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つづきのお話です。
owner「もしもし、うちの柴が寝込んでるんです。食欲もないし、どうすればいいですか?」
vet 「できるだけ早く往診に行くので、毛布や湯たんぽで暖めてあげてください。」
なんとかお昼の時間帯に様子を伺いに往診に出かけると
犬小屋の中で毛布にくるまれている柴がいました。
問診をとりながら、触診を行うと明らかに冷たい・・・。
(だめだ、ここでは処置ができない。このままでは死ぬ)
と判断し、飼い主に病院に連れて帰って処置を行ってみることにしました。
「このままでは死ぬが、処置しても体力が持たないかもしれない。」
飼い主にはそう伝えるしかありませんでした。
病院に帰って、状態のデータ整理を開始します。
意識は沈うつ。腹水は貯留している、胸水は少しあるか?体温は34℃か冷たいな・・・。
脱水は7%くらいか、貧血はやや軽度にある。削痩が進行しているな・・。
フィラリア症で右心不全が進行して、体力が無くなった可能性が高そうだ!!
と、データを見れば分かるのですが、獣医の苦悩の開始でもあります。
治療すべきか、安楽死のお話をするべきか。
獣医師としては安楽死はしたくありません。
自分たちがあきらめれば、そこで可能性が無くなってしまうからです。
このまま治療しても状態が良くなるのはかなりの困難を伴う。
体温をゆっくり復温させねば近い将来に死がやってくるのだろう。
意識レベルが低下してきており、昏睡に近い状態で維持しなければならない。
胸水の影響で、呼吸回数が増加傾向にある。
回復させるには費用が莫大にかかる。
この状態では安楽死という選択肢もお話する必要がある!!
と、自分は考えました。
もちろん飼い主が「諦めない」を選択すれば全力で応えるつもりです。
だが、お金は無限にあるわけではなく、ペット保険にも加入していません。
どこまでできるのか、どこまでやるのかはとても重要で厳しい決断を迫ることになります。
安楽死・・・。
獣医としても苦しいお話であり、場の雰囲気を考えながらお話しする必要があります。
いつも安楽死の話をするわけにもいかないし、タイミングを逃すと動物が苦しむことになります。
自分としては安楽死の場合、飼い主との信頼関係は非常に大事であると思っています。
「色々な可能性を模索した上で、考えた末に安楽死を選択した」
という形であってほしいと願います。
獣医も人間なので、軽い気持ちで安楽死を実施しているわけではないのです。
ただ、安易な判断で安楽死を選んでほしくないが、その選択肢を説明する義務が獣医にあると思います。
(注意)これは一人の獣医師としての自分の意見です。色々な考え方があり、正解はないでしょう。
翌日になっても状態改善がないため、飼い主と討論の末、安楽死ということになりました。
「先生が安楽死という選択を示してくれたので、苦しまずに安らかでした。ありがとう。」
自分としても救われる思いがしました。苦しい思いをさせないという決断。厳しいです。
重症患者はいつも命のギリギリの所で決断を要求します。
獣医も、なにが正解なのか悩んで治療しています。少しでも良い選択肢があればと考えながえら・・。
追記:ow「犬は好きだから新しい犬を飼うかもしれません。その時は先生が診てくださいね」
vet「とりあえず、フィラリア予防と手を咬まない犬にしてくださいね」
ow 「フィラリアにはもう感染させたくないですね」
・・・。みんな一度、つらい思いをしないと病気を軽視しがちです。本当にフィラリア危険です。
fin.
△守秘義務のため一部フィクションで書かれています△
BY TMvet
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