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住宅ローン繰上返済に潜む「リスク」
「長期固定+繰り上げ返済」式は、住宅ローンの「王道」のように語られがちだ。切り詰めた家計の中から、地道に繰り上げ分を捻出している家庭も少なくない。だが、『今こそ見直せ!住宅ローン』(週刊住宅新聞社刊)を書いたトータルライフコンサルタントの池上秀司さんは「ローン返済の“定説”は必ずしも返済側にメリットが大きいとは言えない」と打ち明ける。
〈〈トータルライフコンサルタントの池上秀司さん〉〉テレビや雑誌によく登場する経済評論家やファイナンシャルプランナーは住宅購入を検討中の個人宅にお邪魔して、住宅ローン返済プランを一緒に練るような仕事はしていない人が多いでしょう。そう思う理由は、常に現場でリアルなプラン作りを日々重ねている私にとっては、彼らの説明に現実味を感じないからです。でも、このリアルなプラン作りを日々、重ねていないと、現実味のある説明はしにくいのではないでしょうか。しかし、現実にはこうした職人仕事のような現場のプロはあまりメディアに登場する機会がありません。その結果、現場の感覚では首を傾げるような「住宅ローンの常識」がまかり通っているように見えます。
サブプライムローン問題が深刻化して以降は、旧住宅金融公庫の段階金利をサブプライムローンと一緒くたにした、筋違いの論評すらお目見えしています。当然、両者は全然別物なのですが、「住宅ローン破綻者が続々出る」といった見出しが雑誌の表紙に躍ることも珍しくありません。
約10年前に旧住宅金融公庫から借り入れを受けた人は当初10年間を年2%台の金利で借りられました。今はその頃のローン金利見直し時期にさしかかっています。年4%程度の金利が適用されることになる人には不安感があるかも知れませんが、過剰反応するには及びません。むしろ、今は35年固定が年3%程度で借りられる時代ですので、どのローンに借り換えてもメリットありという借り手に有利な環境です。20年固定に乗り換えた例を本書で紹介していますが、毎月の返済額は約1万4000円軽くできる計算になりました。この時期に借りた人は借り換えを検討するメリットがありそうです。
10年も前から同じような説明を続けている人もいます。ローンを取り巻く環境がこれだけ変化しているのに、借り手にメリットのある選択肢が変化しないわけがありません。昔の常識を信じ込んでいると、かえって損をしかねないのです。
実は、住宅ローンで重要なのは金利ではなく利息であり、利息を考えるに当たっては、残高の推移を把握することが大切です。金利は誰もコントロールすることはできませんが、残高のコントロールは自分でできるからです。
私は住宅展示場でローン相談を受けています。逃げも隠れもできない場ですから、日々が真剣勝負です。年間に200件程度の相談をこなしていますから、大抵のケースは経験しています。プランをまとめるだけではなく、住宅メーカーの営業担当者や、金融機関のローン担当者とやりとりして、さらに現実的な組み立てに関わることもあります。
住宅ローンを遠巻きに見ている「評論家」ではなく、食の世界に例えれば、料理人そのものです。自前で開発した住宅ローン試算ツールや、説明の手順などの調理道具も磨きを掛けてあります。また、私は生命保険会社出身で、運用商品も販売していましたから、異なる幅広い金融商品の現場を経験してきました。その私の目から見て、「長期固定+繰り上げ返済」式は必ずしも合理的な判断とは感じられません。
日経より転載
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