中華的猟団 【漢華旅団】

1サバで活動中。実はそれ程中華的でもありません(´・ω・)

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――カラン

 とある街の大衆酒場で、見事な美髯を蓄えた男が一人、酒を飲んでいた。辺りは様々な喧騒に包まれているが、その男の周りの空間だけ音が消えたような…そんな落ち着いた雰囲気を、少々髪が白み始めた男は纏っている。ジーンズのズボンにTシャツ、カウボーイハットと、格好だけ見れば一昔前の西部劇の様な格好だが、男が持っているのは拳銃ではなく…一振りの、巨大な剣。男の背丈程もあるその剣は、しかし男には不思議と似合っている。
 男はただ黙して、酒を煽る。
 と。

「…すいません、どなたか、手伝っていただけませんか?」

 そんなか細い、少女の声が聞こえた。
 男は声のした方に振り向き、その声の主を見た。
 “新人猟団”という、狩人になりたての者達を支援する為にギルドが創設した施設。そこに属する者に与えられる赤いルーキーシリーズを着込んだ、一目で新人と判る浅黒い肌の少女だった。
 男の他にも声に気付き、少女に目をやる者達がいたが、
「…んだぁ?せっかく人が楽しく飲んでる時によ…」
「どうせ雑魚か、納品とかだろ?んなもん、一人で行けよ!」
 と、心無い事を言う者達ばかりで、それ以上少女に目を向けようともしなかった。中には、
「つーかあの子結構可愛くね?」
「手伝ってやったら、後でギルドとは別に褒賞が貰えるかもよ?」
「いいねー!褒賞はあの子ってか?ギャハハハ!」
 などと下卑た発言をする者達もいた。

――ドンッ

 男は一気に酒を煽ると、そのグラスをテーブルに叩きつけた。
 シン…ッと店は静まり返り、店中の視線が男に集中する。
 しかし男は何も言わず、ただ視線を送ってくる者達を睨み返した。
「‥‥‥ヒッ」
 睨まれた者達…先程、少女に対して心無い発言をした者達は、男の薄ら寒くなる程の怒気のこもった視線を受け、何も言えずにその身を縮こませた。男はその様子に満足したのか、視線を外す。
 そして未だ静まり返る店内を歩いて、少女の前に立った。
「あ、あの…」
 少女は異様な迫力の男を見て怯えていたが、次の瞬間にはキョトンとした顔になった。
 男が、先程の迫力からは想像がつかない程の人懐っこい笑みを浮かべて、こう言ったからだ。

「何行くの?手伝うよ」


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「…あの、さっきは、ありがとうございました」
 狩場へと向かう馬車の中、少女は座ったまま深々と頭を下げた。
「ん?あぁ、いいっていいって。俺がただ、ムカついただけだしね」
 そう言って人懐っこい笑みを浮かべる男は、さっきの迫力がウソかと思う程に、穏やかな雰囲気だった。
「いえいえ、格好良かったですよ!デニムさん」
 少女は拳を握りながら力強く言う。
 デニムと呼ばれた男は、照れ隠しにかより一層笑みを深くした。ちなみに先程の西部劇の様な格好ではなく、今は狩猟用のスタイルになっている。
 全体的に赤と黒が目立つ装備で、足元で輝く銀色だけがやけに眩しい。狩人になりたての少女にはそれがどういう装備なのかはよく判らなかったが、使い込まれた様子や刻まれた傷を見れば、かなりの実力者なのだろうという事は判る。
「そうそう、リリィさん。新人猟団に所属してるみたいだけど、他の団員に頼めばよかったんじゃないの?わざわざ自由区で募集しなくても…」
「えぇ、それが…」
 リリィと呼ばれた少女は、とつとつと、悲しげな顔で状況の説明を始めた。
「狩りの基本や将来的な仲間を見つけるなら新人猟団に入るのがいい、という話しを聞きまして、入ったのはいいんですけど…あまり、馴染めなくて…」
 それで一人でコツコツとやっていたのだが、今度の標的は一人では自信がなかったので、自由区で募集をしてみた。と、いう話しらしかった。
「ふむ」
 デニムは一つ頷くと、それ以上は何も言わなかった。
 しばらく沈黙が続いていたが、唐突にデニムが笑顔で言った。
「よし、じゃあサクッと狩ろうか。今回の標的は…」
 釣られて、リリィも笑顔で言う。
「はい!ドスイーオスです」


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 今回の狩場、ドスイーオスが生息する沼地のベースキャンプに、デニムとリリィは到着した。
「よし、じゃあ準備はいいかな?」
「はい!」
「いざ」
 打ち合わせと装備の点検、簡単な食事を摂り、二人はベースキャンプを後にする。
 池に面したベースキャンプの右側から出ると、そこは湿った地面が広がる湿地帯だった。辺りでは、体に緑色の苔の生えたモスがのんびりとキノコを食べている。
「んー…ここにはいないみたいだね。もう少し、先に行って見ようか」
 多少の岩や木があるが、見通しがいい場所なので標的がいるかいないかは一目で判る。
 二人が次に訪れた場所は、先程の場所を真っ直ぐに進んだところにある。木が多く生え、茂み等もある為見通しが悪い。
「気を付けて」
 デニムはリリィにそう促すと、大剣の柄に手をかけながら慎重に進んでいく。
「ここを少し、手分けして探してみようか。何かあったら、すぐに呼んで」
「判りました」
 そう言って、二人は分かれた。
 デニムは右から回り込み、慎重に歩きながら洞窟の入り口まで辿り着く。少し洞窟内を覗いてみるが、ブルファンゴが数頭、いただけだ。無駄な狩りをする必要はない、と踵を返したその時。

「キャアアァァァアアッ!?」

 リリィの悲鳴が聞こえたデニムは咄嗟に、声のした方向に駆け出した。
 見れば、茂みの向こうにドスイーオスらしき赤い頭が見える。リリィはその眼前で、立ち竦んでいた。
「伏せろ!」
 デニムは叫び、持っていた閃光玉をドスイーオスの眼前に投げた。

――シュボッ

 短い着火音と共に強烈な閃光が爆ぜる。リリィは目に光を浴びる前に伏せていたおかげで無事だが、ドスイーオスはもろに光を浴びた様だ。
「そぉりゃあ!」
 デニムは駆け寄ると、茂みごとドスイーオスを下から斬り上げた。
「あっ待って…!」
 そうリリィが叫んだ時には、既に時遅し。
 デニムの一撃は見事にドスイーオスを捕らえ、空の彼方に弾き飛ばしていた。

「ノオオォォォォォオオオオ!?」

 と、奇声を発しながら、イーオスフェイクを被った「人間」は…

――ドシャッ

 と、頭から地面に落ちた。


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「…いや、すまなかった」
 デニムは地面に座って、深々と頭を下げた。
「本当にすいません…。私つい、見間違えて…」
 一緒にリリィも頭を下げる。
「イテテ…。ん、まぁいいさ。気にしてないよ。オイラも突然飛び出して悪かった!」
 数mの高さに吹き飛ばされ、頭から落ちたにも関わらず大したダメージを負わなかったイーオス仮面男――JPと名乗った――は、仮面の下で恐らく笑いながら言った。
 体が切断されなかったのは、今は背負っている太刀で咄嗟に大剣を受け止めたかららしい。
「しかし、どうしてここに…?今は、俺達が依頼を受けているはずだけど…」
 デニムが最もな質問をする。ギルドから発注される依頼は、例外を除けば一組だけしか受けれないはずだ。別々のパーティーが同時に同じ依頼を受注するなど、ギルドが認めていない。
「んー…オイラも普通に依頼を受けてきたんだけど…ギルドの手違いかな?ちなみにそっちは、何で来たの?」
「俺達はドスイーオスの狩猟だ。そっちは?」
「オイラは、ドスファンゴだな…。もう倒したけど」
 ホラ、とJPが指差した先には、確かに通常のブルファンゴよりも大きな個体…ドスファンゴが、既に絶命して横たわっていた。
 はて、とデニムは首を傾げた。
(この狩場に生息していたのは、ドスイーオスではなく、ドスファンゴ?依頼者がドスファンゴとドスイーオスを見間違えた…訳ないよな…)
 と、そこまで考えて、デニムはJPを見た。
(…まさか…)
 ある結論に辿り着いたデニムは、二人に言う。
「…とりあえず、街に戻ろうか?」


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 街に着いた三人は、酒場の受付嬢に問い合わせた。それによると、確かに数日前まではドスファンゴの出没により商隊が移動できず困っていたので、依頼を発注していた。それをJPが受け、無事に討伐したはいいが、今度はドスイーオスが出没する様になったので狩猟して欲しい、と依頼が入っていたとの事だ。
 問題は、その出没したドスイーオスというのが…
「オイラかよ!?」
「そー言う事になるな…」
 この、JPの事だった。
 確かにデニムも見間違えたのだし、商隊が見間違えるのも無理はない。しかし、いくらなんでも早とちり過ぎだろうとデニムは思う。
「まったく…商い屋はせっかちで困るな…」
「まったくだ!」
 JPは、怒りながら言う。
「確かにちょっとイーオスの振りして脅かしてやったけどさ!」
 JPがそう言った瞬間、場の空気がピシッと凍り付いた。
 デニムは、ゆっくりとJPに尋ね直す。
「…今、なんて…?」
「ん?ドスファンゴ倒した後についでにちょっと採集してたんだけど、丁度商隊が通りがかったから、イーオスの振りして脅かしてやったんだよ。いやー、見事にビビって逃げってったね!」
 アッハッハと楽しそうに笑うJPを見つつ、デニムはゆっくりと拳を握り締める。
 そして。

 デニムの渾身の一撃で、JPは崩れ落ちた。


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「…いやー、あん時はマジで痛かったねぇ」
「ハハ、そんな事もあったな」

 大衆酒場で酒を飲みつつ、二人の男が語り合っている。

 一人は壮年の大剣使い。
 一人はイーオス仮面の男。

 二人は楽しそうに語らいながら、酒を飲む。

「そーいやあん時の女の子、どうしてるかな?」
「さぁねぇ…。まぁ、元気でやってるんじゃないかな」

 思い浮かぶのは、あの時の、最後に見た少女の笑顔。
 あの笑顔でやっていけているなら、何も心配はないだろう。

「さてとー。これからどうするよ?」
「んー…そうだなぁ…」

 グイ、とグラスを傾け、大剣使いの男は言った。

「久々に、ドスイーオスでも狩りに行くか?」






Fin.

閉じる コメント(8)

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ようやく、公約を果たす事が出来ましたw
以前デニーに約束した、

「デニム主役で1本話しを書く」

遅くなって申し訳ありません!m(_ _;)m
こんな感じになりましたが、如何でしょうか?

デニー希望で「敵はJPw」と、
劉良発案で「JPとの腐れ縁が始まる」を取り入れた結果、

なんかデニーとじぇっぴぃの友情物語になった様な…。

まぁいいか!
それはそれで(

デニーの渋みとじぇっぴぃの面白さが伝わっていれば幸いですw

2008/9/18(木) 午後 11:29 漢華旅団 返信する

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そんな話があったとは知りませんでした。
でも、二人ともいい味出ていますね。
こうやって、一人一人のキャラクターに焦点を当てたお話というのも、面白いですねぇ^^。

さぁ、私もがんばらなきゃ^^。 削除

2008/9/19(金) 午後 3:37 [ ユミエル ] 返信する

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いや〜wおもろかったww

いい出来だねえww楽しく笑わせてもらったよw

すごくいい感じに書いてくれてありがとうね^^w

また機会があったら書いてもらおうかな♪ 削除

2008/9/19(金) 午後 5:19 [ denimu ] 返信する

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なんかデニ主役なのにJPがいい味だしすぎだな(笑) 削除

2008/9/19(金) 午後 8:10 [ リァン ] 返信する

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前々から「デニム主役で1本話しを書く」と聞いていたので
対象が「ドスイーオス」と聞いて、なんでドスイーなんだ?
と思っていたらまさかのJP出現とは・・・予想できなかったw

次回作に期待ですね! 削除

2008/9/20(土) 午後 10:39 [ 少佐 ] 返信する

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>ユミさん
借り物のキャラで話しを書く、というのは中々難しく、気を使いますw
今回はデニから「好きにやってw」と言われたので好きにやらせてもらいましたがw
ユミさんの物語も、楽しみにしてます^^

>デニー
ご満足頂けた様で、何よりですw
あまり大剣使ってなかったけど…w

>リアン
うん、気にしたら負けさ!

>少佐
よっしゃ!少佐の期待?を裏切った!w 削除

2008/9/21(日) 午後 1:58 [ 白夜 ] 返信する

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デニがメインの話でなんでドスイーかとおいらも思ったら・・・
でもね・・でもね・・こんなことあったらおいらやりそうッスbbb
びゃっくんいつもひとりひとりのキャラ立てるの上手いね! 削除

2008/9/21(日) 午後 6:53 [ JP ] 返信する

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純血な女性達が集まるセックスサイト 削除

2011/4/13(水) 午後 8:47 [ セックス ] 返信する

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