沈黙のクレオパトラ

忌野清志郎に三沢光晴・・・二人が今生きていたら、どんな行動をしただろう?

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向田邦子讃

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(最近、BSで久々に向田邦子の特集番組を見ました)

昭和56年8月、
あの夏の日のことは、今でもよく覚えている。

私が大学受験で苦しんでいた頃、
うちの母が新聞を読んでいて、急に声をあげた。

「墜落した飛行機に、向田邦子さんが乗ってたんだって……そんな……」

母は、向田邦子の大ファンだった。

*

最近、ある事情があって、
女流作家の本を立て続けに読んでみた。

「山崎ナオコーラ/人のセックスを笑うな」
「金原ひとみ/蛇とピアス」
「恩田陸/夜のピクニック」「六番目の小夜子」「ネバーランド」
「桜庭一樹/少女には向かない職業」「赤朽葉家の伝説」「赤×ピンク」
「唯川恵/肩ごしの恋人」
「桐野夏生/柔らかな頬」「OUT」
「三浦しをん/まほろ駅前多田便利軒」
「宮部みゆき/名もなき毒」

それぞれ才能溢れる、素晴らしい作家さんたちである。
桜庭さんと桐野さんは、尋常ではない作家だと思う。
恩田さんにいたっては、
私と同じ職場の課長の妹さんだ。
(恩田さんの兄上は、先日の飲み会をドタキャンしました(笑))

純粋に面白い、そして・・・・・・切ない。
男には思いもつかないような女性の感性にはまったく脱帽する。
その繊細で揺れ動くかのような情感は、男には絶対に表現できない。

それを前提に置いた上で……

あまりにも女性を前面に出した感性は、一歩間違えると少々鼻に付いてしまう。
例えば、いかにも女性を感じさせる筆遣いがある。
言い換えれば、これは絶対に女性が書いたと判ってしまう文章。
いかにも女性だなあ、と思わせるような描写がある。
また、女性がこんなことを書くんだ……という露骨な性描写。
放送禁止用語も飛び交う。

もちろんこれらは決して悪くはない。
悪くはないが、私はペンの世界で、「女」を武器してほしくはない。
そんなことしなくても、その才能を全面に押し出せば、
必然的に素晴らしい作品が完成するに違いないからだ。

例えばセックス中の男性器の感覚などは女性には判らないはずだ。
男性作家が、生理の痛み、出産の苦しさを描いたところで
真実味が無いのと同じことだ。
自分が判らないことを書くのは反則だと思う。
そこに真実は一片も無い。

*

そんな中、
女性にも関わらず、
その圧倒的な筆遣いで、
まったく女性を感じさせないような
稀有な天才女性作家が一人居る(居た)。
その筆の力強さと勢いは、
そんじょそこらの男の二流作家を遥かに凌駕するものだ。

誰も気に留めないような些細な出来事も、
彼女の筆にかかると、何とも香り高い出来事に描かれるから不思議だ。
膨大なシナリオや短編などを書いた彼女が、
唯一、敢えて書かなかったのが、彼女自身の恋愛について。
何ともあっさりした彼女らしいではないか。

様々な新人賞の選考委員になって、
偉そうなことを言っている男性作家に限って、
彼女の足元にも及ばない。
いや、比較すること自体、彼女に対して失礼である。

心底、好きな作家であれば、
その人の書いた文字はすべて読みたいと思う。
入手できる限りの本をすべて読破したいと思う。
私がそう思って、
その作家の本をすべて買い漁って読んだのは、たったの3人。
三島由紀夫、新田次郎、そして向田邦子である。

私は彼女こそ、最高の女流作家だと思う。
(注。社会派の山崎豊子とは比較できないので、山崎豊子は例外とします・・・)

*

生涯を独身で通した彼女には、
その若き日、心底尽くした恋人が居た。
その恋人は15歳年上で、病身。
彼女が家族にも決して明かさなかった、この秘めたる恋は、
男性の急死で幕を下ろした。
その後、17年、彼女は誰とも結婚することなく逝った。

向田邦子は、作家としては膨大なポートレイトが残されている。
もともとが非常に美人であるが、
残されたポートレイトはどれもこれも皆、一様に美しい。
モデル顔負けのポーズ、そしてはにかんだような笑顔。

誰が撮ったかまったく判らず、すべてが謎とされていたこのポートレイト群。
恋するような彼女の瞳は、いったい誰に向けられていたのか。
この澄んだ瞳の奥には、いったい誰が映っていたのであろうか。




恋人はカメラマンだったそうだ。

閉じる コメント(6)

自分が高校生の時でしたが、恥ずかしながら、あの航空機事故で初めて向田さんという方を知りました。しかし向田さんが手がけた作品はガキの時分からテレビでよく拝見してたので追悼番組みたいなのを見て、大変残念に思っていたことは記憶にあります。今の時代にいてほしかった方の一人には間違いありませんね。

2009/11/18(水) 午後 2:26 bs 返信する

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bsさん、ありがとうございます。
テレビドラマで名作を連発して、小説を書いたら直木賞を取って、まさに絶頂期でしたが好事魔多し。
私には生き急いでしまったように思えます。

2009/11/18(水) 午後 8:40 mat*noa* 返信する

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向田邦子像を実に鮮やかに描出されていますね。まったく同感しました。
日常的な出来事にも「香り高く描かれる」なんて、とくに共鳴します。あの時代がありありと浮かび上がり、えてしてユーモラスに感じさせるところが絶妙。
テレビドラマでは久世光彦氏とのコンビで、どれほどぼくらの心を揺さぶったことでしょうか。
そして、航空事故により急逝……。未だにしばしばあの悲劇が思い出され、わが心も暗く沈むのです。 (丑の戯言)

2009/11/19(木) 午後 0:32 [ eiji ] 返信する

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本を読むようになって向田邦子さんはすでに有名な方であまのじゃきな私は一冊も手に取らず。男前な文章を書く方なんですね。読んでみたくなりました。桐野さんは男っぽくクールですよね。
うちの上の子は恩田さんフリーク。小学生の時与えた一冊から次から次から出る本を贅沢にも単行本で。今落ち着いたようですが。
課長さんによろしくお伝えください(笑)
開高健をまた最近読みたくなってます。

2009/11/19(木) 午後 0:46 amano 返信する

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丑の戯言さん、ありがとうございます。
ちゃぶ台を囲んでの食卓シーン。父は常にドンとそびえている。そして母は控えめながらも、実は家族の中心。
今の世の中、こんな風景は流行らないのかもしれません。否定する人もいるのかもしれません。しかし向田邦子が頻繁に描いたこの食卓シーンこそ、日本そのものだと思います。

2009/11/20(金) 午前 0:22 mat*noa* 返信する

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りーさん、ありがとうございます。
私も母に薦められるまでは、向田邦子=単なるシナリオライターだと思っていましたが、とんでもない誤解でした。読まず嫌いした私が愚かでした。
桐野夏生さんのハードボイルドなタッチは、ぐいぐいと引き込まれるような緊張感がありますね。反面、恩田さんの筆の何とも清らかなこと。
皆、それぞれ個性があって、素晴らしいと思います。

2009/11/20(金) 午前 0:25 mat*noa* 返信する

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