吉田ツグオミ DIRECTLY FROM A TRASH CAN

着ぶくれの王となり果つわが愚の朝(甚左)辛うじてモッドの自称詩人まあ人並みに春を迎えられれば上等そんな訳でつぃったもチェキラ

全体表示

[ リスト ]

1)はじめに
 いつからか寡聞にも知らないのだが、恐らくそう古くなく、気が付けば河出文庫で三角寛(みすみ・かん)の「山窩もの」の著述が何点か出ている。・・・そうか、遂に文庫で読めるようになったか。「山窩」のことについては僕はかねてから興味を持っていたので、嬉しい限りである。今回はその内の最新刊(2014年12月20日 初版発行)『サンカ外伝 血煙旅日記』を取り上げてレヴューする。新聞広告にこの作品が掲載されていたのを見て、あらかじめ図書館にリクエストしていたのである。

2)三角は永井龍男に激賞され、作家デビューする
 三角は明治36年(1903)生まれである。永井は1904年生、一つ歳下に当たる訳だが、当時(折しも日中戦争が始まった年)彼は文藝春秋社の編集部員だったので、同年配の良き友が見つかったという喜びより先に、純粋に編集者として三角の文業を評価した、仕事の義理が優っただろう(永井自身の小説作品については、僕は代表作とは到底言えぬ新聞連載の『幸吉八方ころがし 真珠王・御木本幸吉の生涯』しか読んだことがないので、云々できず)。こうして三角寛とその「山窩」は文学史の表舞台に登場することになる。

3)サンカ
 僕は「山窩」というのは、樵夫や猟師、かつて所謂「山賤(やまがつ)」と呼ばれていた人たち版フリーメイソンみたいなものかな、と一人決めしていたのだが、その見方は一寸ピントが合っていないようだ。
 三角の自序に曰く「箕(み)をつくり、笊(ざる)を編み、簓(ささら)を削り、茶筅(ちゃせん)を売り歩いている」という人々だそうで、竹を中心とした一種の経済共同体と言えるのではないか(「山窩」だからと言って、山に棲んでいるばかりとは限らない)。フリーメイソンの友愛団体としての特徴はここにはなく、ただ厳しい掟(ハタムラ)に従って丁度イスラム教徒のように統轄された生活を送っている。そこから自ずとさまざまな悲喜劇が生まれるのだ(その中にはあっと驚くような駄法螺話も入り混じる)。
 ちなみに僕が( )内にカタカナで特記するのは、彼らが符牒として使っていた、普通人(トウシロウ)には秘密(ムス)の「山窩ことば」(他に言いようがないので、こうしておく)である。

4)過去記事に
 去年(2013年)の11月16日、僕は「虹色のミネラルウォーターを召し上がれ」なるタイトルで庄野英二氏の『星の牧場(まきば)』という小説を書評の俎上に載せているが、そこに出てくる「オーケストラのジプシー」たちの描写は、三角の「山窩」シリーズにヒントを得ているのではないか? なんて余談だが。今更ながらに気付いたこと。

5)山窩関係の三角の研究
 瀬降(セブリ)、山刃(ウメガイ)、親分(ヤゾウ)、山窩(ナデシ)・・・。この初期の「山窩」研究の成果は、時代の要請に応じて、エンタテイメント小説的にまとめられている(そのことには三角はかなり自覚的だったように思える)。
「継続こそは力なり」というが、著書『サンカ社会の研究』で、1962年東洋大学より文学博士号を授与さる(こちらはシリアスな論考)。この本(『外伝』)の佐伯修氏の解説は一応(僕と同じく「山窩」に心惹かれる人は)押さえておくべきだろう。「サンカ研究」と肩書きに付いている位だから、何かの役に立つかも知れない。
 なお、「山窩」についての三角の研究書が、資料として揃えてある図書館は、全国的には少なからずあると思う。是非お手に取って一読あらんことを。2014年の書評はこれでお終い。長いようで短いようで・・・、とにかく大変な一年でした。一句、


払 暁 に 字 を 一 つ 消 す 冬 至 か な
めいべる堂余花二


 音楽:THE THE "HANKY PANKY" 94年、マット・ジョンソンは自らのアルバム一枚を全曲、「ジャンバラヤ」で知られる米国のカントリー歌手、ハンク・ウィリアムズの作った歌で埋め尽くすという、思い切った手段に出た(勿論各楽曲には彼独自の解釈が施されている)。それまでの反米的なポリシーを振りかざしていた彼とは一味違う。何か戦略的な目論見があってのことか・・・。いや、僕にはもっと心の奥底での変化があってのことだと受け留められた。
 思い出したこと一つ。ムカ〜シの話だが、NHKに、まだメジャーデビュー前のジョンソンが取材されていて、彼はその頃失業保険で食いつないでいた。もし僕がケン・ローチ監督を知っていたら、まるで『マイ・ネーム・イズ・ジョー』だな、と言ったことだろう。パンク・ロックを聴き始めて間もない子供の僕は"THE THE"だなんてアナーキーだなー、などと呑気に思っていた。

6)結語
 はや今年も過ぎてゆく。また一つ歳をとるのか・・・。もう幾つ寝るとお正月。来年も変わらずご贔屓に。皆々様、良いお年を。ではまた。

「2014年・俳諧小僧と十六匹の龍」書庫の記事一覧

閉じる コメント(2)

顔アイコン

初コメントです。
山窩は、私の中では、都市伝説というかオカルト的存在でした。
私も、「山の中で生活して旅人を襲ったり、追い剥ぎをしたり、独特の言語や宗教が存在する、日本に居ながらにして日本人ではない異民族」という勝手なイメージを持っていました。
本ではありませんが、インターネットで調べるうちに普通に竹細工などを売って生計を立てる人にだと知って拍子抜け(失礼)
した事があります。また、当時の山窩の写真も見ました。ちょっと貧しい感じの村人って感じで、もっと禍々しい見た目を想像していました。
人は自分の知らない世界に、本能的に恐れを抱くものですね。後々作られた山窩の都市伝説は、こういう「未知への恐怖」から伝播していったのかな?と思います。

長々と失礼しました。
お兄様共々お身体に気をつけて、年末年始をお過ごし下さい。

2014/12/30(火) 午前 0:14 [ くっすん ]

くっすん>コメどうもありがとう! 山窩のこと、知ってたんだね。そうなんだよね〜、この本の序文にも書いてあるけど、異民族などではなく、ただ伝統に従って生きている、そういう人たちなんだ。ちょっと面白い本なんで、良かったら読んでみてください。
少〜し寝不足気味かな。こないだみたいな感じ。だけどもうお正月だ。頑張って年越します。それじゃ、くっすんも体調、気をつけて。またね。

一月を正月といふこそばゆさ 余

2014/12/30(火) 午前 10:36 [ 吉田ツグオミa.k.a.伊丹甚左 ]


よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

いまならもらえる!ウィスパーWガード
薄いしモレを防ぐパンティライナー
話題の新製品を10,000名様にプレゼント
いまならもらえる!ウィスパーうすさら
薄いしモレを防ぐ尿ケアパッド
話題の新製品を10,000名様にプレゼント
ふるさと納税サイト『さとふる』
実質2000円で特産品がお手元に
11/30までキャンペーン実施中!
ふるさと納税サイト『さとふる』
お米、お肉などの好きなお礼品を選べる
毎日人気ランキング更新中!
コンタクトレンズで遠近両用?
「2WEEKメニコンプレミオ遠近両用」
無料モニター募集中!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事