松下宏の見たクルマ、乗ったクルマ、会った人

東奔西走を続ける自動車評論家・松下宏が見た、触れた、乗ったクルマと、出会った人たちのほか、見た映画について随時書いていきます。

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5日と6日はKYBによる主催のAJAJ会員向け勉強会に出席しました。このブログは2日間分なので長文になっています。KYBの勉強会は2年前にも出席しましたが、今回も改めて参加しました。勉強会のプログラムは一部は前回と重なる部分がありましたが、新しい要素もいろいろあって大いに参考になりました。

5日は早朝に新宿駅西口に集合し、バスで岐阜県可児市の岐阜北工場へ。まず座学でKYBの主力製品であるSA(ショックアブソーバー)、EPS(電動パワーステアリング)、 CVT用ベーンポンプ(油圧ポンプ)の3製品について、技術解説と今後の開発の方向性など話を聞き、その後で岐阜北工場の一部を見学しました。

KYBの売り上げで見ると、SAやEPSなど自動車関連製品が60%程度、油圧系が30%程度と、このふたつで大半を占めますが、売り上げ高はさほどではないもののコンクリートミキサー車のミキサー部分では高いシェアを持ち、また新幹線用のダンパーや東京スカイツリーの緩衝装置など、象徴的な製品も作っています。新幹線ではリクライニングシートに使われるリクライニング機構は100%がKYB製とのことでした。

見学したKYBの主力工場である岐阜北工場では、SAやEPSなどを生産していて、SAについては月間230万本弱を生産し、世界でもトップの生産量を誇ります。聞いて驚くのは生産する種類が1万2000種以上に及ぶということです。

新車に装着されるSAはほかの車種と同じ仕様ということはまずあり得ず、車種ごとに異なった仕様のSAになるのに加え、車種によってはグレードによって異なる仕様が採用されます。また新車用だけでなく、過去に販売していた車種についても補修部品としてのニーズがありますから、1本〜数本単位で生産しているものもあり、合計すると1万2000種以上になるということです。

量産品につては自動化を進めたラインで数秒に1本というペースで生産していますが、補修品になると専用の手作りラインでじっくり生産していました。一方では効率化の徹底を図っていますが、その一方では今どきの効率化追求とは無縁の生産も行っているわけで、難しいものがあるなと思いました。

工場内では、製品ごとの要求品質に応じて生産ラインのクリーンルーム化を図っている部分もありました。今回見学したコースでは、比較的多くの女性を見かけましたが、女性を配置しているのは重いものを動かさなくてすむ工程などに限られるため、全体としては工場での女性比率はごくわずかとしていました。


6日は開発実験センターのテストコースに移動し、直線路、山岳路、旋回路などでいろいろな車種に試乗しました。

たとえばレヴォーグでマイナーチェンジ前の仕様とチェンジ後の仕様を乗り比べると、確実に良くなっているのが分かりました。ハンドルを切り始めた瞬間の応答性やリニアリティが大きく違っているからです。逆にいえば、マイナーチェンジでこうした改良を加えるスバルの姿勢は大いに注目されます。トヨタや日産ではマイナーチェンジでこうした改良をすることは少ないように思います。

またプリウスで市販車の仕様と、今後の方向性として提案している仕様の乗り比べなどをしました。これも乗り比べると乗り心地と操縦安定性が進化しているのが分かりました。

面白かったのは同じオーリスで、SAのオイルの通り道をほんのちょっと変えただけのものを乗り比べましたが、乗り味が大きく違っているのに驚きました。変えたのは、いくつのも部品のうちのふたつについて、オイルの通り道の間隔を狭めたり、小さな通り道を3つと4つで違えただけなのですが、たったそれだけのことでこれだけ変わるのかと驚きました。

これはどちらが良いということではないとしていましたが、私は引き締まった乗り味を感じさせる仕様のほうが断然良いと思いました。


KYBといえば、最近国沢さんが酷評を繰り返していて、これまでいったい何故だろうと違和感を持っていました。今回AJAJ会員向けの勉強会に出席していろいろな話を聞き、試乗体験をしてみると、感じていた違和感が確かなものになりました。

まあ、そもそも論として、クルマに試乗してKYBの製品だけに文句をつけるのはいかがなものかというのがあります。ある車種にKYBのSAが装着されているとして、そのSAが持つ乗り心地や操縦安定性などの性能はKYBの問題というより、その車種を開発したメーカー、あるいは開発責任者の責任のほうが大きいと考えるからです。

KYBからはいろいろな仕様を提案をしているのでしょうが、その中で自動車メーカーはさまざまな観点から仕様を決めてKYB製のSAを選んでいます。その観点にはSAの重要な要素である乗り心地や操縦安定性もありますが、ほかにも耐久性や信頼性、低騒音性能、あるいはコスト、さらにいえば世界各地で生産する車種なら各地の自動車工場に供給できる能力なども加味されます。

日本の自動車メーカーでは、これらの要素の中でもコストが非常に大きなポイントとされる傾向が強いですが、いずれにしてもいろいろな要素を加味してサプライヤーと製品を選んでいるわけです。なのに乗り心地や操縦安定性の面でKYBだけを責めるのは何ともおかしなことです。文句を付けるならKYBよりも先に自動車メーカーに向けるべきではないかと思います。

問題の大半はクルマの側にあり、単純にKYBだからダメで、ショーワやトキコ、ザックスなら良いということではないでしょう。もちろんKYBもより良い製品を作るのに越したことはないので、一方的にKYBの肩を持つということではありませんが、KYBだけを酷評する話ではないと思います。

KYBは日本の自動車メーカーのすべてと付き合いがあり、逆に外国メーカーの付き合いは比較的少ないため、コスト重視の生産に重きが置かれる傾向が強いのだろうとも思います。しかしながら非系列の専業メーカーであるKYBには、さまざまな知見や技術が蓄積されていて、いろいろな要求に応じた製品を作る能力を備えています。

KYBにとって課題として考えられるのは、ひとつはコストダウンです。国沢さんに文句を言われないような仕様の製品を従来品と同じコストで生産できるようにすれば、自動車メーカーもそれを積極的に採用することでしょう。

それよりも大事なのはブランドイメージの確立だと思います。現在では、低コストで信頼性に優れた製品を大量に生産できる点で定評を得ていますが、それとは違う面でブランドイメージを高めていくことが大切だと思います。

現在でも、自動車メーカーはビルシュタインのSAを採用する車種ではそれ積極的に宣伝したりしますから、KYBブランドをそうした地位にまで引き上げていくことです。低コストの量産品メーカーというイメージが定着しているKYBブランドでは、高機能や高性能を訴求するのが難しいというなら、レクサスやインフィニティやアキュラの例にあるように、別ブランドを立てて高性能SAのイメージを図っていくのもひとつの方法ではないかと思います。

それにしても、国沢さんはAJAJの会員なのですから、今回の勉強会に出席して直接KYBの技術者と議論したら良かったのにと思いました。都合が合わなくて参加しなかったようですが、KYBの勉強会は2年に1回くらいのチャンスなのですから、ぜひとも参加して欲しいところでした。

※今回、工場内やテストコースでは撮影ができなかったため、製品の写真だけを撮りました。SAとレヴォーグ用EPS、3枚目はスカイラインのステア・バイ・ワイヤです。

■松下 宏のCORISM最新試乗レポート











■CORISMピックアップ



















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KYBのSAが装着されるクルマを酷評するのなら、
国沢氏はKYB製品の装着車の試乗は不要ですね。

自ら活動の場を狭めてることに早くお気づきになるべきですね。

2017/10/7(土) 午後 4:03 [ m_i*k*e_n_e*k*od* ] 返信する

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国沢氏が岡崎五朗氏のFacebookにコメントしたようです。

「国沢 光宏 WRCとかに出来てきたら敬意を表します。」
・・・・・。
国沢氏に試乗させるのは最早ガソリン資源の無駄遣いだとメーカーに判断されても仕方ないですね。

2017/10/7(土) 午後 8:15 [ m_i*k*e_n_e*k*od* ] 返信する

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松下さんと国沢さんて仲いいのか悪いのかわかりませんね

2017/10/8(日) 午前 2:32 [ n98*aa ] 返信する

KYBの件、松下さんに一本!

2017/10/8(日) 午前 8:27 [ der*s*nek* ] 返信する

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KYBはブランド力を強化するためもあって、今年4月にモータースポーツ部を新設しています。これまではいろいろな部門でモータースポーツに取り組んでいたのを集約した形です。

SAではなくEPSですが、現在でも日本のスーパーフォーミュラは全車、WRCでは21台中3台、WECではトップカテゴリーのLMPクラスで31台中26台に採用されているとのことです。今後はSAでの参戦にチャレンジしていくとのことでした。

2017/10/9(月) 午前 3:26 [ 松下宏 ] 返信する

お互いちゃんとハッキリ物を言える仲は良いものです。松下先生には御意見番としてこれからもAJAJをキッチリ見てて下さい。

2017/10/9(月) 午後 7:19 [ har**iton*002 ] 返信する

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> har**iton*002さん

ご意見番というほどではないにしても、少し引いた立場から自由な物言いは続けていきたいと思います。

2017/10/9(月) 午後 11:17 [ 松下宏 ] 返信する

まさか松下先生からお返事が来るとは思っていませんでした。本当にどうもありがとうございました。
今朝の国沢さんのブログでは、また変な解釈をしておりますので松下先生も大変でしょうが、国沢さんも悪い評論家では無いので、この際ですからキッチリ解らせてあげて下さい。
これからも応援しています。

2017/10/10(火) 午後 2:30 [ har**iton*002 ] 返信する

まったくもってその通りだと思います。

KYBだって、企業なのですからそれに見合う金額を払ってくれない会社には、それなりの物しか作らないのは当然の事で、決してショックアブソーバーを作る技術レベルが低い訳では無くて、むしろ非常に高いレベルです。

しかし、トヨタや日産を始めとしたメーカーがコストダウン至上主義な為、普段使いで壊れなければ良いって言う、最低限の信頼性さえあれば…多少乗り心地が悪くても良いのです。

その証拠にKYB自社で出すSRなどのアフターパーツは凄く良い仕事をしてます。

2017/10/10(火) 午後 7:41 [ ebu**co ] 返信する

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国沢さんは自信がないんでしょうね、人の意見はきかないけど
自分の意見は押しとおす、そうして自分が影響力のある人物だと
思い込みたい。ネットの世界は行動や考え方などの人間性が表に
出てきます。なかなか自分を変えるのは難しいかもしれせんが
松下先生から助け船を出してあげてください。初心に戻ってもらえるように。
松下さんはこれからも応援させていただきます。

2017/10/10(火) 午後 9:27 [ ros**agou2 ] 返信する

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日本の自動車メーカーが、故障が少なくて信頼性が高くて安いクルマを大量に作るのを得意としているのと同じように、KYBも信頼性が高い製品を安くたくさん作るのを得意としています。

それ自体は悪いことではないというか、多くの人に手頃な価格でクルマを提供するという意味で、むしろ良いことだと思いますが、メーカーもサプライヤーもそれにとどまらずに、より良いクルマを作ることに専心して欲しいと思います。

2017/10/11(水) 午前 3:37 [ 松下宏 ] 返信する

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