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FOREVER, MICHAEL

マイケルジャクソンの音楽とアート。ジャズ・ロック・ブルースなど黒人音楽の歴史とライブ魅録。

書庫THRILLER

http://img5.blogs.yahoo.co.jp/ybi/1/9d/03/matsudavis/folder/970262/img_970262_28748214_8?1332694707
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先日。クリントイーストウッド監督の新作、JERSEY BOYS を見に行った。監督の音楽への愛が溢れた、素晴らしい映画だった。ブロードウェイ・ミュージカルの映画化で、60年代にヒットしたイタリア系の4人グループ、フォーシーズンズの成功、トラブル、そして希望の話。俳優がカメラ目線でナレーションを語るのは最近の流行りなのだろう。 彼らが、ニュージャージーのストリートで不良していた逸話は、永遠の青春映画、サタデーナイトフィバーを思い出させた。
 
イメージ 1サタデー・・が77年12月に公開されると、全世界でディスコブームが到来した。当時はエネルギー危機、東西冷戦、失業率の悪化など、社会は鬱々と逼塞していた。人々はディスコで踊り、しばしの逃避を楽しんだ。ニューヨークのスタジオ54(営業77〜81)には、セレブが集い、THE WIZのロケでラトーヤと当地に滞在中だったアフロヘアーのマイコーもよく訪れた。姉に面倒を見てもらう弟は、敬虔なエホバの信者で、お酒やドラッグ、Flirtingに溢れたスタジオ54では紛れ込んだ子供のようにみえたらしい。
 
ワナビー・・のコーラスを聴くと、サタデー・・に出てくる、トニーの橋を思い出す。自分の生まれ育ったコミュニティーと、おそらくは夢と希望をつかめるかもしれない未知の場所、をつなぐ橋。鬱々と、仲間と無為に過ごす日々。諍い。ギャングとの乱闘。時間を消費するだけの仕事。でも、いつかはあの橋を渡って、向こう側へ行きたい、と思うのだった。
 
I Said You Wanna Be Startin' Somethin'       何か言いたいことがあるみたいだね。 
You Got To Be Startin' Somethin'               言っちまいなよ
I Said You Wanna Be Startin' Somethin'
You Got To Be Startin' Somethin'
It's Too High To Get Over (Yeah, Yeah)            越えるには高い壁
Too Low To Get Under (Yeah, Yeah)                くぐるには低すぎる
You're Stuck In The Middle (Yeah, Yeah)          君は真ん中で右往左往
And The Pain Is Thunder (Yeah, Yeah)             そして、その苦痛ときたら雷のようだ
 
トニーの橋は、近くて遠い。越えるには高く、くぐるには低い壁。家族や自分を崇拝する仲間と離れ、ひとりきりになるには勇気がいる。でも追うべき夢〔プロのダンサーになること〕を見つけたとき、その橋を越えることができた。先達が作ってくれた道を辿るよりも、自分で道を作りたい、と思ったMJ。家族と自分のキャリアとの板ばさみ。家族への思いと重圧。
MJの葛藤はトニーの橋に重なる。
 
この歌はOFFTHE WALL制作時期に作られた。だからアルバム・スリラーが時期的にはポスト・ディスコで、音楽的には、全く新しい革新的なポップを誕生させたのだけど、このアルバム1曲目であるワナビ・・はディスコ音楽の香を残した、いわば移行的な曲に思われる。 OFF THE WALLからTHRILLER へ、2つのアルバムを繋ぐブリッジみたいな曲。OFF THE WALL というベースがあっての、確信的なスリラーの成功。OFF THE WALL で音楽のジャンルの融合を果たし、黒人音楽の金字塔を打ち立てたものの、音楽業界から期待以下の評価で傷ついた。しかしスリラーで世界を掴み、業界のメインストリーマーどころか、救世主になった。その成功を誰も予想できなかった、というけれど、本人は確信していた。 MJのプライドを感じる1曲です。 
 
チャイルドスターから黒人初の人種を越えたアイドルに変貌したMJを、メディアやパパラッチ、グルーピーは追いかけた。メディアは嘘を書きたて、取り巻きは鵜の目鷹の目で、何か利益を得ようとする。グルーピーはストーカと化し、子供の父親だ、と嘘で迫る。 嘘やゴシップのオンパレードを表現するように、ドラムのうねりとホーンがけんか腰で賑々しく、Eメジャー〔ホ長調〕で繰り出される。 
My Baby=「恋人」=心 だと受け取った。
 
1バース
I Took My Baby To The Doctor                 僕は「恋人」を医者に連れて行った
With A Fever, But Nothing He Found        熱があったけど、原因は見つからなかった
By The Time This Hit TheStreet              この話が巷に広がった頃には
They Said  She Had A Breakdown            彼女は神経を病んでいる、と噂されていた
Someone's Always Tryin'                        だれかがいつも僕の「恋人」を泣かせようとする
To Start My Baby Cryin' 
Talkin', Squealin', Lyin'                           うわさし、大声で罵り、嘘をつき、
Sayin' You Just
Wanna Be Startin' Somethin'                 
喧嘩したいだけだろう、と絡んでくる
 
[Chorus]
 
2バース
Billie Jean Is Always Talkin'                     ビリージーンはいつもしゃべっている
When Nobody Else Is Talkin'                   他の誰もが黙っているときも
Tellin' Lies And Rubbin' Shoulders            嘘をつきながら、人の気を引いている
So They Called Her Mouth A Motor          だから人は彼女の口を発動機と呼んだ
Someone's Always Tryin'                        だれかがいつも僕の「恋人」を泣かせようとする
To Start My Baby Cryin'         
Talkin', Squealin', Spyin'                          うわさし、大声で罵り、人を見張り、
Sayin' You Just
Wanna Be Startin' Somethin'                  
喧嘩したいだけだろう、と絡んでくる
 
You're A Vegetable*, You're A Vegetable           あんたは、魂の抜け殻、無力の野菜
Still They Hate You, You're A Vegetable            あんたはいまだ嫌われる。無力の野菜
You're Just A Buffet, You're A Vegetable           あんたは並べられた料理、無力の野菜
They Eat Off Of You,                                       あんたはとことん食い尽くされる、
You're A Vegetable          
                                無力の野菜             

*
「野菜」とは肉体も精神も機能を失った状態。

(interlude)                                                     (間奏)
Hee-ha                                                          ヒーハ!
 

If You Cant Feed Your Baby (Yeah, Yeah)         食べさせられないなら                  

Then Don't Have A Baby (Yeah, Yeah)              赤ん坊を作っちゃいけない
And Don't Think Maybe (Yeah, Yeah)                考えてもみなかったんだろう?
If You Can't Feed Your Baby (Yeah, Yeah)         赤ん坊を食べさせることができないなら
You'll Be Always Tryin'                                    君はいつものように
To Stop That Child From Cryin'                       その子を泣き止ませようとするだろう
Hustlin', Stealin', Lyin'                                    通りに立ち、盗みをし、嘘をつきながら
Now Baby's Slowly Dyin'                                  今や赤ん坊はゆっくりと死路に向かっている
 
 [Chorus]
 
曲のコーダ〔最終部〕はゴスペル。マイケルジャクソン師の説教。
 
Lift Your Head Up High                         顔をあげて
And Scream Out To The World              世間に向かって叫びなさい
I Know I Am Someone                         自分はかけがえのない存在なのだ、と。
And Let The Truth Unfurl                      真実を広めなさい。
No One Can Hurt You Now                   あなたを傷つける人はもう誰もいません         
Because You Know What's True            なぜなら、あなたは何が真実か知っているのですから
Yes, I Believe In Me                            そうです。私は自分を信じ
So You Believe In You                         あなたはあなた自身を信じるのです
 
Help Me Sing It,                                 わたしがお祈りの歌を歌うお手伝いをしましょう。        
Ma Ma Se,
Ma Ma Sa, Ma Ma Coo Sa
 
そして、アイドルからアーティストへ。自由な芸術表現を求めて、あるいは境界線を広げるために、父や兄弟、エホバの信仰と決別しなきゃならなかった。
 
1979:                         ジョーのマネージメント会社を離れる
1979 8・10:          OFF THE WALL リリース
1982 11・30:        THRILLER リリース
1984 12・9:          THE JACKSONS  離脱宣言
1987:                        スム・クリのビデオがきっかけで、エホバの証人離脱
1988:                        ネヴァーランドへ移住         
 
こうして10年近くかけて、ゆっくりと家族のしがらみを断ち切っていった。しかしながら、ネバーランドへ閉じこもり、アクセスが難しくなったKOPへ、メディアの攻撃はパワーアップ。誤解や嘘やゴシップは、真実を捻じ曲げてゆき、いつしかそれが「真実」だと世間に思わせてゆく。                                                                                                               

BABY BE MINE

昨夜はヤンキーズとタイガースの試合をTV観戦。久しぶりに手に汗を握ったわーー。イチロー38歳。ハードワーカーで完璧主義。イチローの活躍を見ると元気がでます。
本日の曲は・・・フレーフレーヤンキーズ、じゃない、ベイビー・ビーマイン。 

イメージ 1

THE LADY IN MY LIFEと対を成す一曲。。。ときにヒーカップが入る直球のボーカルで、恋人になってくれ、と求愛する。 伸びやかな高音のベルベットボイスがすばらしい。
クインシー色が前面にでている曲。これは彼の81年のアルバム、THE DUDE (「愛のコリーダ」が収録されている)に入っていても違和感ないくらい。「おいしい音楽のシチュー」ができるように緻密に計算されたクインシーのアレンジ。華やかで、暖かくて、かっこいい! いろんな音のレイヤーがグループになって、ホーンが全体を引き締める。
がんばって求愛したおかげで恋人になってくれたマイ・ベイビー。 『君の心が変わるようなことはしない』 と、誓ったのに、ビリージーンの一件で、揺れる彼女の心。 離れて行くかもしれない心を取り戻そうと、歌ったのが THE LADY IN MY LIFE。 二人の関係を修復しつつさらに一歩進めようとする、プロポーズの歌。
二人の愛は、ダーティ・ダイアナやデンジャラスでも試されることになるわけで、ストーリーはこの先もずっとつながってゆく。。。
ビリージーンのショートフィルムで、ホームレスにコインを投げるシーンがある。彼はタキシードの紳士に変わる。ここに暗示されているように、スターであるマイコーには人の境遇を変える力がある。それはお金であり名声。ダンスシーンで華やかだったビリージーンは実は下町のうらぶれたホテルにいた。スターの思われ人になれば、セレブになれる。マイコーの周囲にはそんな夢を描く女性たちも多くいたことだろう。歌の中で、マイコーは決してビリージーンを責めていない。一筋の夢にすがって、ワナを仕掛けるような女性にもなんだか暖かい視線を向けている気がする。。。

イメージ 2

それは、ダイアナに代表されるような、アグレッシブなグルーピーに対してもそうだ。厳しく拒絶するのではなく、『マイ・ベイビーが心配して家で待ってるから』と婉曲にやんわり断る。でもそのやさしさが、ダイアナにあなどられる。電話を途中で奪い、「彼はこれから私と寝るから帰んないわよ」とマイ・ベイビーに宣戦布告・・・。 ビデオでは、ステージを終えたマイコーが車に乗り込もうとドアを開けると、挑発的に足を組んだダイアナがいた。
さあ・・・これからどうするの?またもや判断をオーディエンスに委ねている。ダイアナん家に行って浮気するの? それとも『セキュリティーー』って呼ぶのか?私の想像では、こんな夜中に女の子を一人残してはおけないから、とりあえず車で彼女を送ってゆき、また、なし崩し的に家に上がりこんで○○を夜通し・・・という展開です。(○○にはお好きな言葉をお入れください) そう、きっとダイアナは 『部屋に来ない?あなたの好きなディズニーのDVDのコレクションがあるのよ』 と誘惑したのではないかと、想像します。
さて、話を戻して、この曲。訳していていつの間にか、われを忘れ、「勘違いもはなはだしい」世界へワープ。
うこそ。。。妄想ワールドへ

アル日、魔王さまから届いた手紙。読みにくい字(魔王さま、わりと字が○タじゃないですか)だが以下のことが書かれてあった。
 
君の側にいるとき、ぼくは夢を見なくていい。
君が僕を天国に導いてくれるから。
君を抱かせてくれ。
僕は腕の中で君を暖め、君の不安を溶かしてあげるよ。
僕の愛が起こす奇蹟を全部見せてあげるよ。
昼も夜も側にいてほしい。


だからベイビー、僕の恋人になってくれ。(君は僕のもの)
僕は君に全てをささげる。
だからベイビー、僕の恋人になってくれ。(ずっと)
僕たちはずっとこのエクスタシーを分かち合える。
愛を信じている限り。
 
君の心が変わるようなことはしない。(*)
(君はいまでもぼくの心をときめかせる。
ベイビー、僕の恋人になってくれ)

(*: しかし・・・ビリージーン事件でやってしまいました。)

君はぼくが望む未来の全て。
君を抱きたいんだ。
僕の気持ちをわかってくれるかい。
愛の喜びで燃えている。
君にみせてあげるよ。
いま僕の心で燃えている情熱の炎を。
それは決して消えることはない。
 
 
だからベイビー、僕の恋人になってくれ。(君は僕のもの)
僕は君に全てをささげる。
だからベイビー、僕の恋人になってくれ。(ずっと)
君がいるから僕は生きている。
 
朝日が昇るまで僕のそばにいてくれ。
君に誓うよ。いつもと違う夜明けが来ることを。
お嬢さん、天国への扉がいま開かれたのがわかるかい。
天国は僕たちの心の中にあるんだ。
 
僕たちの前に邪魔をするものはなにもない。
(いまでも君にときめくなんて、驚きだ。
ベイビー。僕の恋人になってくれ)
これは未来永劫の愛。
僕を抱きしめて。

僕たちは上昇し、空に触れることだってできる。
最悪の日には光を照らそう。
僕を抱きしめて。僕と君だけ。
こんな風に甘く愛を交わせるのは。
言いたいことはこれで全部だ。

だからベイビー、僕の恋人になってくれ。
(君は僕のもの。僕を愛してると言ってくれ。)
僕は君に全てをささげる。

だからベイビー、僕の恋人になってくれ。
(ずっと。僕にそれがどんなものか見せてくれ。)
君こそ僕が生きている理由の全て。

ベイビー、僕の恋人になってくれ。
(僕を愛してると言ってくれ。)
僕は君に全てを捧げる。
だからベイビー、僕の恋人になってくれ。
(僕にそれがどんなに幸せなことか見せてくれ。)
君は僕にとってこの世の全て。
 
さあ、おいで。(僕を愛してるならみせてくれ。)
だからベイビー、僕の恋人になってくれ。
(それがどんなに幸せなことか見せてくれ。)
 
(ベイビー・ビー・マイン 歌詞訳)
追伸: 俺様の恋人になれ。
 
これって魔王様からのラブレターでっか!?・・・魔王さまの筋張った腕の中・・・。あったかくて不安もメルティングしてゆくかのよう。 一生ついてゆきますんで・・・えっ、エグズダジーも共有していただけるんですかぁ。。。ひゃ〜冷たいお水下さい!


イメージ 3

これね、バブルスと自分を脳内変換して下さいね。。。
アレ?もう一通お手紙が・・・。地球レスキュー隊パインツリー殿?任務依頼 − フーラーとフラミンゴの世話・・・って、なにこれ。 じゃあ、あのラブレターは・・・一体? あて先が『マイ・ベイビーさま』ってなってるけど、誤配ですの?えーもう封を切って、ハイライトまでしちゃったじゃないの。 一体誰なの?マイベイビーって!?キー。。。

・・・とだんだん壊れてきましたので、歌にゆきましょう。


ふぅ・・・。マイケルの発音ってほんと誘惑的で官能的。。。なんにしろ、テンパートンの作曲、クインシーのアレンジ、ブルース・スウェーディエン (お久しぶり!)の録音技術、そしてマイケルのボーカルによるラブソングは最強のレイディーズの味方です。
これは、いわばファンやオーディエンスの皆様へのラブレター。

We Can Share this Ecstasy
As Long As We Believe In Love.
 
魔王さま マイコーの愛を信じていれば、作品を通して、生きる喜びの力−エクスタシーを感じることができる。そして、

Can't You See That Heaven's Just Begun
It's Livin' Here Inside Our Hearts

愛と幸福に満ちた天国は私たちの心の中にある。 愛の力でその扉を開けるのは私たち自身。。。

BILLIE JEAN

ビリージーンとマイ・ベイビーイメージ 1
4シーズンめ突入。第一弾です。今日も長いよ。
16歳のマイケルが恋をしたのは熱心なファンレターを送ってきたファンの女の子。会ったこともなく手紙のやりとりだけのときめき・・・。〔DEAR MICHAEL: フォーエバー・マイケル ‘74〕 
ボーイフレンドのいた女の子を彼から奪ったのは20のとき。元彼にはっきりいわなきゃね、君がもう僕のガールフレンドだってことを。。。とティーンエイジャーのように屈託なく歌う。〔GIRLFRIEND:オフ・ザ・ウォール〕
そして24のとき。一生守り続けると誓った永遠の女性―MY BABY に出会う。。。アルバム・スリラーに収録された2曲のラブソング: BABY BE MINE と
THE LADY IN MY LIFE。 この2曲・・・曲調は違えど、歌詞のコンセプトが、ほとんど一緒。MY BABY への求愛。
大人になったんだね、マイケル。。。と感慨にふけるとともに、またもや疑問が湧いてきた。
なぜ同じアルバムに同様の曲が2曲も含まれ、ともにシングルリリースがないのか・・・。BABY BE MINEの代わりにBEHIND THE MASKがよかったんじゃないの?とか、ね。
でも、マイケルとクインシーのことだ。なにか、仕掛けや意図するところがあるに違いない。。。今回はその謎に挑戦。
まずは、つらつらとスリラーのセットリストを眺めた。
·        Wanna Be Startin’ Somethin’
·        Baby Be Mine
·        The Girl Is Mine
·        Thriller
·        Beat It
·        Billie Jean
·        Human Nature
·        PYT
·        The Lady In My Life
コンセプトアルバムにおいては曲の順番にも大きな意味がある。。。
すると、2曲にはさまれて、浮かんできたのが、ビリー・ジーンだ。
マイケルの曲に、この後もたびたび登場してくる永遠の恋人。マイ・ベイビーと呼ばれる人。その人に向けたラブソング2曲にはさまれたビリー・ジーン。そこで想像されるのが、このビリー・ジーン事件の前と後で、ふたりの関係が微妙に違ってきたのではないか?ということ。マイケルのその人に対する愛は変わらないのだけど、〔マイケルが浮気した〕と思い、傷ついた恋人は気持ちが揺らぎ、疑惑のまなざし。
だからマイケルは駄目押し的に、求愛を繰り返した、と考えられる。もうこれ以上できないほど気を使って、切なくなるようなボーカルを駆使。僕の愛を信じてね、と内省的に力を込めて歌う。キング・オブ・ザ・ロマンスのQさまのアドバイスもあったことでしょう。「ここで、あきらめちゃだめだ。押して引いて揺れる女性の心をしっかりゲットするんだ!」みたいな・・・。
一方、ビリージーン事件前のBABY BE MINEでは、求愛を高音のベルベットボイスでのびのびと歌い上げている。君の不安も僕の腕の中で溶かしてあげるから、俺さまの恋人になれ・・・なって下さいと、自信に溢れている。 愛の喜びを表すかのように、祝福のファンファーレも高らかに鳴っている。
あまりに有名すぎてスルーしてきたビリー・ジーン。自分で驚いたけど、私の書庫スリラーに今回はじめての登場なのね。この機会に訳を試みました。

 ビリー・ジーン

彼女は映画の一シーンから抜け出た
ビューティクウィーンみたいだった。
彼女から踊りに誘われたとき
かまわないけど、何故ぼくなの、って聞いたんだ。
彼女はみんなの前で踊るんだから
僕じゃなきゃだめなんだって答えた。

 
彼女はビリージーンだと僕に名乗った。
ダンスフロアーに登場するや、皆、振り向き
踊りの相手が自分だったら、と夢見るような目つきをした。

 
ぼくはいつも人から言われていた。
自分の行動に気をつけて
女の子たちを泣かせるんじゃないよ、ってね。
母親も僕に忠告した。恋愛には注意しなさい。
慎重に行動しないと嘘もほんとにされてしまうよ、と。

 
ビリージーンはぼくの恋人じゃない。
彼女はぼくがこどもの父親だといっているけど、
その子はぼくの息子じゃない。

 
40日もの間、昼も夜も法律は彼女の味方だった。
でも彼女がそうしよう、と思ったら誰が
その罠に抵抗できるっていうんだい。
僕たちはみんなの前で踊ったわけだし。
だから今度はぼくがアドバイスするよ。
いつも2度考えることだ。(行動する前に)
もう一回考え直すんだ。

 
彼女はぼくの恋人につげ口した。
僕たちが夜中の3時まで踊ったことを。
そして僕を見、泣いている赤ん坊の写真を見せた。
彼の目が僕にそっくりだって言ってね。

 
さあ、みんなの前で踊り続けましょうよ。
(*ビリージーンの勝ち誇った顔が浮かびます・・・)

 
ぼくはいつも人から言われていた。
自分の行動に気をつけて
女の子たちを泣かせるんじゃないってね。
彼女は僕に近づき、側に立った。
香水の甘い香。
あとはなし崩しさ。
彼女は僕を部屋に呼んだんだ。(*)

 
ビリージーンはぼくの恋人じゃない。
彼女はぼくがこどもの父親だといっているけど、
その子はぼくの息子じゃない。
 
(繰り返し)
 
(*)  浮気は事実のように思われるけど、何もなかったのかもしれない。彼女のプロット通り、夜更けるまでふたり衆目の中で踊ったのは事実。彼女の部屋に呼ばれたのも事実。 本人は子どもは自分の子じゃない、と主張しても、二人の間に何もなかったとは否定していない。このあたりのあいまいさはわざとで、判断を聴き手に委ねたのでしょう。
 
 
誘惑され、ビリージーンの部屋にのこのこ出かけて行った・・・恋愛中のマイ・ベイビーにしてみたら、浮気があったにせよ、なかったにせよ、やはりショック。こどもの認知で裁判沙汰になったことよりも、その行為自体に傷ついたのでしょう。しかもダンスと香水で幻惑させられたなんて言い訳、この先が思いやられるわ・・・と思ったかどうか。
歌詞の世界から透けて見えるに、このマイ・ベイビーは浮気発覚後もマイケルをぼこぼこにするような気の強い女性(たとえば、タイガー・ウッズの元妻のような人)ではなく、彼の愛と庇護を必要とするような可憐ではかなげな女性のようですね。日本女性で例えれば、源氏の紫の上。。。
そういうコンセプトの流れのなかで、あらためて THE LADY IN MY LIFE の歌詞をみると・・・。
・・・今宵は夜通しで愛し合おう、とか、行かないでくれ、側にきて、僕の鼓動を聞いてくれ、とか、素敵な気持ちにさせてあげるから、などとうっとりするような科白のオンパレードが、なにやら必死になだめすかしてご機嫌を取るマイケルの姿を髣髴とさせ、おかしみ(シリアスな状況での諧謔) がこみあげてくるのだけど、いかがなものか。
マイケルの愛を信じてついてゆくのか、信じきれずに彼の元を立ち去るのか、マイ・ベイビーは試されている。
ビリージーン事件の後。マイケルはマイ・ベイビーに対して一層愛しく大事に思う気持ちを募らせている。それが「今宵君を永遠の人にすると、約束する」というフレーズになっている。つまりプロポーズ。しかし一方で魔王・マイケルはこの愛しい女性にハードシップを与えるのである。アルバムの最後に置かれたことで、マイ・ベイビーはオーディエンスの心にもしっかり刻まれることになる。(だからコンセプトアルバムを買うことが大事なのよね・・・。) そしてファンは後々知ることになる。 この女性がこれから幾たびも、アグレッシブにマイケルを誘惑する女性たちに〔嫉妬〕という感情で苦しめられることを。
そのとき、

We Can Share This Ecstasy
As Long As We Believe In Love
 

という ( BABY BE MINE 1ST コーラス) の一節がリンクする。
愛はいろんな受難を得て試される。そしてそれに負けないで、愛を信じている限り、このエクスタシー(生きるための原始の力・喜び)を分かち合える。マイケルの生涯のメッセージは恋愛の歌を通しても語られている。恐るべきことに、マイケルのこの恋愛プロットは後のバッドやデンジャラスのコンセプトに繋がっている。なんと壮大な構想であることか。
マイコー、やはりあなたは魔王さま。やさしさと思いやりの心の中に毒のような厳しさをお持ちです。そして、それはステージでエクスタシーを喚起する媚薬。
それにしても2曲ともリリースされなかったのは、何故?? 2曲対だからシングルでは意味がないからなのか・・・・。


We Can Share This Ecstasy
As Long As We Believe In Love
 


イメージ 2

ちょっと魔王さまっぽい顔で、誘惑のまなざし。

LADY IN MY LIFE

イメージ 2レイディーズのための歌   
プリズムのようなマイコー。こんなときめき全開のラブソングも歌うとは。。。アジャンタの菩薩さまも想像できなかったであろう。実は最近になって初めて聴いた(スリラーを持っていないから)。 ビートとリズムで聴かせる華やかな楽曲が好きなので、何となくスルーして来た。「スローなバラードにしてくれ」とQさまは言ったのだろうか・・・。
ソングラィティングはスリラーを書いたロッド・テンパートン。プロデュースはもちろん「官能のアレンジはまかさんかい」のQさま。52秒めあたりに入るミューテッド(押さえた音の)・トランペットが祝福のファンファーレをひそやかに奏でる。
マイコーのボーカルを堪能できる一曲。くるくると繰り返される転調、ボーカルの音域の広さ。ささやくように、そして情熱的に、変幻自在なトーン。ブリッジでのスタッカート。声の質感も、多彩である。さらさら衣擦れの音を感じさせたり、ディープで肉感的だったり。低い声から流れるようなファルセットへの移行は上昇するような浮遊感を与える。ボーカリスト・マイコーの力量が発揮されたショーケース。とても好きな一曲となりました。。。
マイケルが作った最初の曲はDON’T STOP ‘TIL YOU GET ENOUGH。マザー・キャサリンもぶっ倒れたエクスタシーな歌詞。マイコーは芸術=エクスタシーと捉えているので、官能も芸術を表現する大事な要素。 そして、一見セクシャルなイメージとはうらはらに、自分が満足するまであきらめずに「何かを」とことん追求しろ、という青少年・よいこの皆さんに向けた健全な意図がある。・・・
しかしながら。「僕は熱い蝋燭の蜜のように溶けてゆく・・・I’m melting like hot candle wax)」というフレーズを聴けば、やはり胸はどきどき、なにやらどぎまぎ。。(実際には「マイケル、すごすぎ・・・」とつぶやくのだけど)そんな風情でイヤホンをつけていたら、人は何を聴いているのだろう?と妖しく思うに違いない。
それから数年。マイコーはこんな濃密なラブバラードを歌ってくれた。そして思い浮かぶのが、蝋燭のように解けてゆく、僕・・・なのである。
セクシーバイタミンも不足がちな夏にぴったりの妖艶な曲じゃ、ありませんか。 暑い夏こそホットなアイテム。訳していてほんとに素敵な気分になりました。イヤホン( マスト・アイテム)でボリューム上げれば完全に二人の世界。。。ほら、今宵一夜、世界はあなたとマイコーのために。5分間のファンタジーとエクスタシーが夜の帳とともに訪れるのです。側においで。素敵な気持ちにさせてあげる〜と誘う魔王さま。 一生の思い出を作ってくれるそうです。

イメージ 1今夜。暗闇はやってこないよ
僕たちの愛が輝くからね 
(夜を照らしながら)

僕の気持ちを信じて
楽園で会おう (今がそのとき)         
君は僕にとってこの世の奇跡        
宝物のような時間は永遠
 
ほら。僕の鼓動をきいてごらん
僕の隣にきてごらん
夢で満たしてあげる
素敵な気持ちにしてあげる
ベイビー

ずっと君を愛するよ
もっと愛してゆくよ
だから今夜約束する。
君は僕の永遠の恋人だと。
 
(ブリッジ)
優しく包んであげる
今宵を一生忘れない思い出にしよう
僕は君の甘い抱擁がほしい
二人の心がエクスタシーの鼓動で
幻想の世界へと導かれるまで
さあ、おいで
 
君をあたためてあげるよ
夜の帳を通して
僕の愛で君を抱かせて
素敵な気持ちにさせるよ

だからベイビー
僕たちが年をとって白髪になっても
ずっと君の事を愛するよ
もっと愛してゆくよ
君は永遠の恋人だから
 
僕の側にいてよ。いてほしいんだ
君が必要なんだ
どこにも行かないで
(君を抱かせて)
 
*以下美しく切なく甘いハーモニーがレイヤーとなって愛の営みのごとく延々続く・・・。そしてふたりは蝋燭の蜜になって溶けてゆく。

 

 
クレジット:

Base:  Louis Johnson
Drums: Jeff Porcaro
Electric piano:  Greg Phillinganes
Guitar:  Paul Jackson Jr.
Synthesizer:  David Paich and Steve Porcaro

*ECSTASY の定義: (カコログ
http://blogs.yahoo.co.jp/matsudavis/12084658.html までどうぞ!
 
プロデューサーQが語るアルバム・スリラー制作の舞台裏。デッドラインも押し迫り、プレッシャーのなかQの必殺仕事人振りが冴える!
 
クインシー自伝より。

Qはマイケルを「スメリー」と呼ぶ。マイケルがある曲やビートを気に入った時、それを「ファンキー」というかわりに「スメリージェリー(Smelly Jelly)」とよぶからだった。
 
スリラー制作と同じ頃、映画E.T.のストーリーブックとサウンドトラックも平行して進められていた。アルバムの制作期限まで2ヶ月あまり。すべては超高速で進めなくちゃならない。ロッド・テンパートンたちの作品600曲を聴き、中から1ダースあまりを選んだ。それでもロッドは自分のオリジナル曲33曲をさらに持ち込んできた。完全なデモ版に仕上げ、曲のタイトルもそれぞれ1025ほども用意していた。
 
マイケルもマシンのように曲を書く。OFF THE WALLでは3曲。THRILLERでは4曲。BAD6曲。Qはマイケル版 “My Sharona” を書くようにもう何ヶ月もうるさく催促していた。業を煮やしたQはマイケルの自宅に行き、言い放った。

「スメリー。もうあきらめるんだ。汽車はもう既に駅を発ったんだ。」
「クインシー。この曲を聴いて欲しいんだ。でもまだ完全じゃない。ボーカルも全然いれてないんだけど」
ふたりはすぐにマイケルのスタジオに入り、エンジニアを呼び、ボーカルを重ねていった。それがBEAT IT
 
レコーディングのデッドラインまで押し迫ったある日。ロスのウエストレーク・スタジオで仕事をしていたQたち。カリフォルニアの健康そうな女の子が外を歩いていた。スタジオの窓は通りに面してミラー仕上げになっている。(注:中から外は見えても外から中は見えない) 彼女はドレスを頭の上まで巻き上げ、その下は何もつけていないようだった。ロッドとブルースとQ3人は目を見張った。プレッシャーの真っ只中。3人は窓辺にぼんやりと立ち尽くしていた。振り返ってマイケルを見た。彼は敬虔なエホバの証人の信者だったから、コンソールの後ろに隠れていた。
 
覗き見をしていたのはこの二人と・・・イメージ 1















ロッド・テンパートン。イメージ 2
 
 









最後のミックスと修正とダビングに取り掛かる。サンプル版の提出期限当日の朝9時までかかった。3つのスタジオを使用し、マイケルのビリージーンのボーカルに最後の修正を加えた。そしてブルースが生ドラムの最終録音に魔法を加えた。

Qはエディ・バン・ヘイレンを別の小さなスタジオに連れて行った。そこには彼がソロギターを演奏する為に2つの大きなギブソン製のスピーカーと1ダースのビールが用意されていた。その同じスタジオではBEAT ITのベースラインをグレッグ・フィリンゲインズのミニ・シンセサイザーの音とダビングする(注:つまり、ベースラインとシンセは同じ音符(notes)で録音されている) 作業が行われた。
 
ブルースはこのリズム・トラックを16トラックテープで録音し、それからデジタル録音をしたいと考えた。あの「贅沢なアナログのリズム音」を得るために。Qたちはそのやり方を 「太い足にタイトスカート」と呼んで多いに気に入った。ブルースはマスターテープを作成してもらう為、そのテープを持って業界最高の技術を持つバーニー・グランドマンのスタジオに出掛けた。
 
その間、Qはマイケルを自宅に連れて行き、書斎のカウチに寝せて毛布をすっぽりかぶせた。9時から3時間仮眠させ、12時にまたスタジオに戻らなくてはならない。 これから産声をあげるアルバムのサンプルを試聴するのだ。スタジオではラーキン・アーノルド (エピックレコードの黒人音楽部門のボス) がシャンペンを開けながら、最終サンプル盤が届くのを首を長くして待っていた。
 
その瞬間がやってきた。ロッド、ブルース、スメリー、スメリーのマネジャー二人、そしてQは座ってテスト盤に聞き入った。しかしそれはめちゃくちゃだった。最高の出来の曲と演奏とボーカル、ミックスと音のダビングの結果得たものは「24カラットの音の“ウンチ”」だった。スタジオは震撼となり皆退散していった。
 
たくさんのものを詰め込み過ぎたのだ。ラジオで目立つには大きくて肉太のグルーブと音が必要だ。だから片面28分のレコードになってしまった。現実的にビニール盤は19分が限界なのだ。

マイケルは滂沱の涙・・・。最終ミックス盤のデッドラインはその日の午後。ラーキンに

「この状態ではレコードは出せない」

プロデューサーQはそう宣言した。彼らは2日間の休暇をとり、続く8日間でひとつひとつ曲のミキシングをやり直していった。ロッドはTHE LADY INMY LIFEから1バースをカット。スメリーはBILLIEJEANの長いイントロを短くすることにしぶしぶ同意。そうしてようやくアルバムは完成した。
 
THE GIRL ISMINE―こんなに時間がかかっているのに、シングルリリースはこれだけ?とメディアで言われ始めていた。(注:次のシングルカットを時間を置かずに出すことが彼らの戦略であった。) THE GIRL IS MINE は導入部にすぎないんだよ。「燻製の鰊(red herring)」 (注:人の注意をメインのものから逸らすために使われるもの) に過ぎないんだよ。― 続くシングルのビリージーンとビートイットが並んでチャートのトップを占めたとき、ようやくそのことを証明した彼らであった。
 
追記:

スリラーのために集められた綺羅星ミュージシャンたち。「黒帯のマスター級」の実力を持つ彼らとは友人というだけでなくマフィアのような強い絆をもつ家族のようなもの。

Rod “Worms” Tempertonークラシカル音楽家の直感力をもつソングライター。美しい旋律と対位法の才能。
Bruce "Svensk"Swedienー音楽エンジニアのグル。50年代からの知り合い。カウントベイシーとの仕事仲間。
Greg "Mouse"Phillinganesーアーティスティックなキーボード奏者。
Jerry Heyー怪物君みたいなキャラのトランペッター&アレンジャー。
Louis "Thunderthumbs"Jhonsonーフェンダーベース担当。Qのバンドのツアーメンバー。
Jhon"J.R.".Robinsonーバークリー音楽大学(Qが一時在籍したボストンのBerklee大学)の同窓生。ドラマー。
Paulinho Da Costaーブラジル出身。パーカッション担当。

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