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福田首相退陣 政策遂行へ強力な体制を作れ(9月2日付・読売社説)
日本の最高リーダーが、またも、突然、政権の座から降りた。異常な事態である。
自民党は、新たな総裁を早期に選び、後継首相の下、政治空白を最小限にとどめなければならない。
福田首相が1日夜、緊急の記者会見を行い、辞任を表明した。
首相は、1か月前に内閣改造を断行し、この体制で臨時国会に立ち向かう決意を強調していた。首相は、先週末に辞任を決意したとし、その理由について「新しい布陣の下、政策の実現を図っていかなければならない」と語った。
◆ねじれ国会に苦慮◆
1年前の9月12日、安倍前首相が健康上の理由もあって、突如辞意を表明した。昨年夏の参院選で自民党が惨敗し、衆参ねじれ国会が出現した。これが前首相辞任の大きな引き金になった。
福田首相も、今年の通常国会で民主党の審議引き延ばし戦術に苦しみ、政策遂行に難渋した。
揮発油税の暫定税率を維持するための税制関連法案の成立がずれ込み、ガソリン価格が短期間に乱高下するなど国民生活に混乱が生じた。
日本銀行総裁の人事も、政府が提案した人事案が参院で繰り返し否決され、日銀総裁が一時不在となるという失態を招いた。
いずれも日本政治の機能不全を象徴する出来事だった。
近く召集予定の臨時国会でも、引き続き、民主党などの激しい抵抗が予想されていた。政策実現の展望も開けず、結局、辞任に追い込まれたといえる。召集前の辞任表明は、国会への影響を最小限にとどめるためだろう。
首相は、内閣支持率の低迷にも苦しんでいた。内閣改造も政権浮揚の転機にならなかった。
衆院議員の任期は残り1年に迫っている。早期の衆院解散・総選挙を念頭に、公明党などからも首相の交代を促すような発言も公然と出ており、与党内にきしみが生じていた。
首相は辞任会見で、「私自身、自分自身を客観的に見ることができる」と述べた。これは、次期衆院選を自らが自民党総裁として戦うことは適切でない、との判断を示したといえよう。
首相は、道路特定財源の一般財源化や、北海道洞爺湖サミットを無難にこなすなど、一定の成果を上げた。だが、消費者庁の設置など「福田色」の政策は実現できず、政権は短命に終わった。
◆オープンな総裁選を◆
福田首相の後任としては、自民党の麻生幹事長が最有力候補とされてきた。
麻生氏は、昨年の「ポスト安倍」の自民党総裁選で、福田首相と一騎打ちを展開し、党員投票の得票では首相に迫った。麻生氏には、その意味で「選挙の顔」としての期待が高い。
ただ、麻生氏の政策については、国民には十分に知られていない。いわゆる小泉構造改革を続けるのか、当面の景気浮揚を優先するのか。消費税率の引き上げの道筋をどうつけるのか。
今回の総裁選では、これらが大きな論点となろう。
自民党は、国民の前で堂々とオープンな総裁選を展開し、次のリーダーを選出、重要政策の遂行にあたらなければなるまい。
日本を取り巻く環境は、内外とも、政治、経済両面で「多事多難」である。それも、サブプライム問題や原油高など日本一国では対応できない難問ばかりだ。
福田首相自身が認めるように、ねじれ国会の下、日本の政治は、何も決められない、決めるまでに相当な時間を要する、という状況が続いている。
特に、海上自衛隊によるインド洋での給油活動を継続することは、本来、日本が国際社会による「テロとの戦い」の一翼を担うための最低限の責務である。
昨年の臨時国会では、参院第1党の民主党の反対で、新テロ対策特別措置法の成立が遅れ、給油活動の中断を余儀なくされた。
◆自公連携の再構築◆
今年は、公明党が衆院で3分の2以上の多数による再可決に慎重姿勢を示し、新テロ特措法改正案の成立自体が危ぶまれている。後継政権は、ギクシャクしている自公関係を立て直し、改正案の成立を期すべきだ。
日本の景気は後退局面入りが確実視されている。政府・与党は、事業規模11兆円超の総合経済政策をまとめ、補正予算で1兆8000億円の歳出を決定している。この経済政策の実効を上げることが、喫緊の課題である。
臨時国会ではさらに、先の国会で積み残した社会保障の関連法案などの処理も予定されている。
「ポスト福田」の新内閣は、一連の政策課題を迅速かつ機動的に遂行できるよう、強力な布陣を敷くことが何より肝要である。
(2008年9月2日02時26分 読売新聞)より転載
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