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国のビル耐震改修助成、申請進まず…3年で13件のみ
大震災によるビル倒壊で道路が通れなくなる事態を防ごうと、国土交通省が2005年度から始めた幹線道路沿いに立つビルの耐震改修を助成する制度が、わずか13件しか利用されていないことがわかった。助成率を高めている東京都では1件もない。耐震化が必要な大規模ビルは全国で計約9万棟。国交省は15年度までに1万棟未満に抑える目標を立てている。遅々として進まない“震災への備え”の実態を浮き彫りにしているが、ビル所有者からは、現実的ではないとの声も出ている。
1995年の阪神大震災を教訓に耐震改修促進法が施行され、耐震改修すると、低利融資や税の優遇措置を受けられるようになったが、「思うように進まなかった」(国交省)。
このため、国交省では、倒壊したビルで道路がふさがれ、避難や救助、復旧活動の車両が被災地に入れなくなる問題に着目。まずはこうした事態を防ごうと、幹線道路沿いのビルが耐震改修工事をする場合は、国が費用の3分の1を負担することにした。
しかし、助成制度が始まって3年目に入っても、国交省への申請は11月末現在、横浜市、仙台市、名古屋市、岡山県などから計13件のみ。しかも、うち11件は市役所などの公共施設で、81年以前に建った旧耐震基準の大半を占める民間ビルでは、岡山県と金沢市内で1件ずつしかなかった。
都市機能が集中する都は今年度から、国の助成に3分の1の助成を加える独自の制度を始めた。都心部の銀座中央通りや新宿通りなどに沿って立つ、旧耐震基準の民間ビルが対象で、ビルオーナーの負担は3分の1で済む。しかし、申請はゼロ。都の担当者は「強制もできないし、打つ手がない」と肩を落とす。
耐震改修は床面積1平方メートルあたり2万5000円程度かかる。例えば、延べ床面積が3000平方メートルの5階建てビルの場合、総費用は計約7500万円。都の制度を使っても、ビルオーナーの負担は約2500万円となる。
国交省と都は「巨額の負担が原因」と分析するが、補助率アップも難しい。PRはしているが、「抜本的な解決は遠い」(都幹部)のが現状だ。
一方、東京・銀座にテナントビルを所有する不動産会社の担当者は、「耐震化の必要性は認識している。ただ、耐震改修という大規模工事になると、テナントにいったん出てもらうことになるため、なかなか難しい」と苦慮する。
東京ビルヂング協会の岡本圭司常務理事は「助成があっても、資金力のない所有者には踏み切れない。固定資産税の減免など、新たな誘導策がなければ耐震化は困難」と指摘している。
建て替え促進策必要
アジア防災センター長の伊藤滋・早大特命教授の話
「このまま東京などで大震災が起きれば、阪神大震災と同様、幹線道路沿いのビルが倒壊し、救助・救援に支障が出るだろう。なかなか危機意識は高まらないが、ビルが私有財産である以上、無理に改修させることはできず、限界はある。不動産価値が高くなる建て替えならば、ビルのオーナーにも魅力があると思われ、建て替えの促進策も検討するべきだ」
(2007年12月18日 読売新聞)より転載
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