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景気拡大シナリオ維持 利上げに意欲 日銀展望リポート
2007年11月01日02時44分
日本銀行は31日、07〜08年度の日本経済の動向を予想する「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)を発表した。米国の低所得者向け(サブプライム)住宅ローン問題を背景に、国外で高まる経済の不確実性を強調する一方、国内経済の緩やかな拡大シナリオは維持し、利上げに意欲をにじませた。ただ、国内経済を取り巻く不透明感が高まることも予想され、日銀が動きづらい局面は続きそうだ。
「サブプライム問題を含む海外経済の動向が最大の焦点」(日銀幹部)となった今回の展望リポートで、日銀は「海外経済や国際金融資本市場の動向などの変調が生じた場合、日本経済に対して影響を及ぼすリスクがある」と強調した。
米国で住宅市場の調整が長引けば、個人消費を直撃し景気が減速する可能性がある。欧州でも金融市場の動揺が続く。福井俊彦総裁は31日の記者会見で「短期的には下振れリスクが高まっている」と述べた。
ただ、リポートは「他の地域が高成長を続けるとみられ、海外経済全体としては拡大を続ける可能性が高い」と明記。中国やインド、産油国などの成長が著しく、日本の景気拡大を牽引(けん・いん)してきた輸出は増加を続けるという筋書きだ。福井総裁は「サブプライム問題の国内への影響は極めて限定的」と自信も見せた。
一方、雇用拡大を背景に賃金の上昇が物価を押し上げる日銀のシナリオは、非正社員の増加などで1人当たり賃金が伸び悩み未完のままだ。リポートは、「中小企業を中心に人件費抑制姿勢が強く、賃金水準の高い団塊世代の退職やパート比率の上昇に伴い、(賃金は)やや弱めの動き」と書き込んだ。
国際競争の激化や原油高を背景に、多くの雇用を抱える中小企業の景況感は悪化している。福井総裁は「国際化の下での景気拡大は構造変化が絶えない」と強調。労働需給が引き締まれば賃金も上昇し、個人消費も増えるとの見解は変えず、「生産・所得・支出の好循環メカニズムは続く」と前回4月のリポートのシナリオを維持した。
毎年4月、10月の年2回公表する展望リポートでは、正副総裁を含む政策委員9人が1〜2年先の実質国内総生産(GDP)成長率や物価上昇率の予測を示す。
今回、07年度の実質成長率見通し(政策委員の予想の中央値)は1.8%。4月時点の2.1%から下方修正した。住宅着工の遅れが原因だが、後ろずれしただけで、08年度は逆に成長率を押し上げる要因になると日銀はみている。
一方、前年比マイナスが続く消費者物価指数(CPI、生鮮食品除く)の上昇率の見通しは07年度0.0%、08年度0.4%。それぞれ前回の0.1%、0.5%から下方修正したものの、日銀は緩やかに上昇するとの見方は崩していない。「生活者の物価感は上がっている」(福井総裁)との期待もにじむ。
リポートは「低金利が長く続くという期待が定着すると、行きすぎた企業活動などを通じ経済・物価の振幅が大きくなる」と景気過熱を警戒する従来の表現を踏襲。そのうえで「経済・物価情勢の改善の度合いに応じたペースで徐々に金利水準の調整を行う」と利上げ意欲を改めて示した。福井総裁も会見で「足元の下振れリスクを余計にカウントし過ぎると政策を誤る」と付け加えた。 朝日より転載
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