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歴史学エッセイ

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485. 持ち逃げのおそれ

485. 「持ち逃げ」のおそれ
【質問】
業務委託(コンメンダ制)は当時にしてみれば画期的なことだと思うが、持ち逃げなどの詐欺行為はなかったのか? ふつうに考えて、どんな関係性においても借りた金を持ち逃げされるリスクを完全になくすことはできないはずである。持ち逃げを思いとどまらせるような実利的なインセンティブはあったのだろうか?
手形などは信用関係がなければ成り立たないものであるため、どうやって普及させたのだろうか?
 
  【回答】
 この論考に見られるような持ち逃げに関する危惧を何人かの受講生が表明していた。筆者は「手形などは信用関係がなければ成り立たない」と言う。まさにそのとおりであり、信頼のおけない者におカネの運用を任せるようなことは考えられない。また、この信用というものは、普及しようとしても簡単にできることではない。だとすると、どういう条件のもとで普及したのだろうか。
危険を冒してでも金銭の増殖にありつきたい強い願望をもつ者の存在が前提となる。しかも、この者にとっては利殖のために業務委託以外の方法を見つけることができないことが条件となろう。そして、彼の強い願望の実現を手助けする状況が整っていなければならない。たとえば、戦争切迫のような不安状態のもとでは商業取引はすんなりいくもではないだろうから、平和であることが望ましい。また、インフレやデフレがなく貨幣の価値が変わらず購買力が一定していなければ、貨幣での取り引きはこわい。インフレやデフレが横行すると、人びとは貨幣を持ちたがらず、むしろモノを持ちたがる。これらが第一の条件をなす。
そして、日ごろから見知っている商人への信頼感があることが第二の条件である。商人が旅から帰ったときに正直かつ正確に会計報告をなすことが前提になるのである。この条件が揃わないかぎり、業務委託制度は成り立たないだろう。貸主側がカネを商人に委託する際に安全のためになにがしか担保をとることも当然考えられるが、もしそうなると、利益が出た際にその4分の3をも貸主が取得することはできないことになるだろう。なぜならリスクが小さすぎるからだ。
中世ヨーロッパでは上記の2条件が揃っていたのである。銀行制度や為替制度もまだ完全なかたちでは備わっていないもとで、これ以外に投資の方法はなかったのでる。
 ここで、抵当付き金貸しについてこれまで不問に付してきた事柄を一つだけ付け加えておこう。抵当を取ったうえでの金貸し行為は教会組織の一部である修道院がしばしばおこなった。これを見た教皇庁は禁止を命じている。「聖書」「利をとっての金貸し行為は許されない」と明記されている以上、カトリック教会組織はこのタブーを破ることはできなかったのだ。必要とタブーの矛盾を突いたのがユダヤ人による高利貸しである。


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