沈黙のクレオパトラ

忌野清志郎に三沢光晴・・・二人が今生きていたら、どんな行動をしただろう?

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(この記事の続きです)

http://blogs.yahoo.co.jp/matunoah/49555360.html

*

先日、とうとう祖母が亡くなりました。
99歳の大往生で、むしろめでたいくらいです。

その時、久しぶりにいとこのよっちゃんに逢ったのです。

「○○兄さん、こんにちは!」

いつも元気なよっちゃんです。

「久々だけど、よっちゃんのことはすぐに判ったよ」と言う私に

「私は全然成長してないから、すぐ判るんですよ」

いつも明るいよっちゃんです。

「結婚したんだってね! おめでとう!」と言う私に

「そうなんです。
 こんな私を貰ってくれるっていう人が居てくれて助かりました。
 これを逃したら、もう駄目でした!」

いつも控えめなよっちゃんです。

(貰ってくれる・・・って、
 君ほどの女性、選ぶ権利があるのは100%君のほうだろ)

そう思いましたが、口には出しませんでした。
どうせ、照れて、否定するに決まっています。
いつも照れ屋なよっちゃんです。

*

祖母と同居していた孫の中では最年長だったよっちゃんが、
告別式で手紙を読みました。
もちろん、泣くことも取り乱すこともなく、
その役目を当たり前のように堂々とこなしました。

明治生まれで99まで生きた祖母。
この祖母にして、この孫あり。


(久しぶりに逢ったのに、全然話せなかった。もっともっと話したかった)

よっちゃんは私にこう思わせるような、素敵な女性です。

外岡秀俊讃『北帰行』

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先日、参加していた日大のセミナーで
講師である作家の佐藤洋二郎先生が受講生にこう言った。

「この中で、外岡秀俊の『北帰行』を読んだ方はいますか?」

私は読んでいたが、挙手しそびれてしまった。
挙手した人は誰も居なかった。

「あちゃー! ああいうの、読まなきゃ駄目だよ」
先生はこう言った。

*

それほど知られていない小説かもしれないが、
これは物凄い小説である。

作者の外岡秀俊は、昭和51年、東大法学部在学中に本作を書き上げ、
河出書房の文藝賞を受賞。
その後、例外を除いて、まったく小説を書いていない。
一発屋ではなく、文字通り本作ですべて書き切ってしまったのだ。

佐藤先生はこうもおっしゃっていた。

「僕はこれを読んで、作家を辞めようと思った。
 自分にはこんな重厚な文章は逆立ちしても書けない。」

その筆には、骨太で圧倒的な勢いがあり、
そして零れ落ちるかのような情感に溢れている。
純文学なので、あまりにも読みづらいのは確かである。
私も読み切るまで、かなり難儀した。

ラスト近く、
小学校時代に恋焦がれていた少女と再会するシーンのほんの一部を、抜粋する。

***ここから

私は振り返った。そこには一人の女性が立っていた。
けれどもそれは、私の知っていた、あの鮎のように清々しい少女ではなかった。
どこか媚びるようなその笑みの蔭には、
私の言葉の重みをそっと量るような醒めた眼が感じられた。
いつも何かに怯えている少女の慄えを、女の表情で押し隠そうとする構えのようにも感じられた。

由紀の唇はひんやりとして氷のように冷たかった。
何度か唇を重ねるうちに、
彼女は二三度首を横に振り、
私の胸に顔を埋めてすすり泣いた。
そのあたたかな首筋に軽く口づけすると、
ほんのりと石鹸の香りが漂って私の鼻を擽った。
髪は、日溜りの乾し草の匂いがした。

どれだけ長いあいだこの瞬間を夢に見てきたことだろう。
私の六年間は、ただこの日のために過ぎていったのだ。
けれども予期していたような歓喜はやってこなかった。
腕の中で小鳥のように慄えている人のこころがここにはないことを、
私は知っていたから。

彼女は顔を起こし、垂れていた前髪を両手で分けた。
私は両手を離さずに、由紀の潤んだ瞳をじっと凝視めた。
長い口づけだった。
そのときだけは彼女の心が私に開かれていることを、
そのほそい指先は伝えていた。
戸外に出ると雪は一層激しくなって私たちに吹きつけた。

彼女は私の手を握ると、背を向けて足早にその場を立ち去った。
私はじっとその後ろ姿を見ていた。
由紀はいきなり振り返って、十歩程離れたところに立っていた私の顔を見つめた。

「あたし、子供ができるの。母親になるのよ。・・・・・・さようなら!」

彼女はそう叫ぶと、くるりと振り返って駆け出した。
みるみるうちに小さくなっていく後ろ姿は、
闇の中に吸い込まれるように消えていった。

***ここまで

久々に少女と再会した主人公
少女は、記憶の中の少女ではなく、女になっていた。
キスしても、喜びは沸いて来ない。
何故ならば、少女はあの時の少女ではないから。
別れ際に、女は妊娠していることを告げて去る。

*

最近の文芸誌に載る新人の小説は、
敢えて難しい文体で、難解な文章をこねくり回している。
中には日本語の文法を無視し、
助詞をすべて違うものに変えてしまい、
それを売りにしている作家もいる。
そのような小説が新人賞を堂々と受賞している。

その良し悪しはここでは問うまい。
しかし、それらの小説と、この「北帰行」
どちらが我が国の国文学かと言われたら、
おのずと答えは出てくる。

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「涙の日」の彼女

今日は【ラクリモサ】(涙の日)です。

今年は2009年ですから、今から218年前の1791年12月5日。
一人の天才、
しかもそんじょそこらの天才ではなく、
人類史上間違いなく最高の天才が、
【ラクリモサ】という曲を書いている途中で亡くなりました。
35歳でした。

【ラクリモサ】(涙の日)というのは、
天才:モーツァルトが書いた626曲目の曲『レクイエム』の中の曲で、
モーツァルトの絶筆とされている曲。
この世のものとは思えないような崇高な美しさに満ちた曲で、
澄み切った冬の日を想い起こさせるような清廉な響きが零れ落ちてきます。
最後は敬虔な祈りを込めた「アーメン」で幕を閉じます。
この曲とともに、モーツァルトの魂は、神の基に帰ったのです。
(昨晩見ていた安藤美姫の演技でも部分的に使われていました)

*

高校時代、好きな女の子ができました。
私の学校は私立の男子校。
そして、彼女の学校は私立の女子校でした。
ふたつの高校は、最寄り駅が同じだったため、
朝、その駅は男女の高校生でごったがえします。

朝、いつも改札のところに立っていて、
同級生と待ち合わせて登校していた女の子がいました。
毎日毎日、彼女の顔を見ているうちに
私は彼女に恋をしました。

紺のセーラー服。
髪型はウェーブのセミロング。
丸顔でした。
背はそこそこ高く、目立ちました。
「あの娘、可愛いよな〜」などと
私が一緒に通う学友(森下君)に話していたわけです。

すると、何という偶然か、
森下君が下校する時、目蒲線(もうありません)に
その女の子が乗っていたそうです。
森下君は女の子を尾行し、
その子の名前、住所、電話番号を完璧に調べ上げ、
メモに書いて私に無言で差し出しました。
何故か紙には彼女のバスト、ウェスト、ヒップ、
ついでにブラのカップまで書いてありました(笑)
(どうやってこんなことまで・・・・・・森下君)

彼女の名前は、純子でした。

私は悩みに悩んだ末、彼女の家に電話をかけました。
おそらくは彼女のお母さんが出て、
私は無言で電話を置きました。

彼女の事が忘れらられないある日の事、
いつものように高校に向かおうとしていると、
私の前を歩いていた高校生(同じ高校でしたが、面識はない男)に
女子高生がいきなり近づいて来て、小さい紙袋を渡しました。
いつも彼女と待ち合わせている、彼女の友人でした。

「○○君に渡して下さい。あそこにいる私の友達からです」

そういうと、女の子は「お願いします」とぺこりと頭を下げて、
駆け出して行きました。
女の子が立ち去った方向を見ると、
あの彼女が不安げな顔で手を振っていました。
私の恋はその時、終わりました。

私が家に帰って、ターンテーブルに乗せたレコードが
モーツァルトの「涙の日」です。

昭和56年の……ある冬の日のことです。

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「夜会」を初めて見た。
初めてナマで見た彼女は、とても小柄な女性に映った。

コンサートでも芝居でもミュージカルでもないという。

確かに台詞があるからコンサートではない。

一応の筋書きはあるのだろうが、難解すぎて私にはよく判らない。
舞台装置もそれほど凝っているわけではない。
だから芝居とはいえない。

一番近いのは、やはりミュージカルなのであろう。

最後まで、
「私は何を見ているのだろう?」
という気持ちのまま、夜会は終わった。

不思議なものを見たという感想だ。

もう一回見たいかと言われると、
少し考えた末に、やはりもう一回見たい、と
答えるかもしれない。

そもそもがミュージカルは苦手なので、
もういいや、高いし、と
答えるかもしれない。

それほどまでに摩訶不思議なステージ
それが夜会なのであろう。

フォーク・ギターの弾き語りの歌が、今でも一番好きだ。
実は彼女の弾くフォークギターはかなり難易度が高い。
ハンマリング・オンやプリング・オフが多く、
奇妙なコードから開始されることもある。
コピーするのに結構骨が折れるのだ。


高校の時、彼女のオールナイトニッポンを毎週聴いた。
あの時、彼女は、
「私はまだ29。まだあと一年ある! まだまだ三十路じゃないんだ〜!!!」
としつこくしつこく言い張っていた。
そんな彼女も今年で57

『時は流れて・・・』

私も歳を取るはずだ。

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向田邦子讃

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(最近、BSで久々に向田邦子の特集番組を見ました)

昭和56年8月、
あの夏の日のことは、今でもよく覚えている。

私が大学受験で苦しんでいた頃、
うちの母が新聞を読んでいて、急に声をあげた。

「墜落した飛行機に、向田邦子さんが乗ってたんだって……そんな……」

母は、向田邦子の大ファンだった。

*

最近、ある事情があって、
女流作家の本を立て続けに読んでみた。

「山崎ナオコーラ/人のセックスを笑うな」
「金原ひとみ/蛇とピアス」
「恩田陸/夜のピクニック」「六番目の小夜子」「ネバーランド」
「桜庭一樹/少女には向かない職業」「赤朽葉家の伝説」「赤×ピンク」
「唯川恵/肩ごしの恋人」
「桐野夏生/柔らかな頬」「OUT」
「三浦しをん/まほろ駅前多田便利軒」
「宮部みゆき/名もなき毒」

それぞれ才能溢れる、素晴らしい作家さんたちである。
桜庭さんと桐野さんは、尋常ではない作家だと思う。
恩田さんにいたっては、
私と同じ職場の課長の妹さんだ。
(恩田さんの兄上は、先日の飲み会をドタキャンしました(笑))

純粋に面白い、そして・・・・・・切ない。
男には思いもつかないような女性の感性にはまったく脱帽する。
その繊細で揺れ動くかのような情感は、男には絶対に表現できない。

それを前提に置いた上で……

あまりにも女性を前面に出した感性は、一歩間違えると少々鼻に付いてしまう。
例えば、いかにも女性を感じさせる筆遣いがある。
言い換えれば、これは絶対に女性が書いたと判ってしまう文章。
いかにも女性だなあ、と思わせるような描写がある。
また、女性がこんなことを書くんだ……という露骨な性描写。
放送禁止用語も飛び交う。

もちろんこれらは決して悪くはない。
悪くはないが、私はペンの世界で、「女」を武器してほしくはない。
そんなことしなくても、その才能を全面に押し出せば、
必然的に素晴らしい作品が完成するに違いないからだ。

例えばセックス中の男性器の感覚などは女性には判らないはずだ。
男性作家が、生理の痛み、出産の苦しさを描いたところで
真実味が無いのと同じことだ。
自分が判らないことを書くのは反則だと思う。
そこに真実は一片も無い。

*

そんな中、
女性にも関わらず、
その圧倒的な筆遣いで、
まったく女性を感じさせないような
稀有な天才女性作家が一人居る(居た)。
その筆の力強さと勢いは、
そんじょそこらの男の二流作家を遥かに凌駕するものだ。

誰も気に留めないような些細な出来事も、
彼女の筆にかかると、何とも香り高い出来事に描かれるから不思議だ。
膨大なシナリオや短編などを書いた彼女が、
唯一、敢えて書かなかったのが、彼女自身の恋愛について。
何ともあっさりした彼女らしいではないか。

様々な新人賞の選考委員になって、
偉そうなことを言っている男性作家に限って、
彼女の足元にも及ばない。
いや、比較すること自体、彼女に対して失礼である。

心底、好きな作家であれば、
その人の書いた文字はすべて読みたいと思う。
入手できる限りの本をすべて読破したいと思う。
私がそう思って、
その作家の本をすべて買い漁って読んだのは、たったの3人。
三島由紀夫、新田次郎、そして向田邦子である。

私は彼女こそ、最高の女流作家だと思う。
(注。社会派の山崎豊子とは比較できないので、山崎豊子は例外とします・・・)

*

生涯を独身で通した彼女には、
その若き日、心底尽くした恋人が居た。
その恋人は15歳年上で、病身。
彼女が家族にも決して明かさなかった、この秘めたる恋は、
男性の急死で幕を下ろした。
その後、17年、彼女は誰とも結婚することなく逝った。

向田邦子は、作家としては膨大なポートレイトが残されている。
もともとが非常に美人であるが、
残されたポートレイトはどれもこれも皆、一様に美しい。
モデル顔負けのポーズ、そしてはにかんだような笑顔。

誰が撮ったかまったく判らず、すべてが謎とされていたこのポートレイト群。
恋するような彼女の瞳は、いったい誰に向けられていたのか。
この澄んだ瞳の奥には、いったい誰が映っていたのであろうか。




恋人はカメラマンだったそうだ。

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