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ゼロ金利解除1年…金利上昇、じわり浸透
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預金・ローン・企業向け貸し出し…
日本銀行が2001年3月から5年以上続けたゼロ金利政策を昨年7月に解除してから14日で1年になる。
預金金利や住宅ローン金利、企業向け貸出金利などさまざまな金利がじりじりと上昇し、家計や企業にも「金利復活」が浸透してきた。当初懸念された解除後の景気失速を回避し、日銀は今夏にも追加利上げを目指す公算だ。ただ、物価や景気の回復はなお万全とは言えず、ゼロ金利解除を巡る評価は現在も分かれている。(渡辺達也)
正常化
ゼロ金利解除は、昨年3月の量的緩和解除に続いて、日銀が金利の正常化を目指して行った。世界的にも異例の超低金利政策から脱し、金利の上げ下げで景気をコントロールする本来の金融政策を取り戻すことが狙いだった。日銀は短期金利の誘導目標をほぼ0%から年0・25%にして、さらに今年2月に年0・5%まで引き上げた。解除から1年が経過し、預金やローンなど各種金利は次第に上昇し、代表的な長期金利である10年物国債の流通利回りは、4月末の1・6%強から現在は2%近くまで上昇している。
家 計
日銀の調べによると、解除直前の昨年7月に年0・001%だった普通預金の平均金利は今年3月には0・196%まで上昇、95年5月の水準を回復した。
定期預金の金利も上昇しており、りそな銀行のスーパー定期(預入金額300万円以上1000万円未満)で見ると、1年物の金利は昨年7月の年0・08%から年0・35%へ大きく上昇した。
家計には金利収入が増える恩恵をもたらす一方、住宅ローン金利の上昇などで負担増もある。三菱東京UFJ、みずほ、三井住友の3大銀行は金利固定型の住宅ローン金利を7月から一斉に引き上げた。
第一生命経済研究所の試算では、30〜40歳代の世帯は預金金利の上昇分よりローン負担分が年間1万7000円上回る「負担増」となった。一方、住宅ローン残高が少なく、預貯金も多い70歳代の世帯は預金金利の上昇分の方がローン負担分より3万1000円多く、「恩恵増」となる。全世帯では預金金利の上昇分の方が1万2000円多い計算だが、実感が薄いのが実情だ。
企 業
企業向け貸出金利も上昇傾向にあるが、企業の規模や業種などで2極化している。代表的な短期プライムレート(貸出期間1年未満)は主要行の平均値で見ると、昨年7月の年1・375%から年1・875%まで上昇した。ただ、輸出関連など業績が好調な企業では、優良顧客を奪い合う銀行間の競争が激化し、「1%未満で貸している銀行もある」(大手銀行)。
一方、業績不振が目立つ地方の中小零細企業などに対しては、3%を上回るケースもあり、「金利の引き上げ交渉に応じない企業には銀行が融資を引き揚げることもある」(帝国データバンク)という。
デフレ脱却には至らず
評 価
日銀は2000年8月にもゼロ金利解除を断行したが、その後の景気失速で翌年春に再びゼロ金利に戻す失態を演じた。それだけに昨年の解除では景気への影響を最も懸念していた。
昨夏以降も日本経済は緩やかな拡大基調を続けており、目立った弊害は出ていない。国内総生産(GDP)の実質成長率は今年1〜3月期まで9四半期連続でプラスを維持するなど堅調だ。伊藤元重・東大教授は「家計や企業への影響も少なく、ゼロ金利解除の時期は適切だった」と評価する。
ただ一方で、5月の消費者物価指数の伸び率が4か月連続でマイナスとなるなど、完全なデフレ脱却には至っていない。
「もう少し待てば物価も安定し、景気回復もはっきりしたはず。ゼロ金利解除は早すぎた」(大和総研の原田泰氏)との批判もある。ゼロ金利解除の評価は今後の経済情勢にかかっていると言えそうだ。
金利0.5%継続へ…日 銀
日本銀行の金融政策決定会合が11日始まり、金融政策の判断材料となる最近の経済・物価情勢について議論した。12日に開く2日目の会合では、短期金利の誘導目標である無担保コール翌日物金利を年0・5%とする現行の政策を維持する見通しだ。議決権を持つ9人の政策委員(正副総裁と審議委員6人)は初日の会合で、日本経済が緩やかな拡大を続けているとの認識で一致したとみられる。ただ、委員の間では「米経済の動向など確認すべき事項は多い」との考えも根強く、追加利上げは8月の次回会合以降に見送られる公算が大きくなっている。
(2007年7月12日 読売新聞)より転載
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