ここから本文です

FOREVER, MICHAEL

マイケルジャクソンの音楽とアート。ジャズ・ロック・ブルースなど黒人音楽の歴史とライブ魅録。

書庫BAD

http://img5.blogs.yahoo.co.jp/ybi/1/9d/03/matsudavis/folder/970262/img_970262_28748214_4?1332693506
記事検索
検索

全4ページ

[1] [2] [3] [4]

[ 次のページ ]

 
アルバムBADの2曲目。アルバム中、ダントツにブルース色が濃い。この曲にマイコーの男っぽさを感じるなら、マイケルに宿るブルースマンとしての魂を感じるんだと思う。 ポジティヴに、本能のまま思いを歌い上げているボーカル、さらにビデオのダンスムーブ・・・やはり、あなたさまは世界最強の Hoochie Coochie Man” (意味はこちらへどうぞ)
 
フェードラ、ヒーカップ、hee-hee 〜 マイケルのシグニチャーはブルースに辿りつく。父親ジョーがゲイリーの鉄鉱所で働いていた頃は、ラジオだけでなくブルースのレコードも作られるようになっていた。シカゴとは車で40分の距離。85を過ぎていまなおライブで歌い続ける、BBキングはジョーより3つ上。50年代、BBも、まだ若造だったバディもゲイリーのブルースクラブで演奏することがあった。ギターを弾いていたジョーが当時のシカゴブルースに慣れ親しんでいた、ことは想像に難くない。シカゴやゲイリーのバーでは、と殺場や鉄鋼工場での仕事を終えた黒人で賑わい、彼らはブルースを聴き、お酒を飲み、騒ぎ、肉体と心の疲れを発散していた。当時バーに集う女性はカウンターに座るのは禁じられていて、テーブル席でブルースを聴き、好みのブルースマンを物色した。 乱闘も起こり、店内はかなりワイルドな雰囲気だった。
 
この曲もBADと同じく、ビデオとセットでひとつの世界が完成する。そして同様のテーマが繰り返される。ブルースのルーツ、西アフリカのカルチャーでは、労働歌以外に、若い男が女の子の気を引こうとする、いわゆるナンパの際に使われる歌があるそうだ。老人が思春期の若者に「男というもの」をレクチャーする歌もあるという。 素朴でEarthy なカルチャーを、アメリカのラフなストリートで再現してみせる。
 
「お前はBADじゃない」といわれて、仲間にいれてもらえず、意気消沈して帰ろうとする坊やを、老人が呼び止める。

あんな連中の仲間になりたいのかい?
ろくでもない奴らだよ。
いいかい。自分の心に手を伸ばして、自分というものをちょこっと取り出すんだ。
お前はお前だって事さ。他の誰にもなれないんだからね。
 
マイケルはBADの意味を歌の中で「再定義」したけど、黒人カルチャーでは、たとえば、こんな使い方をする。
BBキングがバディガイに語った話。マイルスデービスにニューヨークで出会ったとき、初対面だったけど、マイルスがやって来て、BBに話しかけた。

“You bad, man.  You real bad.” 
「おい、ワル。おまえ、ほんとにワルだな」
“Thank you, Miles.” 
「ありがとよ、マイルス」
“Not only are you bad, you can do something I can’t.” 
「ワルなだけじゃなく、俺様ができないことをやってくれるよな」
“What’s that, Miles?”
「何かな、マイルス?」
“I been studying music my whole life.  Went to school.  Had all these fancy teachers and fancy courses.  But you, you bend one note and make more money in one night than I make in a month.”
「俺は人生これまでずっと音楽を勉強して来た。学校に行き、いい教師を持ち、いいコースも受けた。だがな、お前はたった一つの音符を曲げるだけで、俺が一月で稼ぐ金より、もっと多くの金を一晩で稼ぐんだ」
 
ブルースマンは一杯のウィスキーを賭けて、熱いギタープレイで競争する。女も大好きだけど、ギターとブルースがもっと好き。歌は本能・・・みたいなブルースマンの粋をBADと表現している。いきなり初対面で「おまえ、ほんとにワルだよな」といわれたら、それは「激ほめ」。しびれるような粋な男の会話です。
 
女の扱いなんか知らない坊や、と嘲笑されながら、老人の言葉、
Be Yourself! を胸に勇気を出す。 震撼とさせるような Hey!! という掛け声。「僕は女のことなんて知らない。」という仮面は、グルーブとともにはがれてゆき、しなやかに、本能のまま「女」を求め追いかけてゆく。マイコーよりさらに小顔なタチアナが「車」の中にすべりこみ、マイコーが後に続くシーン。この一瞬の「密室」状態に、どっきり・・・。しかし、期待(何を?)を裏切り、タチアナは車を抜け出す。アー残念。さらにパワーアップするマイコーの誘惑ダンス。気持ちMAXで駆け寄ろうとするタチアナだけど、彼の姿は消え、水道管から噴出す水の音が入る。まさしく燃え上がった気持ちに水を差されるようだ。
 
ここはアンチテーゼであり、マイコーは常々女性をラフに扱うのを嫌っていたようで、欲情だけで愛を交わすのはよくない、という魔王様の哲学が表現されたのか、と思う。マイコーは父親に宿る暴力性が大嫌いだった。しかしカルチャーとして、ジョーの若い時代には、恋人や妻への暴力も日常茶飯事だったから、ジョーだけが特別乱暴だったわけではないようだ。


・・・さらに、黒人カルチャーの「クール」という思想。無感動、無関心、禁欲を装うこと。 ホワイトアメリカにおいて、抑圧の歴史から黒人が学んだ処世術。 激情はクールダウンされ、ひそやかで落ち着いた感情に変換される。lustに汚されなかった愛をこれから育む、という二人の未来が感じられるようなエンディングです。



MAN IN THE MIRROR

 〜 ウィルバーフォースとマイコー、訳と解釈、韻とリズム
 
奴隷貿易廃止 (1807年) に尽力したイギリスの政治家ウィルバーフォース。
1785年2月、ウィルバーは休暇中、ある親戚の所有する本に目が留まった。
気になって仕方がないその本を借り、帰路馬車のなかで読む。
それは心に種をまき、ゆっくりと育っていき、再会したジョン・ニュートンとの対話を通して、
しだいに宗教に開眼していった。
 
当時のイギリスは奴隷制を当然のものとして受け止め、100年もの間、利用し続けた社会。
クリスチャニティの実践は遠のき、不潔な公衆衛生、動物虐待、公開処刑、貧困層に蔓延する
アルコールと少女売春。飲酒習慣はなんと議会にも蔓延していた。
時の首相でウィルバーの親友であったピットも、例に漏れず昼真っから飲酒。
母親は酔っ払い、子供の世話を放棄し、貴族階級は堕落し、時の王様、ジョージ3世は
モラルを尊ぶ人だったが、その息子たちは獣のように欲望をむさぼった。
イギリスの啓蒙思想時代、社会は希望もなく、俗悪と残虐趣味で満たされていた。
彼はその社会一般のパラダイムを否定し、奴隷制を悪だとする見解を含む、新しい世界観を持った。
 
賢く陽気で機知に富み、誰からも愛され育ったウィルバーフォース。
幼少期にはニュートンから息子のようにかわいがられていた。
美声の持ち主で、彼のスピーチや歌に聴衆はうっとりと聞き入ったそうで、
伝記
を読んでいるうちにマイコーとオーバーラップしてきたものだ。
その彼の心の中で育っていったプリンシプル(宗教的な啓示)は、過去、
社交や遊行に使ってきたたくさんのお金を、貧しい人たちのために使うべきではなかったか、
という後悔へと彼を導き、政治家・ヒューマニタリアンとして、
よりよき社会を作るために進むべき道を照らし出した。
彼の知性と行動力の凄まじさは、自己変革を社会の改革にまで実践、拡大したこと。
彼と奴隷解放を推進する仲間は、共鳴するクリスチャンの人々とともに活動しながら、
社会全体の意識を変化(パラダイムシフト)させていった。
 
マイケルの歌、マン・イン・ザ・ミラーには、神の啓示を受けたウィルバーフォースの
パラダイムシフトの瞬間が感じられるようです。


Introduction:
 
I’m gonna make a change, for once in my life
It’s gonna feel real good, gonna make a difference,gonna make it right
 
僕は、生まれて初めて、変わろうとしている。
ほんとうにいい気持だ。以前となにかが変わり、いい風が吹いてくるだろう。
 
1st Verse:
 
As I turn up the collar on my favorite winter coat
This wind is blowin’ my mind
I see the kids in the street with not enough to eat
Who am I, to be blind, pretending not to see their needs?
 
 
お気に入りの冬のコート。襟をたてると冬の風は
僕の心に吹いてくる。
通りにいる子供たち。おなかをすかせているのがわかる。
おまえは一体何者なのだ、見てみぬ振りをしようとする。
かれらの求めに気づかない振りをする。
 
A summer’s disregards, a broken bottle top, and a one man’s soul
They follow each other on the wind Ya’ know
‘cause they got nowhere to go
That’s why I want you to know
 
夏と無縁の、
割れたビンの頭と孤独な男の魂は
風に運ばれて追いかけっこ
かれらにはどこにも行くところがないのだから。
だから僕は君にそのことを知ってもらいたいんだ。
 
コーラス:
 
I’m starting with the man in the mirror
I’m asking him to change his ways
And no message could have been any clearer
If you wanna make the world a better place
Take a look at yourself, and then make a change
 
鏡に映っている男から始めよう。
生き方や考え方を変えるように言おう。
これ以上わかりやすいメッセージはないだろう。
もし君が世界をよりよくしたいと思うなら
自分を見つめて、変わるんだ。
 
2nd Verse:
 
I’ve been a victim of a selfish kind of love
It’s time that I realize that there are some with no home, not a nickel to loan
Could it be really me, pretending that they’re not alone?
 
僕は自己中心的な愛にとらわれていた
今僕は気づいた
家もなく、5セントすら借りる当てのない人がいる。
かれらだって一人じゃない、と思うふりをしていたのは、
きのうまでの僕だった
 
A willow deeply scarred,
Somebody’s broken heart
And a washed-out dream
(washed-out dream)
They follow the pattern of the wind, Ya’ see
Cause they got no place to be
That’s why I’m starting with me
 
痛んだ柳の木
だれかの悲しみ
色あせた夢
みんな風の吹くままに流される
みな居場所がないから
だから僕は自分から始めよう
 
*Repeat Chorus

冬。コートの襟を立てて身体は暖かくなったはずなのに、心に風が吹く。
このうすら寒い思いは、おなかをすかせた路上のこどもたちに気づかない振りをしてきた自分に、
気づいたから。そして夏。楽しい時間とは無縁の孤独なホームレスに思いを馳せる。
時の流れとともに、ゆっくりと自分の心に育っていった他者への愛。
そして今、自己中心の愛から他者への愛にパラダイムシフトした瞬間が鏡の中の男によって語られる。
 
モチーフとなっている。孤独や迷いを象徴。
それは「鏡の中の男」の心にしっかりと根付いたプリンシプルと対比される。
逆にいえば、〔他者への愛〕を心にはぐくめば、孤独や迷いを感じることはない、ということだろう。
 
マイコーとウィルバーフォース。同時代だったら大親友になっていただろうなあ・・・と思う。
誰でもすぐ心を開くような社交的で陽気な気質のウィルバー。
肖像に残されたウィルバーは小柄で、優しい顔にきらきら子供のような目をしている。
病気がちで視力もかなり悪かったそうだ。 映画の男前ウィルバーとはちょっとイメージが違う。。。
そのウィルバーも啓示を受けてから思想として形になるまでに、2年ほど心が暗闇の時代にいた。
 
ここでマズローの理論―人間の欲求レベルをピラミッド式に現したもの、を思い出すのだけど、
マズローは後に改訂して、ピラミッドを二つに分けた。 
二つ目のピラミッドは人間の
Growth Needs ***を表し、自己実現を達成した後、
トップにくるのは、他者を助け、自我を越えたい、という要求 (Self−Transcendence)。
マイコーとウィルバーフォースはまさにこの段階で社会や自己と戦っていたのですね。
 
最後に・・・詞とボーカル。
4・18づけのウィラさんたちのブログは「マイケル詞の踏韻」が主題だった。
なるほど〜目から鱗で、歌詞の見方、楽しみ方が広がった感じです。
Dancing with the elephant:  このブログは毎回ミニ・パラダイムシフトが経験でき、
脳にとてもいい感じ。) マンミラはサイーダ・ギャレットの作詞だけど、
韻による詞の力強さがマイコーのボーカルでさらにパワーアップ。
第一バースを例にみてみよう。。。

As I turn up the collar on
my favorite winter coat
This wind is blowin’ my mind
I see the kids in the street with not enough to eat
Who am I, to be blind,
pretending not to see their needs?

 
Coat, street, eat, の 語尾の t は daっと吐き出されるように発音されており、
mind, blind, needs (このdsも daと発音)と韻を踏んでいる。Onのあとにもd音が感じられる。
ハイライトした単語では、〔
ou〕〔i:〕〔ai〕が母韻を踏んでリズムを作っている。
 
 
A summer’s disregards,
broken bottle top,
And a one man’s soul
They follow each other on the wind Ya’ know
‘cause they got nowhere to go 
That’s why I want you to know

 
1〜3行目のAの頭韻。2行目はBの頭韻と、bottle & top のOの音。3行目のsoul、4行目のfollow, know, 5行目のnowhere, go, 6行目の know, が 〔ou〕で母韻を踏む。
 
これだけみても、マイコーがいかに緻密にリズムを練り上げていったかがわかる・・・。



 
 
* The Rise and Progress of Religion in the Soul (1745: Philip Doddridge)
** Amazing Grace:  William Wilberforce and Heroic Campaign to end slavery: 2007
*** Maslow’s Hierarchy of Needs: Growth needs:  Cognitive need to know and understand;Aesthetic need for order and beauty; Self-actualization; and Self-transcendence.
 
 
 


 
ス・リグの回想。

「・・・マイケルは苦しんでいる人を知ると、いつでも救助に向かった。
ある少年が父親に部屋に閉じ込められ、火を放たれ、ひどいやけどを負った
という記事を読んだとき、すぐに病院へ飛んだ。
口元のみを残し、顔中包帯に包まれた少年が、僕はこれからどうしていいかわからない、
どうしたらいいの、と訴えると、マイケルは『心配しないで。
僕がこれから君を一生面倒を見るから』といったんだ。そしてそのとおりにしたんだ。・・・」 

Don’t worry. I’ll take care of you for the rest of your life.
これを聞いたとき、衝撃を受けたものです。
「一生面倒を見る」という重たい責任を伴う言葉を数秒たがわず、
何のためらいもなく発する。なんて凄い人なんだろう、と。
マイケルの心には、「子供たちは救われなくてはならない」という絶対的な真理があって、
それは灯台の灯りのように彼を導くのでしょう。
 
遅ればせながら、数年前のベストセラー本 ― “7habits of Highly Effective People,”
Stephen R. Covey〔キンドル版394p: 2009年改定〕 ― を読んでいます。 
(翻訳本は、「7つの習慣」 キングベア:1996、2008)。 

本書では、
 
パラダイム(概念、アイディア、思考の枠組み、など)
パラダイムシフト(違う局面から物事を見たり、判断すること; ものの見方や感じ方を変えること)
プリンシプル(自分を導く内なる法律、真理、価値観、など)
 
という基本コンセプトを使用し、よりよき方向へ人生や仕事や人間関係を改善してゆくための
方法論、思考法が述べられています。パラダイム(Paradigm)という概念はもともと
科学の分野で使用され始めた用語で、たとえば、コペルニクスは天動説
(当時流布していたパラダイム)を否定し、地動説を唱えました(パラダイムシフト)。
 
なぜこの本を取り上げたのかと言うと、MJの行動や作品を理解するのに、
とても有効な思考法を述べてあるなあ、と感じたから。
マイケルの誤解されやすい行動や、作品における物語の多義性−それがもたらす
複雑さがこの3つのコンセプトに当てはめれば、わかりやすくなる、ということに
気づいたのです。絡まった糸がほぐれるように。

マイコーの歌詞の世界では、パラダイムシフトが頻繁に起こり、その結果、
たとえばナレーターが主役に転じたり、She や He が You & I に転じたりする。
そのわかりやすい例がアルバム「マイケル」の一曲、Keep Your Head Up でしょう。
 
ミニ・パラダイムシフトは日常よく経験されることで、たとえば、自分の経験でいえば、
バス停で立っていたとき、どすん、とぶつかられたことがありました。
むっとして、振り返ったとき、実はその人が白杖をつき、わたしが誘導路にぼさっと
立っていたことに気づいたのです。あわてて、「ごめんなさい」と詫びました。
自分中心のむっとした感情(パラダイム)が、自分の間違いに気づき恐縮に変わった
パラダイムシフトの例です。
 
イメージ 1右の図は心理学やデザイン理論でおなじみの「老婆と淑女」。
見方を変えれば違うものが見えてくる、という例。
さらに、ある実験で、事前に若い女性の写真を見せられた
グループ、老女の写真を見せられたグループ、に
それぞれこの図を見せたところ、前者は絵を若い女性ととらえ、
後者は老婆だと答えたそうです。

事前に与えられた情報がいかにパラダイム(ものの見方・考え方)に影響するか、という一例です。マイケルに対する、メディアのイメージ操作・・・を彷彿とさせる実験結果です。

没後ファンである私の場合、マイコーに対する見方が変わった(パラダイムシフトが起こった)のは、彼がツアーで定宿にしていた東急キャピタルのスタッフの談話―スイートの部屋に残された汗だまり―を読んだとき。2回目はHealThe Worldを聴いた時、でした。
 
マイケルの行動原理となるプリンシプルを想像してみますと、
 
芸術・音楽・ダンス・作品
反骨精神
よりよき社会
偉人・天才
かもめのジョナサン
正義と平等と自由
地球
苦しんでいる人たちの救済
こどもたちの幸福
自己変革
 
など。。。
 
冒頭のセス・リグの談話で述べられたエピソードも、マイコーの言動が、信念である
「子供たちの幸福」や「愛」に基づいていること、を示すものでしょう。
チャンドラー以後、なぜまた二の轍を踏むような羽目に陥ったのか、
ずっと理解しがたい思いを持っていました。
でも、彼のプリンシプルが目の前の救いを求める手を払うことをさせなかった、
ということがわかります。

パラダイムシフトが必ずしもプラスの方向へ向かうとは限りません。
負の方向に下ることもあります。
著者のコヴェイ博士はそのパラダイムシフトを螺旋を描くように上昇させることが、
人生を幸福へ導く方法だ、と述べています。
マイケル・ジャクソンという人はそういう意味で人生の達人ではなかったのでしょう。
 
マイケルの心に育った人道主義というプリンシプル。
その結果起こったパラダイムシフトが顕著に表現された曲が、MAN IN THE MIRROR
まるで啓示を受けたかのように、ある日突然「自己中心の愛」から「他者への愛」にシフトする。
モハメド・アリも療養中のマンデラ師も愛したこの曲については、次回に続きます。


マイケルの作る歌の中には、かなり「怖いもの」がある。

人間のダークサイドを表現した曲。 幼少期のトラウマを描いたと
思われる SCARED OF THE MOON (THE ULTIMATE COLLECTION)
殺人を連想させる BLOOD ON THE DANCE FLOOR。 
幼女殺人事件を描写した LITTLE SUSIE(HISTORY) など。
THIS PLACE HOTEL(TRIUMPH)にいたっては、音でも怖い思いをさせられる。 
この曲を寝入り端に聴いていたら、がたがたとものが壊れるような音に驚いて目がさめ、
心臓がどきどきしたことがある。
 
スム・クリも怖い歌詞で始まる。不穏なイントロ、どくどくと響く心臓の音。
イントロの後で入るマイコーのパーン!っていうキューにも驚かされる。
1バースめは恐ろしい犯罪シーンを描いている。
 

As he came into the window
It was the sound of a crescendo
He came into her apartment
He left the bloodstains on the carpet
She ran underneath the table
He could see she was unable
So she ran into the bedroom
She was struck down, it was her doom
 
奴は窓を割って忍び込んだ
クレッシェンドのようにだんだんと大きく近づいてくる音
奴はあの子のアパートに忍び込んだ
カーペットに血の跡を残して去った
あの子はテーブルの下に逃げ込んだ
彼女は無力だった
逃げ込んだ先は寝室で
奴に押し倒され、それがあの子の最後だった

 
ミステリー映画の1シーンのよう。 とはいえ、実際に聞くと、リズムやビートの
かっこよさ、SFのクラブ‘30で繰り広げられるゴージャスなダンスシーンに
幻惑されて、歌の持つ怖さまでには、なかなか思い至らない。
 
ところが・・・この曲のインスピレーションは、なんと実在のシリアルキラーだった!

(p.261: YOU ARE NOT ALONE)

84年から85年にかけてロスとサンフランシスコで14人もの犠牲者がでた。
犯人は60年生まれというから犯行当時は24歳。
ウィキによれば、父親は警官で、体罰を与える人だった。
13歳のときに目の前でおばがおじに殺される現場を見た。

同年代で、父親の体罰というキーワードから、この犯人に興味をもったのだろうか?
(カリフォルニアは死刑を廃止したので犯人は獄中結婚をし、存命中。)
 
当時曲のインスピレーションに関しては、秘匿されていた。
それには2つ理由があった。
スリラー発表後、マイケルはエホバの証人の本部から「監視」をされていた。 
だから彼らに歌のアイディアのソースを知られたくなかった。
もうひとつは、メディアから「犯罪を助長する」と非難されないように。
P.262:YANA
 
それにしても、「ふたりの監視人がビクトリーツアーにもビデオやレコーディング
収録時にも影のように付き添った」。。。って、この逸話もかなり怖い。。。
 
SFで、マイコーがマシンガンをぶっ放すとこも怖いね。
ビデオ撮りのとき。マイコーは銃器の訓練も受け、本物の銃を使用した。。。
P.262:YANA) 
兄は、このシーンを「ストーリーの流れとして必要だった、無邪気で無害なもの」
と捉えているけど・・・わたしゃ、やだねえ。
 
全米ライフル協会、という強大なロビーイストのいる国。
毎年のように起こる銃乱射事件でどれほどの命が奪われようとも、
銃禁止には至らない。世論は盛り上がるんだけどね。

しかし、エホバは銃器の所持を認めない。
このとき(ビデオ収録時)、彼らはマイコーにエホバかアーティストの表現の自由、
どちらを優先させるのか、とせまった。
そしてマイコーは苦渋の末、エホバからの脱退を表明した。
 
ショート・フィルムに見る 「ワル」の定義。

マイケルが使用するBADには何か特別なサブカルチャー的意味があるのではないか、と、私はカッコ付きで「ワル」と表記してきた。
自伝ムーンウォークで本人が語るのは、BAD(歌)のコンセプトはストリート(スラム街)。 メッセージは「強く、良心をもつ人が、(ストリートにおいては)ワルなんだ。  (When you’re strong and good, then you’re bad.)」。 ときにマイケルのシンプルな語りは、行間を読み、その背後に隠された意図を知って初めて意味がわかる。このメッセージもそのひとつ。
「ワル」という記号が意味するものは何だろう。マイケルはどういう意図を込めたのだろう。。。
常々疑問だったが、
〜 マイケルはビデオの中で「ワル」である、とはどういうことかを魅惑的に表現している。
というウィラさんの発言に突き当たった。・・・目から鱗。SFの中で、マイケルはちゃんと「ワル」の定義をレクチャーしてくれていたのだ! いや、正しくは彼女の言うとおり、再定義だろう。Badgoodの反義語で「悪い」ことを意味するのが一般社会の定義なら、マイケルはこの言葉に新しい解釈と意味を与えた。
イメージ 1イメージ 2頭もよく、容姿もいいダリル君。レイシズムのカルチャーではリンチの対象にされるような少年。 
彼がいかにプレップスクールでいい成績を取ろうと、クラスメートと仲良くなろうと、白人コミュニティーの一員にはなりえない。
また、奨学金を得て、明るい未来を手にした彼は、自分の帰属するコミュニティー(ストリート)からは疎まれる存在となる。
どっちつかずのアウトローになってしまったダリル君。一方、スラムで逼塞したように暮らす幼馴染たち。このSFの前半で、マイケルはストリートの少年たちの生態をくっきりと描いてみせる。
トニ・モリソンの小説に描かれているように、歴史的に黒人共同体は互助と連帯で結ばれてきた。それが自分たちの身を守るためであったから。
ストリートで才能を磨き、努力で抜きんでることは、彼らからすれば秩序を乱す「悪い」ことであり、制裁する必要があった。彼らにとって、「ワル」はギャング。喧嘩に強いマッチョマン。だからダリル君に思い知らせてやる必要があった。「お前は堕落したんだ」と。
しかし、スラムを脱出した者も、残された者も、手を取り合うことなしに、心の安寧はない。ダリル君にとって、故郷はあくまでもストリートなのだ。だから故郷に帰省したものの、心のよりどころを得られないダリル君の表情は暗い。マイケルはダリル君を通じて、いまストリートに必要なほんとの「ワル」の定義を示した。
皮肉なことに、思い浮かぶのはマーレー医師。スラムに生まれ奨学金で医学部に入り、医者になった彼は、自分のコミュニティーに病院を開き、地域に貢献した「ワル」な時があった。
「ワル」 とは限りない可能性を追って、帰属のコミュニティーからはみ出した者。強い意思を持つアウトロー。努力や良識をもって、ボーダーを越えた者。それが「ワル」=クール(かっこいい)ってこと。マイケルは新しい定義をストリートにもたらす。
そして、マイケルはストリートに残された少年たちを放って置くことはしない。
イメージ 3SF後半部でMJは踊り歌う。少年たちに向かい、語る(説教する)。
これからきついことを言うけど、明るい太陽のもとで、とにかくまあ、聞いてくれ。
THE SKY’S THE LIMIT. 
(世に出る手段は無限) ― だから、犯罪や喧嘩なんかやってないで、ちゃんと現実を見るんだ。ストリートをもっといい場所にすることだってできるんだよ。。。と。
(歌詞一部) *「ワル」を「クールなカッコイイ奴」と置き換えるとわかりやすいでしょう。

3つ数えるから言いたいがあれば言えよ。
じゃなかったら、黙っているんだな。
ただ口の聞き方には気をつけな。
俺には当に君のやり方はお見通しだからな。
 
なあ、世に出たけりゃ、いくらでも方法はあるんだぜ。
それはほんとだよ。俺を見てみろよ。
でも、友よ。君はなんにも見ちゃいない。
話がおわるまでちょっと待つんだ。
 
なぜなら俺こそワルだから。
君にだってわかってるんだろう。
ワルは俺だってこと。
なんならいますぐ世界中に聞くかい。
誰がワルかって・・・
 
言ったとおりだ。
君は間違ったことをしているんだ。
そのうちに刑務所行きだぜ。
君のその目が嘘だろうって言ってる。
でもそれが君のほんとの姿だ。
だから耳をかっぽじって聞くんだ。
けんかなんかするんじゃない。
君の話は聞くに値しない。
君はマッチョじゃない。
自分の手をかばって、石を投げているだけだ。
 
でもね、世に出る方法はいくらでもある、というじゃないか。
俺たちは明日にでも世界を変えることができるんだ。
この場所をもっとよくすることだって夢じゃない。
もし俺の言うことが気に食わないなら、俺の横っ面を張り倒しな。
 
歌が終わり、コール&リスポンスが終わり、マイケルとストリートの少年は手をとりあう。それはあたかもマイケルが、自分の故郷は君たちのいる場所なんだよ、と語っているかのようだ。
音楽が消え、また無彩色の現実の世界に戻る。フードを被り、おさななじみと逆の方向へ一人立ち去るダリル君の背中はさびしげである。ボーダーを越えた彼を待ち受けるのはまた厳しい現実だ。
おまけ: ロケ現場でのマイケルの表情は生き生きしてるね。ダリル君、大好きです。
イメージ 4

イメージ 5




1. 原文。it's fascinating howhe's redefining what it means to be "bad."

全4ページ

[1] [2] [3] [4]

[ 次のページ ]

松
女性 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

最新のコメント最新のコメント

すべて表示

Yahoo!からのお知らせ

よしもとブログランキング

もっと見る
本文はここまでですこのページの先頭へ

[PR]お得情報

お肉、魚介、お米、おせちまで
おすすめ特産品がランキングで選べる
ふるさと納税サイト『さとふる』
話題の新商品が今だけもらえる!
ジュレームアミノ シュープリーム
プレゼントキャンペーン
コンタクトレンズで遠近両用?
「2WEEKメニコンプレミオ遠近両用」
無料モニター募集中!
ふるさと納税サイト『さとふる』
実質2000円で特産品がお手元に
11/30までキャンペーン実施中!

その他のキャンペーン

みんなの更新記事