吉田ツグオミ DIRECTLY FROM A TRASH CAN

着ぶくれの王となり果つわが愚の朝(甚左)辛うじてモッドの自称詩人まあ人並みに春を迎えられれば上等そんな訳でつぃったもチェキラ

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 前回、今読んでる最中の本は、「とある女流作家の随筆集」だと書いた。さて、この「とある...」とは誰のことでしょう? 別にそんなこと謎カケしても仕様がないので、さっさと白状しちまうが、これは幸田文のことを指している。大かたの予想は外れただろう。正直言うならば、僕は二世作家というのは大嫌い。文化の面でも政治の面でも医療の面でも、とにかく(必然性のない)世襲というのがイヤなのだ。日頃この駄文のシリーズを読み慣れた方々には、そういう雰囲気が薄々ながらお分かりかと思う。

 で、幸田文は言わずと知れた蝸牛庵・露伴の娘なのだが、僕にとっての露伴は文豪としての彼というより、いろんなことを知ってる「文学博士」(本当に博士号を授与された)というイメージの人、なのである。高木卓『露伴の俳話』(講談社学術文庫)に親しんだ僕には、親戚縁者に歌仙を巻かせるべく孤軍奮闘し(無論彼らは皆、俳諧に於いてはズブの素人である)、「ホトトギス」一党の手のような所謂「書生の句」より、蕉門の『三冊子』や『旅寝論』に基づいた、自分の俳理論の方が正当であるとでも言うがごとき、彼の強情さ(?)はお馴染みのものなのだ。「あゝ降つたる雪かな詩かな酒もがな」露伴。

 文さんはそんな父、露伴の薫陶を受けた。『俳話』にも文子として登場する。幸田氏の家系は江戸城詰めの茶坊主ずっとやっていた(こちらはまだ封建的時代の話なので、世襲でも一向に構わない)代々の江戸っ子だし*、ある種の「知識人」の一族だとも言える。その末端に文さんの文業は位置している。
 紹介が遅くなったが、『番茶菓子』(講談社文芸文庫;1993年11月10日第1刷発行)という彼女の著書を読んで、僕はこの記事を書いている。「幸田文・入門篇」、である。ネタばらしになるので各エピソードには深くは立ち入らないが**...(そこんとこは実際に読んで貰うしかない)。

 彼女の文壇デビューの時機は露伴の逝去とともにやって来た。1947年(昭和22)のことである。この『番茶菓子』は1958年(昭和33)に創元社より上梓された。いろいろな場所にちょこっとずつ載せた小品の集で、文芸専門誌向けの文は少ない。だからと言って文章のクオリティが低いワケではない。むしろ凝縮された中にいろつや、というか月日の醸す光沢が見て取れる。文さんは1904年(明治37)の生まれである。この本が出版されたとき彼女はもう54歳。普通だったら物書きとしては中堅どころ、と呼ばれる筈の年齢である。だがこの時点では、彼女は物の道理を弁えているという自負心さえ持ちながらも、まだまだ若手の一人に過ぎないと、自分では捉えていたようだ。「物の道理」...彼女はすでに結婚、出産、更に離婚まで経験してきた「大の大人」なのである。

 他に気になった二、三のこと...。文章は一寸悪文気味の方が読み易い。文さんの高純度な文章を読み込むのに、僕はかなり苦労した。ただでさえ最近遅読になってしまっていて(寄る年波には勝てず)、昔みたいに濫読はできない。
 それからこの本で、「きものの四季」と「おしゃれの四季」とそれぞれ題された短文が別々の章になっている。「きもの」と「おしゃれ」...。彼女にしてみればこの二つの語は互いに干渉し合いながらも全くの別物で、「きもの」さえ着こなせれば「おしゃれ」と言うのではなく、「おしゃれ」というのは飽くまで「心がまえ」の問題なのだ...。老境を迎えた彼女の筆蹟については、本書解説・勝又浩氏の文に詳しい。
 年譜も最後まで読ましおおせる、そんな(作家としては)長命で(1990年・平成2・10月29日、86歳で没)、生の果てまで力を出し切ったひとだった。一句、


末娘やうやく嫁がせてのち、

紙 雛 に 深 川 丼 の 夫 婦 か な
めいべる堂余花二


 音楽:WAKING ASHLAND "COMPOSURE" 解説に「さよならSweetness」「さよならエモ」なんて物騒なことが書かれている。だがその二つの要素(甘美さと激情)は、彼らが目指しているコンテンポラリーなロック・ミュージックには必要不可欠なのだから、話はややこしい。ピアノを弾いて歌う、恐らくリーダーであろうジョナサン・ジョーンズは、日本でのそういう扱いを知って苦笑するかしないか。

 番茶に一等似合う茶菓子はなんだろう。やっぱり堅焼き醤油味のせんべいかな。羊羹も(安手のものなら)いいんじゃないか、などと思いをめぐらせつつ、いつもに増して「文」の字が多かった今回を終わりにしたい、と思う。そいじゃ、また。

梅の花にほひあかざる妹が門出去(いでゆく)まへのをしき朝かも〔元義〕

* 『俳話』では、露伴の「べらんめえ」がたっぷり味わえる。
** イタんだ食べ物の味を教わる話、ほか、盛り沢山なのだが。

「2015年 俳諧小僧のひつじ年」書庫の記事一覧

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幸田文さんの「おとうと」という作品を、中学か高校の時に教科書で読んだ覚えがあります。もちろん、ほんの一部ですが。弟が同級生の腕の骨を折ったことについて、なんやかんやと騒ぎになる、という話だったような…
その時にちょうど、キムタクが弟の役をしていたドラマを偶然見た覚えもあります。
すごい長編だったので、文庫の読破は挫折…。ツグオミさんの文章で、久しぶりに名前を思い出しました。


番茶には、あられ派です。

2015/2/27(金) 午後 4:12 [ くっすん ]

くっすん>コメどうもありがとう。俺ははじめて読んだんだ。キム氏が出ていたドラマ...、なんか興味深いねえ、とても。番茶と言ったらお砂糖が塗ってあるおせんべ。俺は。またね。くっすんのブログ、才能に嫉妬してしまいました。

2015/2/28(土) 午前 11:48 [ 吉田ツグオミa.k.a.伊丹甚左 ]


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