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(八)
「それにしても「袴引」とは、どのような男であろう。一度会ってみたいものじゃ」
などと、そのときは暢気に考えていたのである。
小平は、少し足を速めた。
六条堀川を渡り、一町、左女牛小路の辺りから東市が見渡せた。盛況とはいかないまでも、まばらに店は出ている。小平同様、高陽院、堀川院から流れてきた人の数も加わって、むしろ日頃より賑やかなくらいである。そのころには、小平は、市比賣神社に詣でることなどすっかり忘れて店を探し歩いた。
東市で店を出すにはその権利をもったものでなくてはならない。物品の価格も公に定められてその価格で販売しなくてはならなかった。小平は、出店する権利をもたない。したがって必要なものを売っている店に行って、小平が持ってきた物と物々交換の交渉によって必要なものを入手するのである。
小平は、米と塩を商っている店を転々と探し歩いた。何軒かの店を渡り歩いたが、小平の作った品物を、必要としてくれるものに、なかなか巡り会えない。巡り会えないどころか、たいていの店でけんもほろろな扱いをされる。小平は、自分が作る物に、自信があった。しかし、小平が作る物の需要そのものが、あまり無かったのである。秋の涼やかな風の吹く中、小平は額ににじむ汗をぬぐった。日が西に傾き、少々あせりはじめた矢先、取引に応じてくれる店にめぐりあった。
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