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住宅50棟未完成で放置
太田・花菱社長姿消す1000万受領、更地の現場も
従業員が不在となり、閉鎖状態の花菱の本社事務所(21日、太田市飯塚町で)
太田市の住宅建築販売会社「花菱」(田島光夫社長)が受注した住宅工事が、施主から多額の代金を受け取りながら、中断されたまま事実上放置されていることが、県への取材や施主の証言などで21日、わかった。1000万円以上を支払ったのに更地のままの事例もある。一部の施主の相談を受け、県は4月、田島社長に対して建設業法に基づく指導を実施、契約履行を促したが、社長の所在は現在、わからなくなっている。工事が中断したままの物件は約50棟に上る模様だ。
県監理課によると、同社に関する相談や問い合わせは、今年1月以降で20件以上になる。「契約後まもなく1000万円以上を支払ったのに工事が止まった」などの内容が多いという。
昨年10月ごろまでは工事は進んでいたとみられるが、4月に退職した男性従業員は、取材に対し、「資金繰りに行き詰まり、工事現場を稼働させる資力がなくなった。社長の行方もわからない」と話した。
このため、一部の施主は、返金を求めたり、弁護士に相談して解約を求める内容証明を同社に送るなどしているが、回答がないケースが目立っている。
1500万円で住宅新築を依頼した県内の女性(36)は、昨年8月の契約時点で1350万円を支払った。9月に着工したが、支払い済みの半分程度の進捗(しんちょく)度で、工事は11月にストップ。女性は先月契約を解除したものの返金はないといい、取材に対し、「絶対に許せない」と憤りをあらわにした。
昨年末に1000万円を支払った男性(39)の場合は、今年2月の地鎮祭以降、まったく工事が行われず、予定地は更地のまま。男性は「全部で2600万円の工事だったが、『すぐに振り込めば200万円引く』と言われ、多く払ってしまった。もう、あきらめるしかないのか」と肩を落とした。
今年1月に破産した浜松市の「富士ハウス」や、同3月に経営破綻した埼玉県の「アーバンエステート」でも、こうした事例が多く、浜松では2月、施主を支援する被害対策弁護団が結成されている。
ただ、花菱のケースで相談を受けた県内の弁護士は、「花菱の資産状況がまったくわからず、損害賠償を請求する民事訴訟を起こしても、返金の見込みは低い」と悲観的だ。県監理課も「現行法では、施主を保護する規定はなく、行政上の救済は困難だ」としている。
花菱の本社事務所は21日、従業員不在で、閉鎖された状態だった。最近まで、花菱の副社長として再建に取り組んでいたという東京都内の建築工事会社社長の男性は同日、「社長を捜しているが、今後の方針はわからない」と話した。また、債権者の1人であるとして、「希望する施主の工事は引き継ぎたい。債権回収のためにも、倒産は困る」とも話した。
花菱は1995年の設立で、リゾート風のデザイン住宅が売り物。民間信用調査会社の東京商工リサーチ前橋支店によると、太田、高崎両市を営業拠点に、2007年7月期には21億円を売り上げ、県内約4000社の建設業者の中では、50位程度の規模。ピーク時には年間100棟程度を受注していたとみられる。
(2009年5月22日 読売新聞)より転載
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