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給付と負担 消費税の「封印」が解かれた(10月20日付・読売社説)より転載
消費税率の引き上げ論議に、長くかけられていた「封印」がついに解かれたようだ。
内閣府が、年金、医療などの社会保障給付と財政や負担の関係について、3種類の将来試算を経済財政諮問会議に提出した。
税と社会保険料を合わせた国民負担を増やさなければ、現在の給付水準を維持できず、財政赤字も拡大する、という冷厳な事実を突き付けている。
福田首相は、「問題を先送りすれば、(増税か給付削減かの)選択肢はさらに厳しくなる」と述べ、あえて負担増を巡る議論に踏み込む決意を示した。
「在任中、消費税率は引き上げない」と宣言した小泉首相、「歳出削減を徹底し、できれば消費税率引き上げを回避したい」を基本方針とした安倍首相に比べ、責任ある態度と言えよう。
3種類の試算のうち、注目されるのは「負担増で給付を維持するケース」と「給付削減で負担を維持するケース」を比較し、2025年度までの国民負担と給付水準の変化を計算したものだ。
前者では、25年度には国民負担が高成長下で11兆円、低成長下で12兆円増えるうえ、財政赤字の拡大を防ぐために、合計で14〜29兆円の増税が必要になる。
後者の場合、25年度の給付は現状より実質約3割削減される。赤字抑制に8〜24兆円の増税も要る。どちらも、厳しい国民生活を覚悟しなくてはならない。
11年度までの中期的な財政を展望した別の試算では、「歳出を11・4〜14・3兆円削減する」とした従来方針に加え、「14・3兆円削減したうえで、08年度から歳出を毎年1兆円積み増すケース」の財政状況を見通した。
その場合、国と地方を合わせた基礎的財政収支の赤字を解消するのに、低成長なら6・6兆円の増税が必要とした。
内閣府が財政の将来試算の中で、増税の必要額を明示したのは初めてだ。医師不足、介護給付増大などで揺れる社会保障制度を守るため、一定の歳出増も検討せざるを得ない状況になっている。
現実を直視した試算は「高成長による税収増と歳出削減で財政を再建できる」とする一部の楽観論の退潮を物語る。
ただ、試算をする際の増税の具体策は「所得税と消費税が半々」と仮定した。増税の影響が現役世代に偏る所得税を引き上げるのは難しい。ここは、消費税中心の増税と仮定すべきだった。
民主党は消費税率を引き上げなくても社会保障制度を維持できるとしている。試算が出ても、その政策に変わりないのか。痛みの少ない負担増と給付削減の組み合わせを、与野党で探るべきだ。
(2007年10月20日1時32分 読売新聞)
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