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<7月3日> 『続銀塊集』
銀河冷え少しも寒くはない僕ら
なまなかに白刃曝すは武士の恥
夏柑の鋳物横丁に朝日照る
忽然と金星消ゆるうそ寒し
籤引いて当たれる宝ポケットティッシュ
現世には仏土尊き木蔭かな
四季をりをり寒山拾得俳話詩話
昼下がり唖然とする人ぽつねんと
秀でたる額に落つる雨の粒
夏白昼ペットボトルに汗滴る
コーヒーと焼酎交互に夏の夜
やうやくと四時になり鳴る遠き鐘
未成年煙草の味の骨までも
キャスケット斜に被る吾妹の夏
幾たびもどもりどもりて化粧水
秋深し翁の眉毛長々と
光る大地光る空には燭天使
夏の空アイスコーヒーの氷かな
夏服に風吹き通る女たち
風呂上がり脇の下拭く二度三度
わざわざのお越し嬉しや友のダチ
俳諧は蝮の毒よ梅雨湿り
はまゆふや九十九里浜にかもめ飛ぶ
しぶき上ぐ日本海の浜夕べ
頭悪き今日三鬼の忌豆腐すする
ひとまずは猫欠伸する円座かな
一ますの焼酎残りほくそ笑む
かはやなるかんやうしよくぶつしとすこし
アラジンのラムプけぶ立つ灯しの夢
びんぼ草母なる人のしと香る
湯浴みして芸妓屁を嗅ぐ旦那衆
からす見てた湯気立つ釜のおん茶会
神輿小屋畦道踏んでをとこしふ
桂庵のをみなへしにはわすれ草
赤く赤く大分県の地獄の湯
静かなる静岡県の岡浜見ゆ
いくぶんか練馬区の謎の地帯かな
かすみさう白夜の国に紅茶の香
アラビヤのロレンス熱砂一番駆け
獺祭忌ぎようさん出来る俳句かな
四十句出来てすなはち冷茶かな
古びたるタイプライターほこり降る
野良犬の坂下りたる痩せの夕
朝立ちの一佐しはぶく母艦かな
旅立ちの銀河鉄道乗る鉄郎
次々と句の山作り忘れたる
面影草父母どちら面影の
あにをとと眠る顔似て顰め面
邪馬台の地にしざる頭のざりざりと
いざり寄る夜にざりがに卵抱く
売る納豆悲しみて売るなつと売り
晩飯や咽びて食へり豆の飯
パソコンの母悲しみて蔵書売る
賢治忌の妙法蓮華池の蓮
蓮の実飛べり蜜蜂飛べりむしむしと
夜這ひしてマッチいつぽん火事の元
夜這ひして蚊帳吊る部屋の昏きかな
ウーロンハイパンツ一丁でベランダに
二十四時間働けますか販売機
南米のうんこ座りの売女かな
熱波来て熱闘観たり甲子園
何虫かつらつらと文字お達者に
宵待ちの竹下夢二夢に描く
喜雨夢に足掻きの夏は進行形
境界線引きて十字架屹立す
煙草の火フラワーポットの枇杷の葉照る
河原にはサングラスのひとりかふたり
草履取り草履虫鳴く悲しくも
胡桃割り人形踊る世の末まで
若椿安房の国なる里見村
八犬伝重箱の隅つつきたる
点々と点す火かすか聖霊祭
読初の霞めり屠蘇を過ごしたり
夏帽の少年憂しや蜻蛉取り
すもも熟る麦藁帽の大根引き
よろめきてメロンめろめろ嫁の論
井戸替ゑに出て朝顔の番をする
「敬春の湯」なる粉撒く風呂場の湯
どろろんと幽霊出でる怪なき話
陰湿な小言に耽る老ひの顔
星月夜知事に月日の降るニュース
寝転んで生まれの悪き子供かな
モンゴルの馬上少年黍を噛む
上がり框居直り強盗どすを刺す
水戸の国黄門様のらう?や
ご免ねとアーメンソーメン冷やし酒
自動車や甲州街道けむもふもふ
十六夜お寺の将棋待つたかけ
芋小路彦麻呂わらは芋を植う
啄木忌きつつきの来る金借りに
殿様の飯蛸召して忍び酒
シャツ重ね着して夜寒しタオルケット
学食のハヤシライスや銀杏散る
70年代よ西国分寺の喫茶店
靴下に穴開ける夜しつつこき
末弟や台所の音階下の夜
たかしの忌杉の葉に風の吹き過ぐる
賀茂祭終はりて牛車人形休む
檸檬見て背のそくそくと果物店
更待月ひとり笑ひの借り煙草
自暴自棄薬を捨てる闇の夏
陰嚢を暗き部屋にて冷やしたり
薬欲るやただひたすらに真夜中に
河童つぱるんぱつぱとて瓢箪提ぐ
榾の火のお元気ですかと語りかく
さざめきにざざ虫のある川辺かな
遁世して「新しき村」に朝近し
なさけなやしなびてをれりあさぼらけ
古本市サンバイザーに籠の本
ハンガーの夏ジャケツには皺よつて
眠るべし夜桜散るも知らぬげに
猫ぢやらし?つぺたにさするひとり者
海の水噴き上ぐくぢら海豚かな
阿蘇の山筒鳥越せり紫蘇の花
じんかんに動物園あり檻並ぶ
クレー射撃円盤砕け落つる芝
幼稚園の七夕笹の葉さらりさらり
朝刊のバイクの音深し麻の花
窓明かり反吐催せり夏夜まだ
土捏ねるわざくれなれば土捏ねる
けふしよくぎんかいしふてふふみかたまれり
遁走すだうすりやいいのさサマタイムブルース
(全百二十二句。パソが壊れた。電源が入らない。数打ちゃ当たる式であんまり良くないかな〜。)
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<7月4日> 『忌/胡乱の夜』
地蔵会の前掛ちよんぼり一の姫
滝行の人入れ替りまた湯気立つ
灘の里杜氏は摘めり冬野花
月霞む 夏はまだ始まつたばかりだ
夜の蝶ぺんぺん草にとまりけり
ライターをポケットに入れ我が夜の詩
中村の草田男草をむしりたり
花乱る岡ふもとに浮くゴム風船
病院の送迎バスに杖の人
目玉焼き食べてしみぢみ母の朝
夏の空クピドは弓に矢をつがへ
鉄路には朝顔夕顔朝夕に
ワンルームマンション干し物垂れ下がる
或る時は其奴コーモリ男かな
顔洗ふ蝙蝠の影洗ひ落とす
佐藤姓多き東北むかし夷狄
ふふどしやぶきつちよな手でまくり上げ
さわらびの蕨市の町工場の夜
「咳をしてもひとり」と寺男呟けり
我がノート『空白の夏』と名付けたり
ギリシヤの女神多産な神話かな
イチローの足よ一塁二塁三塁
雨やんでATM機に人並ぶ
雪に跡一休禅師恋狂ひ
生涯や崖の果てに咲く君影草
腰痛の母ぶつぶつと煮炊きして
霧の香や私事の数々を
釈教やお寺の坊さん妻子ゐて
鬼貫忌鬼面に漁りの火の映り
明日また当つてみますほととぎす
自転車の兄不在なり昼寝覚め
水まくら重信忌の海暗くあり
心には光躰は泥だらけ
はつなつやニッカボッカの缶のお茶
のどけしや庇の伸びて長々と
芥川龍之介氏木に登りたる
村びとの人丸祭村のうた
かんじきを履いて秋田の山鉄砲
夜川きらめき鵜匠ひるがへす綱巧み
Tokyoの塵風に任せ人混みに
Yokohamaの波止場の唄は子守り唄
Muroranをミューロレンと発音せり米人
孔孟の教へをそしりNagasakiへ
カレー匂ふ総合病院の食堂
折り畳み傘の小さきやリュックに入れる
協会の保育所に「野中の薔薇」流る
初恋の吾妹のバッグ密かに開く
日本中ケータイメールうつ向きて
燈台の燈台守のひとりだけ
久闊のミルクごくりと飲み干せり
たちまちに子供時代へ唐もろこし
ラヂヲから清志郎忌のスローバラード
大阪を食つて食つて死す織田作忌
梅干しの大小楽し湯漬けする
塩きうりぶつつりと切る手を持ち母
花瓶には庭の草挿すトイレかな
処女詩集処女小説にをとめ震へ
子の多き一家父母ふたりきり
寝て飲む茶座して飲む茶よ胡乱の夜
能登の市クーラーボックスの氷魚
きのくにや蜜柑ぶねの帆の満々と
四国路のお遍路さんの鈴静やか
病葉にサイレン響く朝寒し
菓子祭淳之介忌の銀座かな
水を得た魚のごとし雨の打者
思ひ出は行楽日和いつもいつも
古びたる幸楽鮨の湯呑みかな
青芒切つ先を空に据えてあり
木がらしや渡世人の忌人知れず
妄念と妄言とひとひ胸薄き
原爆忌白き館に人影絶へ
一葉忌うらぶれの日々を俺は生き
雨上がり阿修羅の降りる水溜まり
手鏡や女の如くくづをれる
ビロードの日曜日の朝Nicoの忌よ
盆休暇スイカを食べてリーヴァイス
弑逆の時は来たりて笛太鼓
Gペンの先の潰れし治虫の忌
鉛筆一本俺の現代俳句入門
やはらかき小雨に終はる胡乱の夜
(全八十一句。タイトルは始め単に『胡乱の夜』であったが、終盤に近づくにつれ忌日の作が多くなったので、改めた。コーヒーと煙草を過ごして吐気を覚える。今はただうすら眠い。また。葎花斎記す。)
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脱帽・・・ぽち・
籤引いて当たれる宝ポケットティッシュ
が、霞穂的には好きです。一番実用的だし・・・
わが国に住めばかわざりポケットティッシュ
霞穂
2009/7/4(土) 午後 3:38
霞穂さん>ご返句ありがとうございます。
いつもの通り眠れなかったので、沢山作ってしまいました。
だらだら続けてるのに、ご愛顧すみません。
また。
2009/7/4(土) 午後 7:07 [ 吉田ツグオミa.k.a.伊丹甚左 ]
一晩にこれだけの俳句メモを作られたのですか。
これらを素材にして、きちんと季語を入れて、五・七・五に整えたら、何句か、面白い句が出来そうですね。
返句
切り株を羽蟻飛び発つ我慢我慢
トマト
2009/7/4(土) 午後 9:21 [ afuro_tomato ]
トマトさん>ご返句と鋭いご指摘、ありがとうございます。
季語・五七五については、私は、現代俳句とは突き詰めれば所詮、自由韻律・無季・メタ俳句的迷宮的な言語遊戯に接近するものだと、これはまあ、私の俳論と言うか、思い込みなのですが。
私は、新時代の中村草田男・西東三鬼・高柳重信でありたいと、(高望みですが)願っていますから。
それから、私は作句のとき、まずは初案を取ります。だから多作なのです。
またよろしくご意見くだいますよう、お願いいたします。
葎花斎 こと余花二、かしこ。
2009/7/5(日) 午後 3:24 [ 吉田ツグオミa.k.a.伊丹甚左 ]
トマトさん>追記です。
要するに、偶発的な面白み、ということですね。
それから、新興川柳的なもの。季語も、飽くまで21紀の現在に即した、新しいものを、ということです。
ホトトギス以来の、客観写生とは、ほど遠くあります。
自分としては、それでいいのだと思っています。
2009/7/5(日) 午後 3:39 [ 吉田ツグオミa.k.a.伊丹甚左 ]