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家にも「血統書」 偽装建築防止狙う 市民グループ考案
2008年01月15日
耐震強度偽装や悪徳リフォーム商法など住宅をめぐるトラブルが後を絶たない中、建築工事のそれぞれの過程を写真入りの「カルテ」に記録することで業者の手抜きを防ぎ、ミスも見つけやすくする仕組みを東京の市民グループが考えた。「家の血統書」と名付け、銀行や保険会社との提携も始める。住まいの安心を取り戻すだけでなく、価格を引き下げるすべにもなるという。
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「家の血統書」の記入例(一部を拡大)。右端の解説に沿って施工後、左端のイラストに従って撮影した写真を張り付ける
「家の血統書」作りに取り組んでいるのは市民グループ「みんなのおうち」(新山芳雄代表)。建築や金融、法律などの専門家が参加し、10年前から研究を重ねてきた。大手銀行や大手損保も提携商品を今年から発売する。住宅ローンは金利が1%程度、住宅保険は保険料が4割以上安くなるという。
家が建つまでには基礎工事、棟上げ、屋根ふき、内装など多くの工程を経る。その数は木造で約100、鉄骨で150を超える。「血統書」の仕組みはシンプル。各工程が終わるたび、業者に現場写真を撮って所定の用紙に張り付けてもらい、1冊のカルテ本を作るというものだ。
工事それぞれは専門性が高く、仕上がりの良しあしは素人目には分かりづらい。手抜き工事が横行するゆえんでもある。だが、画像に残せば第三者の専門家にチェックしてもらいやすくなる。完成後に不具合が生じても、どの工程が悪かったか、検証しやすい。
また、携わる業者が多いと経費の流れが不透明になりがちだ。水増しの心配も生じる。そこで「血統書」は工程ごとに資材の値段や工賃を書き込むようにした。施主側で無駄をチェックでき、総工費を抑えられるという。
福田首相は就任直後の施政方針演説で「200年住宅」の実現を打ち出した。国土交通省によると、現在の日本の住宅の平均寿命は約30年。施工不良や修繕の不備などが短命の原因とされる。
「血統書」を作れば資材の耐用年数に応じた計画的なリフォームが容易になり、建物の延命を図れる。ローンを低利で借りられるのは、担保としての価値が長く保てるため。手抜き工事の危険を減らせるので、欠陥に備えた損害保険の保険料も安くなる仕組みだ。
新山さんは病院のカルテの開示請求に携わった経験と、本業の焼き肉店経営に関係する国産牛の生産履歴管理の仕組み「牛肉トレーサビリティー制度」をヒントに、この方法を考えついた。
「消費者を家造りの主人公にしたい。これまでどんぶり勘定でやっていた元請け業者は情報開示をいやがるだろうが、彼らに利益を中抜きされてきた下請けは歓迎するはず。普及すれば、閉鎖性の残る建築業界や住宅ローンで大きな利益を上げてきた金融業界の構造も変わる」と話す。
「血統書」の書式の著作権は新山さんが保有。利用したい施主や工務店は申し込めば無償で利用できる。金融機関と保険会社については、グループ関連の別会社が有償で施主とのコーディネートをする。今年から業者向け説明会を本格化し、普及をめざす方針だ。
朝日より転載
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