冷たくなっており死に顔は眠ったように安らかだった。おばさんの立っている近くに三人の子供の遺体があった。

 一番むこうに赤ちゃんその手前に五つの坊や、そして一年生の恵子ちゃんだった。弟の満ちゃんは恵子ちゃんの足がぶらんとなるほどの重傷で痛いよー、痛いよーと泣き叫んでいたところを見ていた。子供心にもそれは恐ろしい光景であったという。

三人共同じく綿が詰められそこだけが白く浮いて見えた。おじさんも銃弾を受けて亡くなり、夫に先立たれたおばさんは生きていく気持ちも絶たれ自決を覚悟した。長男は胸に一発銃弾を受け即死となったが、残った子供達を置いては行けず自分で始末をしようと決めたらしかった。

 母も橋本さんのおばさんが鬼と化しわが子の始末を見ていた。手拭いで赤ちゃんの首を絞め次に坊やを絞めた。この様子を一部始終見ていた恵子ちゃんは自分も殺されると悟り、

「母ちゃん。あたいは死にたくないよ。死にたくないよ」

すでに足に重症を負い死の恐怖を味わった恵子ちゃんは、死を恐れ母に抵抗し泣き叫び哀願していた。でもおばさんは悲壮な表情で無理矢理絞め殺してしまった。死にたくない執念からか二十分位すると恵子ちゃんは息を吹き返し、また母の所へ足を引きずりながら、

「母ちゃんあたい死にたくないよ」

 おばさんはまたも恵子ちゃんを捕まえ首を絞める。恵子ちゃんは生きたい一心で母に頼めば今度は許して貰えると思ったのだろう。

「死にたくないよ」

「今死なないと死ぬときはないのよ。お母ちゃんも後から行くから死ぬの!」

 恵子ちゃんは泣いて叫んで最後の土壇場まで暴れていたという。

おばさんの顔は死人のように青く一点を睨らみ微動だにしなかった。私はいつもと違うおばさんに何も言えずに父母の所に戻った。

おそらくあのおばさんの強さに押されるように、母は美津子の始末の決心をしたのではないか、母は美津子をおぶい直し近くに倒れていた男の人の刀を拝借して粟畑にいったという。刀の主は福岡先生らしい。

ロシア兵の去った後母達は粟畑に隠れ、その時入れ違いに父と私は水を求めて通った事になる。父も訪ね回ってみたが誰も知る人はいなかった。

母はその後壕に戻り自決の話が出て美津子を始末したのではないだろうか。

「錆びた刀で腹を刺して抜いたら五臓が出たが血も出ないし泣きもしなかったよ」

「お水ちょうだいって、いったのじゃないの」

「弱って背中に張りついていたのがそんな事いえるか、ぐたっとして死んだも同じだ」

「俺そんなふうに思ってたんだ。それからどうしたの?」

「近くで見てた若い奥さんにそこに切れる刀がありますよっていわれて、その刀で今度は喉に刺したらことっとなったが血も出なかった」

「じゃ美津子は凄く疲れてたんだね」

「今思えばあの子はとっくに死んでたんじゃねえかと思うよ。若い奥さんに、済みませんこの子もお願いしますといわれたけど、自分の子は自分で手に掛けなさいっていって戻ったんだよ」

橋本君の所から戻っても父母の話し合いは決裂状態だった。満ちゃんが、

「蓉子ちゃんが、あっちにいるけど行ってみる?」

「えっどこに、よし行こう」

「こっちだよ」

 弟に連れていかれた場所は人垣の所で、昼間と夜三回も通った場所である。

蓉子ちゃんも弟達も一緒に固まっていた。

「よう、蓉子ちゃん」

「あらっ、宏ちゃん」

「弟がここだというので来てみたんだ」

「お母さん、心配して宏ちゃん捜してたわよ」

「うん母ちゃんを捜しに来たら、ばったり会ったんだ」

「そうだったの」

彼女とは一緒に小学校へ入学し、その後ずっと勉強の競争相手だった。

 小さい時から家が近かいので一番の仲良しで、縄跳び、お手玉、毬突きなど、一年から三年まではクラスのトップ争いだったがいつも蓉子ちゃんには勝てず、でも男子では一番だった。そろばんも二人は一、二を争っていた。

 前にもちょっと書いたが興安街の区外に一度戦車部隊が野営駐屯した時、一年生だった私と蓉子ちゃんは兵隊さんの慰問に選ばれ、子守歌を二人で合唱したこともある。

 蓉子ちゃんはお人形を抱いての出演で、兵隊さんは草の上にあぐらをかいて聞いてくれた。その時初めて日本の豆タンクを知り軍用トラックの色や形を覚え、豆落下傘を貰って帰った。

 同級生は皆校長先生の娘と一目置いて、小山さん、蓉子さんと呼んでいたが、私は蓉子ちゃんと、ちやん付けで呼んでいた。

「だけどここで良く助かったな。で、校長先生とお母さんは?」

「亡くなったの。ほらそこに、お父さんとお母さん」

もう暗くて指でも刺されない限り分からない。校長先生は地肌が黒く確かめ辛いが、お母さんの方は色白なので直ぐ分かった。十一日の夕方、鶏の餌を貸したときが最後の会話で、やっぱり夫に縋ったのか、そんな姿勢だった。

そんな彼女を何と慰めれば良いのか私には分からなかった。

「僕が歩いてきた所も、在郷軍人の生存者は一人も見なかったけど、ここの壕の中も在郷軍人は誰も助からなかったようだね」

 君のお父さんだけが死んだんじゃない、こんな遠回しな慰め方しか出来なかった。

「そうなのよ。だっていきなりロシア兵が撃ってきたでしょう。お父さんも直ぐロシア兵に向かって手榴弾を投げたの」

「へぇー、それで」

 さすが校長先生だと思った。

「ところが不発だったの。それで直ぐ次を投げた時お父さんは弾に当たってしまったの」

「これだけの人が死んだのだから、凄く弾が飛んできたのだろうな」

「凄かったわよ。回りで人がばたばた倒れるでしょう」

「だけど皆よく助かったもんだ」

「本当に不思議よ。あたしもそう思うの。気がついたら弟を抱きしめていたわ。でも郁夫は凄いのよ。弾のかすり傷だらけで」

「へぇーそんなにかい。郁夫君見せてみなよ」

 郁夫君は腕やズボンを捲り上げてれ笑いして見せてくれた。手首、足首、すね、腿と、七ヵ所も弾の掠った焼け跡が細く太く焼き付いて見える。

「これだけ弾が掠ってよく当たらなかったなあ」

 私は感心してしまった。

「宏ちゃんは、これからどうするの」

「僕かい、僕は最初からどこかに行くつもりで母ちゃんの死んだ姿を捜しにきたんだ。日本は負けた訳じゃないし、こんな所で犬死にしたくないんだ。蓉子ちゃんはどうする積もりなんだ?」

蓉子ちゃんは静かに弟達を見ながら、父母の亡骸に目を向け、

「仕方がないわ。お父さんもお母さんも亡くなったし、日本の一少女として、天皇陛下のために恥ずかしくない死に方をしたいの」

夏休みが始まった時、蓉子ちゃんを誘いあの吹き飛ばされた事務所の玄関で二人は毬突きをして遊んでいた。夏休みに入っても学校の残務整理のため校長先生は学校に勤務していて、その帰り道私達を見ると、

「大嶋」

「はい」

「男はな、いつまでも女と遊ぶんじゃない。男は男らしい遊びをやれ」

先生の立ち去った後、二人はちょっと恥ずかしいような気まずい気持ちになり顔を見合わせた。それが蓉子ちゃんとの最後の遊びとなった。

 先生は満洲に渡ってすでに二十年と長いだから満語はぺらぺら、満語の時間は私たちの担任を受け持っていた。おばさんも元教師だったらしい。

幼な馴染みの蓉子ちゃんだが、自決覚悟の彼女を前に子供の私には何もいうことも支える術もなく、共に競い学んだけどやっぱり校長先生の長女だけあって立派な覚悟だと思った。

「さあどうせ死ぬのだから、お腹いっぱい食べて死にましょう宏ちゃんも食べなさいよ」

と生の干しうどんをぱりぱりやりだした。私も何本か貰い口にしたが、ちょっとした塩味が舌に感じられ結構食べられる。干しうどんに塩味が有ることを初めて知ったのだった。


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