matsui michiakiのブログ

少年老い易く学成り難しをしみじみと感じています

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431. ヨーロッパにおける環境保護
 
【質問】
ヨーロッパは環境保護に成功すると思われますか?
 現代の欧州は環境保護政策に熱心です。ドイツでは「緑の党」が力をつけており、ゴミの分別に喧しいと聞きます。
 一方、ひるがえって歴史を眺めてみると、欧州は環境破壊に熱心でした。先生の仰るとおり、自然破壊をためらわなかったために森林率は日本の3分の1ないし8分の1です。近現代になっても改まらず、「人間>自然」という教義で、キリスト教を認めていなかったはずの共産主義支配下の東ドイツでは鉄鋼業などのために俗に《黒い三角地帯》と呼ばれる状態を生み出してしまいました。
歴史を振り返ると、欧州による環境破壊には歯止めをかけるのは難しいのではないでしょうか。
 
【回答】
 良い質問にちがいないが、小生は最近のヨーロッパにおける環境保護の問題については疎いため、十分な回答ができないことを予め断っておきたい。
西洋文明の歴史は自然破壊の歴史といっても過言ではない。キリスト教神学が森や湖沼に精霊が棲むという信仰を否定したため、こうした自然を畏敬する立場からの森林保存の精神はまったくない。ヨーロッパを地域的に見て文明化の順番に自然破壊(特に森林後退)が進んだことは授業でも述べた。
なぜそうなったかというと、当時は広い意味での熱源としての天然資源には土地と森林しかなかったからである。土地は穀物栽培や家畜の飼養において不可欠のものである。人口が増えれば不可避的に耕地を増やさねばならない。当然、埋め立ても考えられたし、じっさい部分的にはなされたが、トラクターのない時代では費用がかかる。そこで、目が付けられたのは森林伐採である。ところが、森林は家具・木造家屋の資材としても、また、薪や炭などのエネルギーの供給源としても重要である。伐採したあと植林してもすぐには再生しない。ここに、畑か燃料かというジレンマがあった。薪や炭を増やすために森を伐採すると、ここを家畜放牧のための入会地として使っていた農民にとって飼育場がなくなるというジレンマがあった。
中世においては石炭や石油、天然ガスの利用はなされていない。地面に露出していた泥炭または褐炭こそは使われたが、まだ本格的な利用ではない。なぜなら、石炭(泥炭)の燃焼時に排出する臭気と炭酸ガスの公害がひどかったからだ。泥炭は燃焼温度が低いだけでなく、とてつもない排気を出したのだ。石油は19世紀半ばまで発見されていない。発見されてもその精製法がわからず、滓として沈殿した部分をアスファルトの代用として土固めに使われるほかは、上澄みの油分は捨てられたというウソのような挿話まで残っている。
自然保護の問題に立ち戻るとして、最近脚光を浴びている「緑の党」だが、ドイツで根強い影響力をもつ。よって、ドイツでは火力発電所は今やほとんどなく、原発は廃棄されつつあり、風力発電のウェイトが大きいと言われる。原発の電力は隣国のフランスから買っている。電力を隣国から買うとなると、送電の途中で空気放電によりかなり失われるわけで効率は低い。ヨーロッパで家庭用電圧は220ヴォルトが基本なのは電力の効率利用のためだ。電圧が高ければ高いほど放電で失われてしまうことが少なるのだ。かくて、ヨーロッパでは電力料金はきわめて高い。「火力発電はダメ、原発はもっとダメ」こうした状態は一種の《ヤセ我慢》であり、原発の再登場を願う声も今や大きくなっていると聞いている。風力発電も騒音や安定供給の点で問題があるとのこと。
上掲文に東ドイツの話があるが、評者は19899月初、列車で西ベルリンに行く途中、車窓から崩壊直前の東ドイツの農場、街並み、交通機関、鉄道駅を観察したことがある。文字どおり経済的に行き詰った状態をこの眼で確かめることができた。全般に緑地に乏しく、赤さびた大地の連なりという記憶を鮮明にもっている。ところどころで農場の真ん中に立つ大規模な粉挽工場に出くわしたが、その施設が古色蒼然で、全体がさびで覆われていた。
また、鉄道駅を通り過ぎるたびに、煤けた駅舎、穴だらけの屋根、割れた電灯、そしてコンクリートが割れ、そこから草が生えているプラットホームを目撃した。道路の舗装はほとんどなされてなく、数少ない車はトラックにせよ乗用車(ボール紙屋根の車「トラバント」という)にせよ、いかにも老朽化し、煙を出しながらのろのろ走るのに精一杯という代物だった。
あまりに単調な景色に飽きたらしく、いつしか眠りこけてしまったが、車の音とクラクション音で目を覚ますと、そこはまさしく西ベルリンであり、その活気ぶりと街の色の多彩ぶりと人通りの多さに驚かされた。小生が西ベルリンに入ってからちょうど2か月後にベルリンの壁が崩落するのである。
 欧州による環境破壊には歯止めをかけるのは難しいのではないか」と論者は言うが、こと西欧に関するかぎり、環境保護の試みはかなり成功しているといえる。たとえば、ドイツ、フランス、ベネルクス、イギリスはいずれも森林保護に神経を使っており、当局の許可なしの伐採は禁じられている。しかも、伐採したあとは必ず植樹しかも整然と樹木が林立するよう等間隔にが義務づけられている。
日本といちばん違う点は、間伐が定期的におこなわれ、足の踏み場もないジャングルのような状態にないことである。特に都市近郊の森林となると、文字どおり公園を造成するに近い手の加わり方がふつうになされえいる。散策や遊歩のための小径すらも見事に整備され、墜落を防止するため、必ずといってよいほど防護柵と石段が誂えられている。
 上記の4か国には原生林というものは存在せず、すべてが植生林なのである。そうしたことが可能なのは、ヨーロッパの土壌は一般に痩せているため、少しばかりの手入れで済むからだ。高温多湿の気候で肥沃な土壌に富む日本ではすぐに樹木や草が密生してしまうことが考えられる。日本の林業は採算がとれないところから廃れており、山と森の荒れようは尋常のものではない。林道を通さないと、伐採後の材木の搬出や間伐のための立ち入りはまずできない相談である。また、間伐がなされないため、不自然に曲がってしまった樹木は建材になりにくい。日本の森林率67%は世界有数のもの(第三位)と誇ってばかりはおれないのである。

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