松原動物病院 獣医奮戦記

大阪府松原市の松原動物病院から発信中!!獣医の視点と奮闘を記します!!

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医者の裁判

先日、テレビで人間の医者のドキュメントを放送していました。

産婦人科の医師で、キャリア10年になろうかという医師が

「今まで訴訟にならなかったのは、幸運だと思います。いつかは訴えられるでしょう。」

と悲しそうに話をしていました。



経験談では、帝王切開で無事に生まれて帰って行った患者さんが、次の日には

「なぜ帝王切開をして傷を残すようなことをしたんだ!!」

と、ビデオ撮影用カメラを片手に病院にクレームを言いにやってくることもあるそうです。


出産は

「新しい家族ができるという希望が大きい」

ので、希望と結果の落差が大きく、やり場のない怒りが訴訟になるそうです。

確かに明日は出産で、家族が誕生する!!と思っていて、事故で子供も母も死亡となると

やり場のない怒りが湧いてくるのも理解はできます。


ここで裁判になってしまうのですが、

裁判では「医学」といものを本当に裁判所は分かってくれているのか??という疑問があるそうです。

「胎児が自然分娩で生まれてこなくて、難産で胎児が死亡した」

という事実に対して、結果論的に

「自然分娩ではなくて、もっと早く帝王切開するべきだった。」

と、裁判所は断罪します。

ですけど、始めから自然分娩すると死亡するなんて未来のことは分からないわけであって、

医師は妊婦の状態と胎児の状態を見ながら、最善の策は何かを考え続けているわけです。

その結果として、これ以上自然分娩は無理だと判断して帝王切開に切り換えているはずです。



「たら、れば」の話になりますが、帝王切開を実施した結果、母子ともに死亡すれば、

「自然分娩で様子を見るべきだった。」

なんて事を裁判で言われるのは明らかであって、確かにこれは医師を辞めたくなるのも分かります。


牛乳を点滴したり、患者の名前を間違えたり、逆の足を整復手術したりするのは

明らかな「医療ミス」と言えると思うのですが、

ある時点で「リスクを伴った決断を強いられる」という医学的な問題は、

それが間違っている!!とはっきり言えるものなのでしょうか??


結果として死亡するということは医者の判断ミスといえばそうなるのでしょうが、

ギリギリの決断で、良くなることもあれば悪くなることもあります。

裁判で、「お前は間違ってる、賠償しろ!!」

と言われれば、医者が決断するのも嫌になるに決まってます。


我々獣医も決断を強いられる機会は数限りなく多いわけで、

医者の状態を対岸の火事とは考えられません・・。


インフォームドコンセントが叫ばれ、

危険性や見込みを説明した上で、患者に判断をしてもらう(同意をもらう)

と言われますが、どんなに説明しても医学的知識がかなり豊富でない限りは

どうするのが一番良い方法なのかなど、分かるはずもありません。

「説明されても、どうすればいいのか分かりません!!あなた医者でしょ!!!」

と怒られることも多々あります。

麻酔は死亡リスクでは一番の上位に上がってきますが、状態が悪くても病気と闘う場合もあれば

安全性を重視して麻酔を使わない場合もあります。

機械的に「ここからは麻酔をしない」というルールは存在しないのですから・・・。



医師の友人に話を聞いてみると

「無事に生まれてくるのが当たり前で出産は安全と思われては困る。危険なことなんだよ!!

 実際に昔は100人妊婦がいたら、50人は母子共に無事、25人は母のみ無事、25人は母子とも死亡

 だったんだよ。(記憶が曖昧ですが、おそらくこんな数字だったと思います)」

と言われて、出産を甘く見るのは現代人の勘違いなんだな。と考えさせられました。



何が言いたいのか良く分からなくなってきましたが、

命がかかった緊急事態の場合はゆっくり説明・相談する時間はない。

未来は見えない。

いま決断するしかない。

という状態がいかに苦しく、厳しい判断なのか良く考えて下さい。

失敗すると裁判。なんて罰がついているんですよ・・。

人間が正気を保てるストレスの限界を振り切ってると思いますよ・・。


裁判するのが悪いと言っているわけではありません。

ただ、同じ命を預かる職業として、医者の気持ちが分かるので・・。

医者が、夜中に頑張って、ヘトヘトになって、悩み決断した結果が

罵声と賠償金請求と社会的地位の剥奪などモチベーションが上がるはずもないです。

どんな結果であっても、

「頑張ってくれて、ありがとうございました」

と、感謝されることが、医者にとってもモチベーション??

なんというか、医者をがんばって良かった!!と思える瞬間だと思うので。

どんな結果でもというのは、医者側のワガママかもしれませんが・・・。。。

良かれと思っていつもやっているのですが、うまくいかないのが現実なんです・・・・・。

誰かに文句を言われなくても、担当医はいつも、誰より、傷ついて悩んでると思いますよ。


獣医でも裁判が多発してきています。

良くない結果でも、受け入れてもらうには、やはり説明や信頼関係なんでしょうね。

信頼関係は急患で運ばれてきた患者にはどうにも対処できないのですが・・。

「医者は神様ではないので全ては助けられないし、未来はわからないのだよ」

と、学生時代に先生から言われたことが頭をよぎります。


お医者さん、応援します!!(個人的に)

閉じる コメント(2)

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大変ありがとうございます
獣医なればこそ同じ様な局面になりますものね。

一昔前は多くの国民がこう言う風に考えてくれていたのだと思います。信頼関係を取り戻すには今しばらく時間が掛かるでしょうね。

お互い襟を正して、毅然と対応する事も必要でしょうね。

2008/7/26(土) 午後 0:44 [ koredeiino345 ]

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ブログ読ませていただきました。
裁判官のお話など、考えさせられる内容ですね。

「何もかも検査をすればいい」というのは
本当に結果論で、それを裁判で言われると嫌になると思います。

医師という立場からの話は医学の真実を示すようで興味深い内容ですね。本当に医師の皆様、応援しています!!!

2008/7/26(土) 午後 11:55 [ MATUBARA Animal Hospital ]

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